第928話  何しに来たの?

 俺のイメージ図を元にした、人魚さん達の凶…狂…恐…饗宴…どの漢字が正しいんだろう? まあ、どれも間違いじゃない気がするから、それはいい。

 とにかく、崖の宿泊施設の建設は、急ピッチで進められた。

 何より、あのイメージ図を見た人魚さん達が、強力に推進する様に俺に迫って来たのだ。

 毎日の仕事なんて全部片づけるから、さっさと会場というか施設の建設をしろと、強引に俺をホワイト・オルター号に乗せて送り出したのだ。

 当たり前かもしれないが、嫁ーずもユズユズ夫婦も、母さんにコルネちゃんにユリアちゃんもついて来た。

 あ、ついでにサラとリリアさんもくっ付いて来ていた。

 とは言っても、建設は全て精霊さん達にお願いする事になっている。

 イメージ図を見せて、エネルギーをたんまりとあげたら、俺はする事ナッシング。

 工事に興味津々な人魚さん達がわらわら集まってくるので、例の図を見せると感激して、工事の様子を海から見るとか。

 遠くに見える半島では、時たま大きな音や土煙が見えたりしていたが、精霊さん達が頑張ってくれているのだろう。

 人魚の女王様も、たっぷりの魚介類を持参でお礼に来ていた。

 ちなみに、女王様のお腹は膨らんでいる…妊娠したのね、あなた…。


 嫁ーずも妹ずも、最近ネス湖の湖畔の遊泳場で流行の水着を着て、砂浜で全力で遊んでいた。

 ドワーフさん達の村からほど近い浜辺で、例の小型バギーの改良版で遊んだり、BBQをしたりと。

 えっと、君達…何しに来たの?

 ちなみに、サラは木陰でずっと寝てるし、リリアさんは薄い本を読んでいる。

 ユズユズ夫妻は、木陰で2人でラブラブ中。

 ちなみに、ユズカと母さんはラフな服装で、ユズキはハーフパンツタイプのピンクの水着…誰のチョイスだ、それ?

 しかし、本当に君達…何しにここに来たの?


 父さんの領地や神聖国での移民者様に地下都市を造った経験があったからなのか、単に精霊さん達が張り切ったからなのかは不明だが、翌日には宿泊室は完成したらしい。

 精霊建設の親方達は、やり切ったという顔で俺に報告に来た。

 ホワイト・オルター号で近くまで行き、じっくり完成した宿泊施設を全員で観察。

 出来は上々なのだが、まだ窓とか内装は何も出来ていない。

 ここから、ドワーフさん達が細部にまで手を入れてくれる事になっている。

 ドワーフさん達の秘密のガラス(っぽいもの)で窓を造ったり、筋肉エルフさんが倒した獣の毛皮を敷いたりと、もうちょっと内装工事が必要。

 人魚さん達も総出で海上の荷運びを手伝ってくれるとか。

 どう手伝うのかと思ってたら、手漕ぎボートみたいなのをドワーフさんに用意させ、それの動力となり引っ張るとの事。

 大勢の人魚さん達がボートを引っ張ているのを見ていると、何故か雪の上を走る犬ぞりを思い出してしまった。

 さて、細かい内装に関しては、皆さんにお任せする事にして、俺達はまた日常へと戻るべく、邸へと帰る事に。

 ほんの数日ではあったが、コルネちゃんやユリアちゃんだけでなく、母さんに嫁ーずは存分にリゾート気分を満喫した様だ。

 寒暖差が少ないこの星では、ほぼ年中海水浴は可能ではあるのだが、それでもちょっと水温が低くなる時もある。

 どうやら今は地球でいえば初夏ぐらいの水温で、十分に遊泳可能だったらしい。

 らしいというのは、俺自身は泳いでないので、みんなに聞いた感想。

 嫁ーずの大胆な水着姿を間近で堪能したかったのだが、ちょっとやる事があったので、途中で一時離れていたんだ。

 そのやる事とは…。


「トールヴァルド様の仰った場所に関しての調査は、全て完了いたしました」

 モフリーナが表情を変えずに、俺の目の前に紙の束を差し出した。

「これが、調査結果?」

 束と言っても、レポート用紙4枚ほどの量なので、パラパラと内容を流し読む。

 だが、困った事に、各所に『不明』の文字が並んでいる。

「うむ、完了はした。しかし、結果として詳細は不明なままじゃ」

 ボーディも腕を組み難しい顔でそう言う。

「………」

 モフレンダは無言っと。

「ナディアさん達が捕まり転送された陣ですが、どう接触しようとも領域化出来ませんでした。また、さらに北方にあるという湖も、人工的に造られた物、もしくは出来てしまった物としか分かりませんでした」

 モフリーナが申し訳なさそうにそう言う。

 ダンジョンマスターでも、結局は分からなかったという事か…。


 ここは、第9番ダンジョンの地下にある、ダンジョン管理室兼モフリーナの部屋。

 精霊さんに建設をお願いし、少ししたところでモフリーナから通信が入ったのだ。

 調査が完了したと。

 だが、結果として何も分からなかったそうだ。

「例のひよこも複数発見しましたが、一体何なのかさっぱりわかりませんでした」

 モフリーナによると、やはりひよこは複数いるようだ。

「ナディア達の話では、どうやらアホ毛か角の様な物が頭にあるひよこが、居るとか居ないとか聞いたが?」

 ひよこに関して聞いていた事を3人に確認してみたが、

「それは妾達も確認済みなのじゃ。じゃがのぉ…同じ場所におるひよこの頭に、角? が急に出たり消えたりしておってのぉ…本当に同一個体なのかすら確定できぬのじゃよ。じゃから方向書には不明と記載しておる」

 ボーディ曰く、ひよこの角が出たり消えたりしているとの事。

 その所為で、同一個体であるという確証が持てないとか。

 う~~む…何だろうなぁ、そのひよこって…。

 あと、巨大な魔法陣っぽい物と、人工物っぽい湖も気になる。


 そうなると、やはり直接行ってみなければならないって事になるな。

 う~~む…急ぎはしないが、あんまりゆっくりしても居られないかな?

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