第22話 義兄と師匠

 俺は話を終えた後、エスタリアさんに俺たちの世界の単語などを教えた。


「と、まぁこんな感じですね」


「なるほど。……君たちの世界の学校の少年少女はそんなに危険なのか?」

 

 エスタリアさんが真剣なトーンで聞いてくる。


「いやいや、俺たちが経験したのがかなり特殊だっただけです。普通はもっと穏やかですよ」


 と、こんなやり取りを何度かしてやっと本題に入る。

 

「さて、本題だが。君のエクストラスキル『狂戦士バーサーカー』についてなんだが……」


「何か分かりましたか?」


 エスタリアさんは俺の言葉に頷く。


「おそらくだが、『狂戦士』は君の感情にかなり影響されているスキルだ」


「えっと、どういうことですか?」


「まず最初に『狂戦士』が発動した時、月奈が傷つけられて、君の中に殺意や憎悪などの気持ちが芽生えた。間違いないね?」


「まぁ、はい。そのとおりですけど」


「つまり、『狂戦士』とは月奈が傷つけられた時に発生した、君の殺意や憎悪そして怒り、などの『負の感情』が形となった物だ」


 エスタリアさんは「さらに――」と付け足し話を続ける。


「君が暴走しても月奈に攻撃をしなかったのは君が本能的に月奈を守るべき存在と認識してるからだろう。さっきの話から、幼い月奈がイジメられてる時に君の中に黒い感情、『負の感情』が芽生え大人数を相手に戦うという無茶をしていることからも、的を得た考えだと私は思う」


 俺はその話を聞き驚きながらも疑問に思ったことを言う。


「なるほど。……たしかに今の話はかなり的を得ていると思いますけど。それだと俺たちがエスタリアさんと模擬戦をした時に何故俺は暴走したんでしょう?」


「それなんだが、……今はさっぱり分からない」


 エスタリアさんは手を上げて、まさにお手上げという状態になる。


「だから、これからは私の許可なく『狂戦士』を使わないように。分かった?」 


 エスタリアさんは念を押してくる。


「分かりました。勝手に使いません」


 俺が答えるとエスタリアさんは満足そうに頷く。


「よし。それじゃあご飯にしようか。そのまま寝てもいいけど、魔力消費も激しだろうし、何より育ち盛りだ。たくさん栄養を取らないと。私は準備をするから月奈を起こしてくれ」


「了解です。エスタリアさん」


 俺がそう言うとエスタリアさんは思い出したように言う。


「あ、そうだ。」


「どうしました?」


「そのエスタリアさんっていうのやめない?私は君たちの師匠なわけだし。気軽に師匠って呼んでよ」


「……了解です。師匠」


 俺がそう呼ぶと満足そうに頷く。


「よろしい。じゃあ準備してくるよ」


 師匠は部屋を出ていく。



「『狂戦士』俺はもっとこの力を使えるようにならないと。師匠に聞きたいこともたくさんあるし。何よりもっと強くならないと」


 俺は月奈の顔を見ながら密かに決意をした。




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