第996話 教えてくれよ!
金は天下の回り物とは良く言ったものだ。
俺の領地の税収が王国でもかなりの物である。
主な税収は温泉街の各施設の売り上げによる。
それだけでなく、俺個人の商会も莫大な利益を上げているのだ。
メインは蒸気自動車や通信の呪法具の販売だけでなく、蒸気トラックやバスでの長・短距離輸送。
その他にも、まだまだ売り出す予定の呪法具も控えている。
毎日の様に書類が山積みになるのは、個人的な商会の書類が大半を占めているからでもある。
蒸気自動車製造のノウハウが蓄積していた為、バスやトラッ開発には左程費用は掛かっていない。
魔石を使用した蒸気機関には、魔石が絶対に必要。
だが、すぐ近くにダンジョンがあり、冒険者たちが日々鉱石を掘り出すがごとく魔石を集めてきてくれるため供給も相場も安定している。
鉱石といえば、俺の保護地区のどこを掘っているのか知らないが、エルフとドワーフは鉄鉱石っぽい物を日々相当量を確保している。
蒸気自動車に使用する鉄材が不足したことは、今まで一度たりとも無い。
しかも、地元で採掘できるからなのか、価格も他領から購入するよりも安い。
原材料費が安く、安定して手に入るのだから、製造もガンガン、販売もバンバン! お金はウハウハ!
とどめのネス様効果で観光業も順調だ。
まあ、元王女殿下のメリルの嫁ぎ先が、最果ての地のしょぼい領主だとか言われない様にはしないとね。
だけど、これだけ色々と順調だとお金はたまる一方だ。
この世界って、あんまりお金を使う所が無いんだよね。
っていうより、俺に関して言えば、長距離の移動に関しても金がかからないし、せいぜい衣食ぐらい。
そうしてため込んだ金を俺が抱え込んでいると、経済的によろしくない。
公共事業や将来性のある事業などに投資をしていく必要があるのだ。
寄付でもいいけど、意味がない寄付って実は好きじゃない、
なので、今回は父さんと騎士や兵士、そして現地に住む人々へ援助を行う。
食料だの衣料品だのその他の物資だの、俺がガンガン買い込み援助物資として無償提供してやれば、現地での父さんたちの立場も良くなるだろう。
近い将来、家族を連れて彼の地へと行くことになるだろう。
こういった無償での援助を行っていれば、きっとその時には敵ではなく味方であると認識されるはず。
その為であれば、俺の金庫の扉を開こう。
蓄えるばかりで活用されない金など、死に金でしかない。
生き金として人のために使い、生き金として有形無形のリターンを得るのが、正しい金の使い方だ。
いや、前世で聞きかじった程度の知識でしかないけど、多分これであってると思うなぁ…。
そんな事をぼんやりと考えながら、俺達は邸の裏へと戻ってきた。
よく考えたら、お昼ご飯食ってないぞ?
おいおい、せめて飯ぐらい出してくれよ、モフリーナさん。
向こうじゃ夜中かもしれないけど、こっちじゃまだおやつの時間前なんだぞ?
あ…考えたら、余計に腹減ってきた…。
「ちょっとお腹すきません?」
マチルダもそう思う?
「うむ…確かに腹が減ったな…」
腹に手を当て、ちょっとしょんぼりしながらイネスがぼそりと呟いた。
それを聞いたミレーラもユズキも、コクコク高速で頷いた。
「んじゃ、ちょっと遅いけどドワーフさんにご飯作ってもらおうか」
腹ペコな俺たちは、全員で邸の食堂に向かう。
ドワーフさんに出会えれば遅い昼食をお願いしようと、あの合法ロリっ娘メイド衆の姿を全員でキョロキョロと探しながら向かった。
そして、俺は見た! 決定的瞬間を!
「お、丁度良かった…」「ああ、ちょっとお願いが…」「まだ昼食は可能か?」「…遅くなりましたが…」「すみません、少しいいですか?」
俺、マチルダ、イネス、ミレーラ、そしてユズキが、全員がそれぞれ別々のドワーフメイドさんに声をかけたのだ。
そう、5人のメイドさんに。
ちょっと待て! 我が家のドワーフメイドさんは4人のはずだ!
俺が驚愕し目を見開くと、何故だかドワーフメイド衆はものすごい速度で俺達の周りをぐるぐると駆け回り、そして一斉に姿を消した。
え? どこいった? 確かに5人いたよな?
俺以外はのみんなは、何事もなかったかのように食堂へと向かっているが…おかしくない? 間違いなく1人多かったよな? な?
食堂には、何故かドワーフメイド衆が4人勢ぞろいして、すまし顔だったが、絶対に誰か入れ替わったよな? おい、誰と誰が入れ替わったんだよ!
まさか、皆知ってんのか? 今回入れ替わったのが誰なのか知ってんのか?
ちょ、教えてくれよ! お願いだから! めっちゃ気になるから!
え、誰も教えてくれないの? 俺、一応伯爵様だし、この邸の主なんですけど!
もしかして、皆して俺の事仲間外れにしてんの?
イジメ良くない! 皆仲間だ友達なんだ…じゃなくて、俺達って家族だよね?
だよね? そうだと言ってよ!
ねえ、誰かドワーフさんんの秘密を俺にも教えてくれよ!
お願いだからーー!
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