第66話 義姉妹とメイドと鞭の神装

(カグラ視点)


 わたしたちはメイさんを先頭に城の地下にあるという神装のもとに向かった。


「ここですね」


 着いたのはいくつもの武器や道具が置いてある物置。


「物置ですね。兄さんの役立ちそうな物もいくつか……持って行ってもいいですかね?」


 月奈ちゃんは辺りを見回しながらそんなことをつぶやく。

 こんな時でも冷夜くんのことを考えるなんて、月奈ちゃんらしいというかなんというか。


「持っていくのは…どうなんだろうメイさん?」


「……そうですね、別にいいんじゃないですか?この国は王が居なくなるわけですから。実質の国滅亡ですし」


 そっか、言われてみれば王様を倒したらこの国は成り立たないんだよね。

 じゃあこの国に住む人はどうすればいいんだろう……。


「カグラ様、今は悪しき王を倒すことを考えましょう。その後のことはまた後で」


 もしかして顔に出てたかな?でもそうだねまずは目の前のことからだね。


 月奈ちゃんもいくつもの物を腕輪に収納して満足したみたいだし、


「まずは神装だね。それでメイさん、神装は?」


「はい。こちらです」


 メイさんは物置の奥にある壁を指す。


 月奈ちゃんも加えて壁を見てみると、鞭のマークと一文。


【壁に魔力を流し、神装の声に従い試練をこなせ。願わくば正しきことに力を使ってほしい】


 正しいことにか、昔なにかあったのかな?でも今は……。


 わたしは壁に手をついて魔力を流す。


 すると壁が光が横に開いて虹色の空間に繋がる扉が現れる。


「よし行こう!」


 わたしたちは虹色の空間に入った。





 ___________________


 扉の先には白い道が続いていて、先に進むと少し広い場所に出た。


「ここが神装の試練の場所?」


「はい。剣の神装の試練の場所と同じような場所ですね」


 わたしたちが何もない場所を見渡していると、声が聞こえてくる。


【新たなる勇者よ、かの魔獣を従え、力を示せ】


 その言葉が頭に響いた瞬間、上からピエェエッ!と鳴き声がする。


「お二人とも、下がってください!」


 メイさんはわたしたと月奈ちゃんをかばうように前に立つ。


 やがて鳴き声の正体が羽を広げながら降りてくる。

 その正体は、人を数人乗せられるほどの巨大な白い鳥。


「あれは、フクロウでしょうか?」


「月奈ちゃんの世界にいた生物なの?」


「まぁ、あんなに大きくはありませんでしたが似たような生物が」


 でもあの子をどうすればいいんだろう?たしか従えとか言っていたけど……。


「カグラ様、おそらくですがあの魔獣と契約をして従えるというのがこの試練なのではないでしょうか」


「契約、ってことはあの子をフィートみたいに魔法を使って契約魔獣にすればいいってこと?」


「はい。ですが、フィートと同じようにはいかないとは思いますが…」


 わたしたちが話していると、フクロウが飛ぶ。

 そしてわたしたちの周りを囲うように飛んでいると、上空から複数の白い羽が向かってくる。


「『魔力障壁』」


 すぐに月奈ちゃんが魔力障壁を張って羽を塞いでくれる。

 でも何本も受けている内に障壁にヒビが入る。


 そんな障壁を維持しながら月奈ちゃんはメイさんに話しかける。


「メイさん、あの魔獣と姉さんが契約するにはどうすれば?」


「……ひとまず言葉での説得は難しいでしょう、そもそも言葉が通じるかもわかりません。となると方法は一つ、相手を戦闘不能まで追い込み契約をします。そのためにまず、空から落とさないといけませんが」


