第25話 義兄の魔道具作製

 月奈と師匠と分かれた後、俺は工房にて魔道具の作製に取りかかった。

 それから数時間後。


「えっと、次は……」


「やぁ、冷夜。精進してるね」  


 俺が試行錯誤していると、不意に師匠が工房に入ってきた。


「あ、師匠。月奈の方はもう終わったんですか?」


 俺は師匠の方を見ることもせずに作業をしながら言うと、師匠はため息をつく。


「あのね冷夜。もう、と言うがそれを言うならもう、こんな時間だよ。もはや日はおちて、ご飯時間だ」


 そう言われ俺は急いで時計を確認する。


「え?嘘。……マジか、ええ〜」


「あのね、冷夜。魔道具作りに没頭するのは良いけど、ちゃんと休憩も入れなさいって言っていたおいたよね?」


「うっ……すみませんでした」


 師匠に怒られてしまったので俺は誤る。だがその手は止めない。


「せめて手を止めてからいいなさい。それで、作ったのはこれ?見たところただの魔石に見えるけど、いや魔物石との混合魔石かな?」


 師匠は近くに置いてあった赤い魔石を手に取る。


 「魔石」とは、魔素の濃い地域などで魔力や魔素が結晶化したものであり、魔力を貯める性質を持っている。

 そしてそれと似たような物で、魔物の体内にも魔力を貯めることのできる魔石に似たようなものがある。これを「魔物石」と呼び言わば魔石の下位互換に当たる物になる。貯めることのできる魔力の量は魔物の種類によって変わる。


 また前者は希少で値段が高く、後者は魔物を倒せば手に入るので高望みしなければ自分で手に入るし比較的安いという違いがある。


「はい、そのとおりです。そしてそこに魔法を付与したものです」


「ふむ。でも、これだと一度使ったらそれでこの石魔法に耐えきれず壊れてしまうんじゃないか?」


 師匠は混合魔石をじっくりと眺める。


「さすがですね師匠。師匠の言う通り、それは一度だけの使い捨て魔法です。ほんとは魔物石で作りたかったんですがそれだと魔法を発動するまえに壊れてしまうので、魔石を少し混ぜて作ったんです」


 混ぜた魔石も少量なのでコストパフォーマンスも悪くは無い。

 さらに演唱を必要とせず、少量の魔力で魔法を使える。


「面白いな。それでこっちの短剣も同じような物かな?」


 師匠は魔石を置き、次に短剣を手に取る。


「はい。その短剣は、刃の部分を混合魔石で作った使い捨ての魔剣です」


 この魔剣(短魔剣たんまけんと名付ける)は魔法を打ち出すのではなく刃自体に魔法が発動する。なので物理的に魔法をあたえることができる、という代物だ。ただし一突で壊れてしまう。


「いいねこれは。特に冷夜、君にはピッタリな代物じゃないか!」


「そうですかね?」


「うん。だって君、魔法の才能ないからね」


 師匠の言葉で俺は思わず手を止めてしまう。


「え、な、なんですか?それ。初耳なんですけど」


「うん。前々から思ってはいたんだけど、言いづらくてね。でも短魔剣これがあれば解決だ、これ色んな属性の魔法の刃を作ってあるよね?」


 師匠は置いてある短魔剣を一つ一つじっくりと見ていく。


「はい。師匠に教えてもらった範囲ですが、作ってあります」


 俺は腕輪から短魔剣を複数取り出し机に並べる。


「なら良し。この世界には悪魔とか不死者アンデットのような、魔法でなければ有効打を与えられない生物もいるからね。っと、そうだ忘れてたこれ君へのプレゼントだ」


 師匠はどこからか、黒い物を複数取り出す。


「師匠これは何ですが?」


「これはね、さっき月奈と一緒に解体したブラックドラゴンの牙や鱗、まぁ素材だね。はい、」


 俺は渡された素材を触ってみる。


(これは、凄い魔力の浸透率。それに戦ったときにも思ったけどかなり丈夫だ。師匠はともかく月奈がこれを解体したなら……『解体』のスキルの効果か?)


 様々な考えが頭の中をうめつくす。


「師匠!試したいことがたくさんできました!」


「うん。冷夜ならそう言うと思ったよ。でも、月奈がご飯を作った待ってるから後でね」


 それを聞いた途端、思考が一度止まり頭の中は月奈のご飯に切り替わる。


「分かりました。では月奈の料理が冷めないよう速く行きましょう」


 俺が素早く立ち家に向かうと、


「まったく、冷夜の月奈に対する愛は随分大きいようだ。ほんとうに、この義兄妹きょうだいは見ていておもしろいな」


 そんなことが聞こえた気がした。



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