第901話  2度目じゃろ?

 蜂達の証言? を再度確認をしたボーディ、モフリーナ、モフレンダ。

 海から帰還した所まで蜂達の話を聞き、その後の事は俺から説明をした。

 先ほどとは違い、細部に至るまでじっくりしっかりと説明を行った。 

「ふむ…モフリーナ、モフレンダ。妾は確実にアレが絡んでいると見るが、お主等の意見は?」

 黙って俺の話を聞いていたボーディには、何か思い至る事がある様だが、それを言う前に2人に意見を求めた。

「私は、ほぼ間違いないと思います」

 ボーディの問いかけに、無表情で一言だけそう発したモフリーナ。

「ひよこ…あやしい…」

 モフレンダも、目元は白いふわふわパーマの白髪で良く見えないが、真面目そうな声色でそう言った。

 え、ひよこが怪しいの?

「やはり、お主達もそう思うか…。これは妾達も山向こうを精査せねばならないな。ふ~~~む…」

「ですね…」「…うん…」

 ボーディが何やら考え込む様に黙ると、モフリーナとモフレンダも同様に黙り込んだ。

 えっと、これだけの情報で何か原因がわかったのか?

 俺がそんな事を考えていると、徐にボーディが立ち上がった。


「奥方達よ、済まないがそこなトールヴァルド殿を少々お借りしたい。この事件の原因を探る手伝いをして欲しいのじゃ。そうさな…塔への往復時間も考えると…1刻もあれば良いか。どうじゃな、許可をいただけるじゃろうか?」

 ボーディに続き、モフリーナとモフレンダも立ち上がり、嫁ーずに向かい3人揃って頭を下げる。

 ここまでされて断れるはずも無く、嫁ーず一同、顔を見合わせた後、全員が首を縦に振った。

 それを見届けたボーディは、

「時間が惜しい。すぐに出るのじゃ!」

 そう言って、モフリーナとモフレンダを伴って、さっさと応接室を出て行った。

 何が何だかわからないが、嫁ーずの目が『お前もさっさと行け!』と言っている様にしか見えなかったので、俺も席を立って後を追う様にして応接室を出た。

 その後、タラップの前で待つ3人とホワイト・オルター号に乗り込み、慌ただしくも塔を目指して離陸した。


 コックピットで俺はずっと押し黙ったままだった。

 3人のダンジョンマスターも同様に無表情で黙ったまま。

 目の前にはブレンダーが呑気に欠伸をしていたりした。

 離陸直後から目指すは目も前に高く聳える第9番ダンジョン。

 さっき来たばっかなんだけどなあ。

 ダンジョンの高層部に纏わりつく雲を突っ切り、屋上の発着場へと静かにホワイト・オルター号は着陸。

 すると、ダンジョンマスターズはすぐにタラップへと向かった。

 そう急かしなさんなって…今降ろしますから。

 俺がタラップを降ろすと、ただただ黙ってそれを踏みしめ屋上へと降り立つ3人。

 その後を俺も追いかけて屋上へと降りたのだが、もうそこに3人は居ない。

 その姿は、発着場の隅の床に描かれた四角いラインの中で、俺に早く来いと目で訴えかけていた。

 何なんだよ…。

 まあ、別に逆らおうとかいう気も無いので、俺も小走りでそこまで行くと、俺達の立っていた床が音もなくダンジョンの中へと吸い込まれて行った。

 はて、どこに行くんだろうか? と考えていると、若干の浮遊感があったと思ったら、目の前に応接セットが並んでいた。

 え、ここどこ?

「お主、ここに来るのは2度目じゃろ?」

 俺が辺りをキョロキョロと見回していると、そんな俺を見て呆れたような声をあげたボーディ。

 2度目? って事は、ここはまさか…。

「私のダンジョンのボスである黒竜の胃の中に創りだした、次元断層の中にある部屋です」

 あ、やっぱそうなのか!

 いや、待てよ? 管理局に聞かれたら不味い話なのか?

 あの山の向こうに何か危険があるとは思ってたが、管理局がらみなのか?

「…ここでは喋って良い…」

 あ、そうですねモフレンダさん…。

「んじゃ喋るけど、あの山の向こうの問題? って、管理局がらみなのか?」

 俺がいきなり核心を突くような質問をすると、

「そうじゃ!」「その通りです」「…間違いない…」

 3人が言葉は違えど、肯定の言葉を発した。

「それじゃ、やっぱナディア達のエネルギーが危険なりょいきまで減っていたのは…?」

「それは別の問題ですね」

 俺が考えていたことは、モフリーナが違うと言い切った。 

「んじゃ、管理局が関わっているのは?」

 エネルギー問題じゃないとして、何が管理局絡みなんだろ。

「それは何点かある。巨大な真円形の湖と光る陣と…ひよこじゃな」

「ひよこ?」

 え、その前の2点は分かるけど、ひよこ? ひよこなの?

 蜂達がひよこ好きなだけかと思ってたけど、ひよこが管理局絡みの危険な奴なの!?

「ひよこじゃ。そ奴は多分、管理局がこの世界に送りこんで来た何者かじゃ」

 管理局、なかなかぶっ飛んでるなあ…ひよこを使うって…。

 もしかして、俺よりもセンス良いかも。

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