第916話 誰が何のために?
トールがひよこが何なのか苦悩していた丁度その頃、ダンジョンマスターズは問題のひよこを無視してさらにダンジョン領域化を北へと進めていた。
「これが例の湖ですか…」
目を閉じたままのモフリーナは、問題の湖へと伸ばした領域が届いた事を【視て】いた。
「うむ、妾にも視えたわい」
「…大きい…」
モフリーナの領域が湖に到達したのと時を同じくし、ボーディとモフレンダも湖まで領域を伸ばし終えていた。
多少、モフレンダの言葉遣いがエロく感じようとも、本人はその気は無いので全くないので、単なる偶然である…多分。
「ふむ…しかし、これは明らかに人為的な物じゃのぉ」
自分の担当する湖の領域を調べ終えたのか、ボーディがそう呟くと、
「ええ。ですが、人為的ではありますが、意図した物では無い様な…」
そうモフリーナは言葉を返した。
「…駄目…濡れちゃう…」
絶対に、モフレンダはエロく言おうとはしていない。
単にこれ以上領域を伸ばすと湖に入ってしまうというだけで…
「あ…入っちゃう…」
領域化を上手くコントロールできず、湖の中に入ってしまうというだけの事…の、はず…。
「のう、モフレンダや。お主、わざとじゃろ…その言い回しは?」
「ちょっとエッチぃですよね」
ボーディとモフリーナもエロく感じてたらしい…。
「うん…わざと。こういう言い方をすると…男共は喜ぶって…」
「どこ情報じゃ! 要らん気遣いはせんでええわ!」
「ここに男は居ませんけど…」
怒るボーディと、呆れるモフリーナ。
「そ? じゃ、やめる」
ボーディもモフリーナも、未だこの天然なのか計算なのかよく分からない羊娘には頭が痛い様だた。
「ところで、何かわかったかや?」
色々と調べていたボーディが、2人に尋ねると、
「この湖は、ほぼ半球方をしておりますね。何かがここで爆発した様な…」
「爆発じゃない…だったら余波で土砂が周囲に飛び散ってるはず…でも、そんな痕跡はない」
モフリーナの意見に対し、妙に長文で話すモフレンダに、
「お主…意外と長文も話せるんじゃな…」
ボーディは、変な所で感心していた。
「なるほど、爆発ではない…確かに。では、消滅した…のでしょうか?」
「…その表現が…一番近い…」
また短文に戻るモフレンダ。
「ふむ、消滅か。じゃが、この大きさの湖を造り出すほどの事象を起こすとなると、エネルギーは莫大ぞ?」
ボーディが眉間に皺を寄せて唸る様にそう言うが、
「…ヒントはある…あの陣とこの湖の直径は…同じ…」
「あ!」「おぉ!?」
モフリーナとボーディが、ほぼ同時に声をあげた。
「まさか…あの陣は?」
「ええ、あの陣は…」
そこまで言って、ボーディとモフリーナは目を見開き、互いを見つめあった。
「あの陣は?」
「あの陣は…?」
繰り返す言葉。
同じく目を開けて、それをじ~っと見ていたモフレンダは、
「…答えは?」
そう2人に続きの言葉を促すが、
「ここはボーディさんに譲りますですよ?」
「いや、妾こそモフリーナさんに譲るのですじゃ!」
おかしな言葉遣いにで譲り合う。
「いえいえ、どうぞどうぞ」
「妾にお構いなく、どうぞどうぞ」
どっかのコントの様である。
「…つまり、2人共…知ったかぶり?」
モフレンダ、言ってはいけないツッコミだ。
「ば、馬鹿を言うでない! 妾は知ったかぶりなどしておらぬわ!」
「そ、そうですよ、モフレンダさん! 私は知ったかぶりなんかじゃありません!」
目に見えて焦る2人のダンジョンマスター。
「…じゃあ、何?」
呆れ顔でモフレンダが追及すると、
「考えつかないだけです!」「答えに行きつかんかっただけじゃ!」
「…………」
第9番ダンジョンの屋上では、時が止まってしまった。
なるほどな。
ナディア達の証言からすると、ひよこは必ずしも敵という分けでは無い感じかな。
あと、湖ってのも怪しい。
地図で見ると、ほぼ真円形をしてるって事は、もしかしたらクレーター?
カルデラ湖って事でも無い感じ。
いや、そもそも火山でもない平地なんだから、カルデラ湖ってのはおかしいか。
やっぱ、クレーターかなぁ?
でも、そんな巨大なクレーターが出来るほどの隕石が落下したんなら、その衝撃は確実にこの大陸全土に伝わったはずだ。
それに、結構な吹き飛ばされた塵が出てるはずだし、そうだとしたら太陽光を塵が遮り、場合によってはこの世界に氷河期が訪れたかもしれない。
だが、そんな話は聞いた事も無い。
ネス湖だって、精霊さん達に掘ってもらった時には、大量の残土が出た。
おかげで壁やらなんやらと有効活用したりできたから、それは良いとして。
って事は、素直に考えたら、何者かがごっそりとその土地を抉ったってのが正しいだろう。
だったら、その抉った土はどこ行った?
誰が何のために抉ったんだ?
ダンジョンマスターズが湖について悩んでいた時、トールもまた同じ悩みに行き当たっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます