第37話 鐘塔へ
モアを探すより先にフェデラーを探して歩ていると、校舎の中でオーズさんに出会った。
俺とマリーが並んで歩いているのを見たオーズさんは白い歯を見せて笑った。
「仲睦まじいようで何よりである。共に戦い、背中を預ける仲間であるならば仲が良いに越したことは無いのである」
そう言って俺とマリーの頭をポンポンと叩き、感慨深そうに何度も頷いていた。
オーズさんのデッカイ手にそうされるのは何か嫌いじゃねーけど、照れくさかった俺は目下ペアを組む相手としてダントツ不人気(なはず)のフェデラーの居場所を訊いてみることにした。
「ぬぅ………フェデラーであるか…………」
即オーズさんの顔が曇る辺り、フェデラーの評判とやらは俺の中での評価と大して変わらねーみてーだな。
フェデラー………お前マジでヤバいみたいだぞ?
マリーもオーズさんが珍しく言葉を濁す場面に、苦笑いしている。
「先ほど鐘塔付近で見かけたのである。何やら辺りを見回していたが、アレはマリーツィアを探していたのであるな」
鐘塔か、このだだっ広い学校内の何処に居ても聞こえるチャイム、それをぶら下げてるだけあってこの学校の鐘塔はかなりデカくて高い。
その中は自由に出入りできるが、下手すると大音量のチャイムの餌食になるので普段は誰も近寄らない場所になっている。
……………って事は、そこは絶好のサボりスポットってわけだよな?
「もしかすると、モアさんもそこに居るかもしれない」
マリーも同じことを考えていたらしい、それなら行くしかないよな?
俺がすぐにでも鐘塔へと走り出そうとするのをマリーは俺の手を引いて止め、
「オーズ先生、一緒に来てもらえませんか?フェデラーくんが変に暴れ出して怪我をしても此方に非が無い事を証言してほしいんです!お願いします!」
オーズさんに深く頭を下げた。
俺もそんなマリーに倣って頭を下げる、確かにオーズさんが居てくれりゃあ心強い。
それにしてもマリーは既にフェデラーとはケンカになる可能性も考えてんのか?
イヤ………たぶん想定する中の可能性の一つってだけだな、そしてそれを防ぐためにオーズさんに来てもらえればベストって感じか。
頭を下げながら、俺はマリーの頭の回転の速さに感心していた。
「うむ。気配を消し、二人を追従するのである。何事も無ければそれで良し、何か有ればフェデラーに罰点をくれてやるのである!!」
おぉ~……オーズさんがやる気になってる。
こりゃフェデラーの奴、下手すりゃ沈むだけじゃ済まないかもしれねーわ。
俺とマリー(あとオーズさん)は鐘塔へと辿り着く。
オーズさんは追従して来てくれてるらしいけど、本当について来てるのか?
全く気配なんて影も形も感じねーんだけど?
あの圧倒的存在感を放つ筋肉が消えるってどういう原理だよ?
そんな事を想いながら鐘塔の中に入る為のドアが半開きになっていた。
おそらくフェデラーかモア、その両方かが上に居る。
そう確信した俺とマリーは覚悟を決めて中に入った、中には所々ランプ代わりの魔石によって灯りが灯されていたので結構明るい。
そして壁伝いに上へと延びる階段がずーっと伸びている。
上を見ても詳細がつかめない程高く、見上げていると首が痛くなってきた。
上まで何段あるんだよ…………?
遥か遠い最上階を見た俺はひっそりと階段を上る気力を失っていた。
「ルシードは高い所大丈夫?」
「うーん。どうなんだろ?大丈夫………だと思う」
曖昧になってしまったのはここまで高い建物に登った事が無いから比較対象が無い事、そして高さに対する恐怖は今の所無いけど上に上がってみた時どうなるかわからない、という意味だった。
そんな俺の返答をマリーは強がりと捉えたのかもしれない、そっとマリーが俺の手を握って来た。
「こ、こうしていれば怖いのが半減するかもしれないでしょ……?」
そう言ったマリーの顔は耳までも真っ赤だった。
恥ずいならやらなきゃいいのに…………とは思ったが、俺はそれを言わず、マリーの手を握り返してゆっくりと階段を上り始めた。
まぁアレだ………今の俺は
気持ちが嬉しかったのも本当だし、心強いのも確かだ。
上へと通じるのは階段だけの一本道、モアにもフェデラーにも会わなかった。
そして最上階――――――……そこにはドアも何も無く、大きな鐘がぶら下がっているだけの空間だった。
そしてそこにモアらしき声が聞こえてくる。
「――――――ッ!!私はデラくんとはペアを組みたくないのッ!!」
こっそりとその空間から身を隠すようにして中を覗き込むと、案の定モアとフェデラーが言い争いをしていた。
「うるさいッ!!もしもマリーツィアがダメだった時にもう一回ペアになってやるって言ってるんだ!!何を文句言う事があるんだッ!!」
どうやらフェデラーはモアをキープしようとしたらしい、そんな一方的にペアになったり解散したり何度も出来るものなのか?
「……余程の理由が無い限りは一度解消したペアを組みなおすのは無理だったはず。だからフェデラーく―――フェデラーはその余程の理由を何か無理矢理でっち上げるつもりじゃないの?」
とうとうマリーがフェデラーを呼び捨てにし出した。
まぁ妥当な評価だと思うわ、アイツはもうデラでいいや。
存在感だけは無駄にあるし、何か貫禄もあるし、うん。
デラ、モアがそう呼んでいたのはぴったりだったのかもしれねー。
それと俺の疑問に思った答えをマリーは呟いていた。
また俺の考えを察したのかと思ってビビったが、そういう訳じゃなくて自分が疑問に思った事の回答を思わずつぶやいてしまっただけのようだ。
…………そうだよな?そうそう他人の考えてる事なんて判る訳――――――……。
「ルシードも不思議に思ってたでしょ?」
マリーはガチでエスパーか何かか?心を読む魔法とかあんのか?
いや、きっと俺の表情が分かり易いだけなんだろう、そう思っとこう、思っとこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます