第1015話  やり過ぎたか?

 俺の指をじっと見つめ続けるミヤの圧に、思わず仰け反ってしまった。

 心なしか、さっきまでキャッキャウフフしていた嫁ーずも妖精達の視線も妙に強くなってる様に感じる。

 えっと、君達にはミヤの心の声って聞こえてないはずだよね?

 なのに、何で俺とミヤの頭の中での会話の内容を、全部知ってるみたいな雰囲気になってるの?

「それはもちろん、いつもの様にトール様が全部声に出しているからです」

 酷く冷たい表情でマチルダがそう言った。

 そうですか…また、やっちゃいましたか、俺…。

「それで、ミヤちゃんの何がエロいんですか?」

 ミルシェさん、そんなに怖い顔しないでも…あ、あんまり力んだりしたら、お腹の子に悪影響が…。

「…それで?」

 ミレーラさん…その冷たい視線もせくすぃーですね…。

「マスター、何を考えているのですか?」

 えと、ナディアよ…これは、そのぉ…。

「「「マスター、変!」」」

 アーデ、アーム、アーフェン! 声を揃えて変って言うな!

「おいおい、落ち着け。トールさまがエロ要素を失ったら、ただのトールさまだぞ?」

 意味わかんねーよ、イネス!

「…………」

 いや、こんな状況でよく俺の指を舐めようと出来るね、ミヤさん…。ある意味、その度胸には感心するよ…。

 決戦用特殊兵装って、もしかして夫婦を決戦させるための特殊な兵装とかじゃないよな?

『…はやく…はやく…』

 いや、マジで俺の袖口グイグイ引っ張るの止めてもらって良いですかね、ミヤさん…。


 結局、ミヤの圧に負けた俺は、輪になった嫁ーずと妖精達のど真ん中で、ミヤに指をしゃぶられる事となった。

 半分目を閉じて恍惚とした表情で俺の指に吸いつくミヤ。

 それを見守る、嫁ーずと妖精達。

 これって、もしかして公然猥褻…じゃない露出プレ…でもない、公開処刑みたいなもんじゃね?

 指を舐められる感触が微妙に気持ちよ…じゃなく、不思議な感触で気付かなかったが、確かに俺の中からミヤが指を吸う度に、微妙に抜けていく感覚がある。

 ん~~? これってモフリーナが持ってくる、エネルギーを貯めておく水晶にエネルギーを込めた時の感じに似てるなぁ。

 ミヤは、俺のなかからエネルギーを吸い出そうとしてるのか?

 だったら、水晶にエネルギーを込めるみたいに、俺の方からミヤに送り込んだりは出来ないかな。

 一心不乱に俺の指に吸いつくミヤは、やっぱりおしゃぶりに吸いつく赤ちゃんみたいだ。

 だが、もう5歳なんだから、いいかげんおしゃぶりは止めなさい! いや、さっき目覚めたばっかで5歳かどうか知らんけど。

 とにかく、この公開処刑の様な場を終わらせる為にも、ミヤを満足させねば!

 性的にじゃないよ? エネルギー的にだから、そこんとこ間違えない様に! コレ、とっても重要だから!


 んじゃまあ、取りあえず水晶に送り込むみたいに、俺の指先からエネルギーを送り込んでみますか。

 一気に送り込むのは不味そうなんで、ちょびっとずつちょびとずつ…蛇口をほんのちょっと捻ったみたいに、ちょろちょろと。

 俺が指先からエネルギーを送り込むと、ミヤの目がカッ! と見開かれた。

 お、ちゃんと送り込めてるって事で良いのかな?

 ミヤは、フガフガ鼻息も荒く、更に俺の指に吸いついた。

 あ、ちょ…噛んだら駄目だって…カプカプって、甘噛みもダメ! でも、まだまだ余裕そうだな?

 んじゃ、もちょっと強めにエネルギーをば…ホレ! 

 すると、ミヤのチューチューカプカプフガフガがピタリと止まり、目を見開いたまま動かなくなった。

 あれ、やり過ぎたか? と思っていると、ミヤの顔がだんだん赤くなってきて、目がとろ~んとしてきた。

 もしかしてお腹いっぱいになった?

 そのまま俺がエネルギーを送り込み続けていると、ぷはっ! っと、ミヤは大きく息を吐きだすと共に、俺の指を口から抜いた。

 そしてフラフラと立ち上が…ろうとして、頭をぐわんぐわんさせた後、カウンターのストレートを顎に喰らったボクサーみたいに、へなへなとその場に倒れた。

「お、おい! 大丈夫か!?」

 俺だけで無く、嫁ーずも妖精達も、いきなりの出来事であたふたしていると、

『…ぐっじょぶ…』

 俺の頭の中にそう声が響いたかと思うと、ミヤがプルプル震える右手で、それでも力強くサムズアップした。

 そして、そのままパタリとその手が床に落ちると共に、おかっぱ少女は気を失った。とても幸せそうな顔で…。

 皆が慌てふためく中、冷静に倒れたミヤに近づいたミレーラが、その状態を確認して一言。

「えっと…寝てるみたい…です」

 …良かった。エネルギーを送り込み過ぎて倒れたのかと思ったよ…。

 ミレーラの言葉には、俺だけでなくこの場の全員が、ほっと溜息を漏らしたのであった。

 

 というか、こいってマジで何なわけ? 本当に決戦用特殊兵装なんだろうか?

 あれ、そう言えば…皆のLシリーズって別空間への出し入れ出来てたけど、こいつってずっとここに居るよな?

 皆はLシリーズを起動させた時に、その使い方が頭に流れ込んできたというけれど、こいつの使い方を俺は知らんぞ? 

 あれ? LガールとLシリーズでは見た目とか大きさとか意思疎通だとか以外にも、何か違うのか?

 ってか、倒れたこいつ…どうしたらいいんだ?

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