第20話 義兄の暴走
(月奈視点)
「ぐ、うぁァァァ!!」
「兄さん!」
いきなり兄さんの黒い魔力が増え、突然苦しみだしました。
「つき、な……。グ、アァァァァ!!!」
兄さんは叫び、そして黒い魔力が消え目を瞑りその場に硬直してしまいます。
「兄、さん?」
私はそんな兄さんに近づこうとしますが、
「ぐ、ウオォォァァァ!!!!」
「きゃっ!?」
兄さんはいきなり膨大な黒い魔力を展開し、目を開けます。
その眼は片方だけ紅く光っている不気味な眼でした。
「にい、さん?どうしたんですか……」
「月奈下がれ、それは冷夜じゃない!」
「アアァァァァァ!!」
兄さんは声の方、エスタリアさんに向かって切りかかります。
「っ!これは、中々の強さだな」
エスタリアさんはそう言いながらも、涼しい顔で兄さんの剣をいなします。
「グ、ウ!『サンダーショット』」
兄さんは雷魔法でエスタリアさんに向かって黒い雷を放ちます。
「黒い雷とは、……これもあの黒い魔力の影響か?」
エスタリアさんは、黒い雷を観察しながら避けます。
そして兄さんもこのままではエスタリアさんにダメージを与えられないと思ったのか、黒い雷と共にエスタリアさんに切りかかります。
「グ、ウォォォ!」
ですがエスタリアさんは、すべてを見切っているかのように兄さんの剣をさばき、兄さんにダメージを与えます。
「グ、ウッ!!」
「さて、これで終わりだよ」
エスタリアさんは、鋭い一撃兄さんに入れます。
兄さんはそれを剣で受け、飛ばされます。
……私の方に。
「あ、しまった!月奈、気をつけて!!」
「え!?気をつけて!?」
そんな事をしている間にも兄さんが飛んできます。
「えっと!、えっと!『エアバリア』」
私は風が渦巻く障壁を貼ります。『エアバリア』は、普通の障壁と違い衝撃を緩和できる障壁です。
兄さんは『エアバリア』に当たり見事に衝撃を減らし、ゆっくりと地面に落ちます。
「兄さん大丈夫ですか……」
私は兄さんに近づこうとしますが、兄さんはゆっくりと起き上がります。
「まさか、まだ立ち上がるなんて。月奈!速く離れ……」
エスタリアさんの声が聞こえますが私はそれを気にせず兄さんを見ます。
兄さんも私を見ます。
その眼は紅くはなっていますが、殺意などは無く、いつも通りの優しい兄さんの眼です。
「オォぉぉ!!!」
兄さんは私を一瞬見ただけで、すぐにエスタリアさんに攻撃を仕掛けに行きます。
「あ!エスタリアさん。兄さんそっちに行きましたよ」
私が声をかけると、すでにエスタリアさんは木剣を構えています。
「まったく、本当に君たちは不思議だな……」
エスタリアさんは呆れたように、ですが面白そうに笑い、兄さんと剣を交え始めました。
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