第79話 バ・アント変異種(緑)討伐戦
【ロウファ視点】
先陣を切って突撃していくルシードの背に、俺はワクワクしていた。
悔しいけど今はコイツには敵わねー、あくまでも今はだ!!
そして感謝もしてるんだ。
俺と同年代にこんなにもスゲー奴が居てくれたこと、そして――――――。
「ロウファ!!コイツは俺とヨードで抑える。お前は緑の方を頼む!」
「わかった!緑の方をやるぜッ!?半分俺に付いて来い!!」
そんなスゲー奴に頼りにされる俺が、少しだけ誇らしいって思えたことだ。
赤い方をルシードとヨードと半分、残り半分を俺たちで相手をする。
ルシードの奴が討伐は二の次みたいなこと言ってたが、拠点を出る前にあれだけ熱い事言われたらそれ以上の戦果を出したくて仕方がねーだろ?
それにきっとアイツは赤を討伐する。
予感なんかじゃない、確信してるだけだ。
だったら俺もこの緑をフルボッコにしておくくらいは出来ねーと、誰よりも俺自身がアイツの隣に並び立つ資格はねーと思った。
それは俺の周囲に居る奴らも同じみたいで、誰一人気負い過ぎる事も無く積極的に攻撃に参加していた。
ベルタの言う通り、アイツに”おんぶにだっこってのは癪だ”って認識はどうやら俺たちだけじゃなかったらしい。
俺は左右両方に構えた投擲も出来る片手斧で緑に斬りかかる。
本当はナイフが良いんだが、それじゃきっとコイツの外殻は抜けないだろうからこれを拠点から持ってきた。
少し重く感じるけど、振った感触は悪くない。
けどそれでも緑の外殻に僅かな切り傷を付けただけにとどまった。
追撃を――――――と思ったところで、緑の腹がうねうねと動き出したかと思うと――――――。
奴の口から緑の液体が吐き出された。
これがリズベット先生が言ってた毒か!?
咄嗟に俺は距離を取って難を逃れたが、数人毒を吸っちまった奴が居た。
「今毒を受けた奴はすぐに拠点に戻れッ!!」
あークソッ!!一々指示出すのがめんどくせぇ!!
アイツは今までこんなメンドクサイことを平気でやってたのかよ!?
その上戦況把握、援護、攻撃まで?マジでスゲー奴だな俺たちのリーダーは…………。
今までのバ・アントよりも少し外殻が硬い気がしたが、ダメージが通らないってわけじゃない。
それでも接近し過ぎると毒霧を散布されて、俺たちから離れないといけない状況に追い込まれるっていうのを繰り返す、正直攻めあぐねていた。
ルシードみたいに高威力の魔法でもぶち込めば即解決するだろう、けど連れてる中で無詠唱で行使できる奴が居なくて、詠唱を始めれば即座に毒で狙い撃ちにされる。
コイツの毒は結構強いらしく、すぐに処置しないと最悪命に係わるものらしい。
誰もそんなもの浴びたくないのは同じだ。
結局、弓矢や威力の低い魔法攻撃でなんとか攻撃する程度だったが、一つわかった事があった。
それは緑の奴は毒霧を連発出来ないってことだ。
俺の体感で言うと、一度使えば二十秒くらいの感覚が空く。
それでも毒霧が滞留する時間を引けば、その余裕は長く見積もっても十秒ほどだ。
その間に何が出来る?息を止めて駆け抜けるにしても俺たちが与えられるダメージなんてたかが知れてる。
そんな時だ――――――。
「みんな聞けぇっ!!関節だ!!関節を狙え!!そこなら外殻部分よりも脆くて刃が通る!!」
ルシードの声だった。
ホントに、俺等のリーダーは頼もしいぜ!!
「聞こえたなッ!?関節部分だ!!俺たちのリーダーからのありがたい言葉だ、後で聞いてなかったなんてふざけた事言うんじゃねぇぞ!?」
そこから俺たちは時間をかけて少しずつ、関節部を削って行く事にした。
緑が毒霧を散布してからの間、駆け抜けてヤツの関節部を攻撃しての一撃離脱。
俺の得意分野で、言うのは簡単だが実際にやるとかなりキツい。
速攻で仕留められない相手には、効果が薄いな………………。
俺たちは連続で攻撃しないように、交代で体力を温存する事にした。
持久戦とかヨードの得意分野であって、俺の性には合わねぇんだが文句ばっかも言ってられねぇ。
ここでコイツを最低でも抑えとかないと、赤と合流しちまう。
そうなればルシードやヨードに迷惑をかけるだろう。
それだけは何としてでも阻止しないといけねーよな?
武器の重さも相まって、手汗で滑り落ちそうになるのを何とか堪える。
何度も手斧を握り直し、集中力が切れかかっていたところで、ふと身体が軽くなるのを感じた。
「余力を作ってもらった今のうちに、そろそろ撤退も視野に入れておいてくれ!!徐々に結界の傍まで後退するぞ!!」
ルシードとヨードたちも赤いのを相手に踏み止まってる。
俺たちはルシードの指示に従い、じりじりと拠点に近付いて行った。
時々、毒霧で行く手を阻もうとしてくる緑が鬱陶しい!!
速度が上がった事で、ベルタの強化が強まって行くのを感じて顔がにやける。
……………ったく!ルシードといい、ヨードといい、ベルタといい、同級生はスゲー奴ばかりじゃねーか!!これは負けてらんねーぜ!!
緑の奴もまた逃げられると焦り出したのか、牽制に出ていた奴を狙って毒霧を吐こうと開いたヤツの口目掛けて、俺は手斧を投げつけた。
回転しながら飛んでいったそれは見事に緑の口に刃を突き立てて止まる。
それを咄嗟に取ろうとした奴の動きに合わせて俺は一気に距離を詰め、今度はその手斧目掛け全力で振り下ろし――――――緑の頭部を勝ち割ってやった。
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