第1219話 余計わからん!
「やりすぎだ、このばかちんがーーー!」
どっぱーーーん! と押寄せた大量の水に押し流され、俺、ミヤ、ヒナ、そしてイネス、ブレンダー、ファクトリーは、あっと言う間に森の奥まで流された。
水が退き、泥やなんやかんやのゴミ塗れとなった俺達ではあるが、装備のおかげか全員無事だ。
ちなみにクイーンだけは、さっさと空に逃げやがった…ちくそう!
ヒナとミヤは、とんでもない量の水で揉みくちゃにされた時、俺に巻きつけていた帯がぐちゃぐちゃに絡みまくって、俺と一塊の団子状態で目を回していた。
この帯は2人の着物から伸びていて、どうやら彼女達の装備扱いなのか、俺では解く事が出来なかった。
なので、大声で怒鳴って2人を起こしたのだ。
「うにゅ?」「ほにゃ?」
どっちがどっちの台詞かは分からないが、とにかく目を覚ました様だ。
「起きたか? 起きたなら、さっさと帯をほどけ!」
「「ぃゃ~ん…えっち…」」
こめかみに青筋がピキピキとたったのが、自分でもはっきりわかる。
「着物を脱げと言ってんじゃねーよ! このこんがらがった状態を何とかしろって言ってんだよ!」
「「知ってた」」
ビキビキ! もう、脳の血管切れるぞ!?
「知ってたんなら、いらん事言って無いで、さっさとやれ!」
「「ふぁ~い!」」
こいつら、マジで腹立つな!
まるで生き物の様に、するすると俺の身体と2人を雁字搦めにしていた帯が勝手に解け、何とか立ち上がる事が出来た頃、イネスとブレンダーもやって来たので、駐留組はこれで無事に合流出来たって事だな。
ちなみにファクトリーはブレンダーが咥えていて、クイーンはすでに上空を旋回してます。
「もの凄い攻撃だったな、2人共!」
イネスが泥だらけの俺達…いや、ミヤとヒナに向かってそう言うと、2人は腰に手を当ててふんぞり返った。
あんま、こいつらを図に乗らせるなよ…っと、攻撃?
「おい、ミヤ、ヒナ。お前らあの銃はどこにやった?」
「「あっちの倉庫に仕舞った」」
…って事は、例の待機次元に送還した…と?
あれ、待てよ?
「もしかして、さっきの団子になってた時、お前らを待機次元に送ったら…帯ってほどけてた?」
「「当然!」」
「……………」
もしかして、俺って馬鹿なのかな?
「トール様は、意外と抜けてるな~! わーっはっはっは~!」
イネスに抜けてるって言われると、もの凄く傷つく…。
俺達は、随分と流されてしまった様だ。
とは言っても、元居た方角はすぐわかる。
何たって、森の樹々が倒れている方向の逆が、川の方向なんだから。
フンッ! 抜けてる俺だってそれぐらいわかるわい!
いや、クイーンが上空から迷わず川に向かってるのを見て言ってるんじゃないからな? いや、割とマジで。
まあ、そんな事は取りあえず置いといて、俺はすぐ後ろをぽてぽてと歩いて付いて来るミヤとヒナへと話しかけた。
「何であんな高威力の攻撃したんだ? 俺は森が火事になったら困るから、威力は抑えろって言ったよな?」
「「火事なった?」」
俺の問いに答える2人…だが、
「いや、確かに火事にはなってないけど、誰があんな自然破壊するほどの攻撃しろって言ったよ?」
「「誰も言って無い」」
あれ? 自然破壊…に関しては、確かに言って無い…。
「いや、だけど俺が火事を気にしたって事は、自然を気にしてるんだ~とか考えなかったのか?」
「「考えなかった。火事ならない様に威力抑えめ汁だくにしただけ」」
汁だくって…お前、牛丼かよ…。
「いや、あれで威力抑えめなの?」
「高熱線だと火事になる」「だから振幅の小さい粒子振動砲にした」
…全然、意味わからん。
「熱を持ちにくい音響量子を撃ちだした」「振動その物を量子化したフォノン砲」
いや、余計わからん!
俺の心を読んだってわけでも無いんだろうが、
「「…………」」
無言で(身長の関係で肩ではなく)背中を、2人にポンポンと叩かれた。
いいよ…どうせ俺にはそんな小難しい話理解なんて出来ないよ…。
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