 話しているうちに羽は止み、フクロウは空からこちらを見ている。


「よし、やるよ!フィートは飛んでフクロウの注意を引いて、月奈ちゃんは魔法をお願い!」


「わかりました。『シャイニングバレット』」


「ミャ―!」


 フィートはフクロウの周りを飛びながら火で攻撃、月奈ちゃんは光弾を操ってフクロウに攻撃する。


 フクロウは光弾よ避けながら飛ぶけど、フィートと月奈ちゃんが光弾を上手く操作して、フクロウは下の方まで降りてくる。


「これくらいの距離なら、鞭がとどく!」


 わたしはフクロウの足に向けて鞭を振るい、足に巻き付かせる。


「ピエェロ!?」


「今だよ、メイさん!」


「はい、カグラ様!」



 メイさんはわたしの声と共に身体能力を強化して、フクロウの背に乗る。


「落ちなさい!」


 メイさんはフクロウの背の上でジャンプをし、そのままフクロウにかかと落としをお見舞いする。


「ピェッ……ロロロッ!!」


 けどフクロウはそれだけでは落ちず、逆にメイさんを落とそうと暴れまわる。

 わたしは鞭でフクロウを抑えようとするけど、


「っ、力強いなぁ!」


 わたしは鞭を必死で握るけど、フクロウが暴れて巻き付いていた鞭がほどけてしまう。

 それにさすがのメイさんも危険だと思ったのか一度地上に降りる。

 それと同時に月奈ちゃんフィートも近づいてくる。


「カグラ姉さん、メイさん、大丈夫ですか?」


「はい。私はなんとか」


「わたしも大丈夫。けどあの子どうやって地上まで降りてもらおう?」


「そうですね、メイさんどう思いますか?」


「……まず物理的な攻撃では厳しいでしょうね、あの羽毛なかなかの防御力です。なので月奈様の魔法でダメージを与えて落とすのがベストかと」


「分かりました。任せてください」


「じゃあわたしたちであの子を引き付けて月奈ちゃんがとどめって感じでいい?」


 わたしはみんなが頷いたのを確認して、フクロウの方を向く。


「いくよ!」


 わたしはまず冷夜くんから貰った閃光石を投げる。


 フクロウは閃光石を警戒するように見ていると、すぐ目の前で強力な光を発しながら爆発した。


「ピエロッ!?」


 光に驚きフクロウは目をつむりながら暴れまわる。

 次はメイさんが魔法陣を展開させてフクロウを狙う。


「………いきます、『魔力弾マジックショット』」


 メイさんの魔力弾はフクロウに当たる。

 けどあまりダメージは当たら得られていなそうで、視力も戻ったのかこちらを睨みつけてくる。


「ピエロロォォ!!」


 睨みつけてきてたフクロウはわたしたちめがけて白い羽を放ってくる。


「カグラ様!」


 わたしとメイさんはその羽を、鞭と短剣でどうにか防御する。

 その光景に、羽が通じないと思ったのかフクロウは一度攻撃の手を止める。


 そんなフクロウの背後から、次はフィートが火で攻撃をする。


「ミャアァー!」


「ピエロォ!」


 フィートの攻撃はあんまり通じてるようには見えないけど、うまくフクロウの注意を引いて、わたしたちが居る下の方までフクロウを引き付けてくれた。


「ナイスだよフィート!次は離さない!」


 わたしは鞭を振り、再びフクロウの足を拘束する。

 そんなフクロウは逃げようと暴れるけど、メイさんと二人で鞭を握って何とか動きを止める。


 そして、月奈ちゃんの魔法の準備が終わった。

 月奈ちゃんは上空にたくさんの魔法陣を展開させてフクロウを狙う。


「いきます。『シャイニングバレットレイン』」


 魔法陣から放たれたたくさんの光弾が、雨のようにフクロウを襲う。

 やがて光弾が止んだころには、フクロウは地面に横たわっている。


「やったー!わたしたちの勝ちだね。ありがとうみんな」


 わたしたちはハイタッチをしあい、勝利を喜ぶ。


「カグラ様まだ終わってはいませんよ」


「あぁ、そうだったね。この子と契約をすればいいんだよね」


 わたしはフクロウに近づく。


「ピエ……」


 フクロウは負けを認めてなのか月奈ちゃんの魔法がかなり効いたからなのか、横たわったまま目だけをわたしに向ける。


「君、すごかったね。わたしだけじゃ君には勝てなかったよ」


 フクロウは目を見開いて驚いたという表情になる。

 そんなフクロウをの羽を撫でながらわたしは続ける。


「ねぇ君、わたしと一緒にこない?何年もこんな狭い場所に居たんだよね。ずっと、一人でここに」


 わたしは思わず言葉に力が入っていた、それはたぶん…。


「だからさ、行こう!外の世界に!わたしと、メイさんと、月奈ちゃんとフィートとそれに、ここにはいないけど冷夜くん、他にも外にはたくさんのいい人がいる。そんな世界にわたしと一緒に!」


 わたしは羽から手を離し、フクロウの顔の前に手を伸ばした。

 そんなわたしの手を、


「ピエロ!」


 フクロウは口先を私の手に乗せ、お辞儀のようなポーズをとる。

 その瞬間、わたしとフクロウの間に繋がりのようなものが出来た。


「……カグラ様。成功です、その子とカグラ様の契約は完了しました」


 メイさんは「まさか魔法を使わずに契約するとは」ってつぶやきながら歩いてくる。


「そうなの?じゃあ試練は終了だね!」


 わたしたちが喜んでいると、頭にまた声が響く。


「【勇者よ見事試練を終えました。さぁこちらに】」


 その声と共に部屋の奥に扉が出現する。


 わたしたちはその扉に入ると、中は小さな部屋で鞭が台座の上に置いてある。


「これが、神装……」


 わたしは、その鞭を手に取る。


 こうしてわたしたちは、神装と新たな仲間を手に入れた。





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