第877話  リフレイン

 その夜、俺は一人で寂しくベッドに横になりました。

 頭の中には、『昔々、ある所にじい様とばあ様が住んでおったと…』と言う、市〇悦子さんの懐かしい語り口調がエンドレスで繰り返されていた。

 何故かその語りの後には、ホルモンを焼く大阪のじゃりん子のチ〇ちゃんが、『テ〇ーーー!』と叫びながら、ホウキをもって駄目父であるテ〇を追いかけ回している場面までリフレインされていたが、何故だろう…。

 そう言えば、リフレインのフランス語はルフランだったな。

 ルフランと言えば、やはりかの有名な『悲しみの…』という神曲が思い出される。

 うん、でもレ〇もア〇カも、絶対に中学生のスタイルじゃないよな。

 俺の中学の時なんて、まだ女子の体操服はブルマーだったけど、あんなスタイルの女子なんて見た事なかったぞ?

 あんな同級生がいたら、俺は間違いなく惚れる! 断言出来る!

 あれ? 何を考えてたんだっけ…ま、いっか。

 そんな下らない事をグダグダと考えている内に、だんだんと俺は夢の中へと堕ちて行った。


 翌朝、コルネちゃんとユリアちゃんは、仲良くお手てを繋いで食堂兼キッチンへとやって来た。

 朝食は簡単にパンとサラダ。

 出発前に積み込んで置いた野菜なのだが、飛行船の内部は気温や気圧の調整などお手の物。

 なので、ちゃんと低温で保存しておいたのだ。

 2人が起き出す前に、俺はちゃちゃっと朝食を準備を済ませて、しっかりと出迎えた。

「2人とも、おはよう!」

 どっかのテニススクールの〇鷹コーチの様に、キラリと光る口元で、最高の笑顔で2人を出迎える俺。

 ふっ…完璧な兄貴だぜ。

 これでコルネちゃんも、嫁ーずに変な言い掛かりを告げ口しようなんて気は起きないだろう。

「おはようございます、お兄さま」「おにいちゃん、おはよー!」

 うんうん、2人共元気で良かったよ。

「さ、朝食は準備してあるから、早速食べよう。お昼前には我が家に到着するからね」

 そう言って、2人に着席を促す。

「分りました。ユリアちゃん、いただきましょう」

 コルネちゃんは、ごく普通にユリアちゃんを席に座らせ、その隣に着席した。

 うむ、俺の作戦は上手くいった様だ。

「この程度では、私の口を止める事は出来ませんけれどもね…」

 何かコルネちゃんが言った気がしたが…気のせいだろう。


 その後、和やかに朝食を終えた俺達は、コックピットのある部屋に向かった。

 まあ、自動操縦があるんだから、別に飛んでる最中に操舵の必要は無いんだけど、やっぱこれは気持ちの問題。

 コックピットに収まっていないと、どうにも気持ちが悪いんだ。

 あの宇宙便〇舎で、旧式貨物宇宙船のサジ〇リウス号を操縦していたト〇ピーとラ〇だって、きっとCM中は休憩していたに違いないのだ! 四六時中操縦なんてしてないはず! 間違いない!

 労基に従ってきっちりと勤務体系を考えるとなると、完全に3交代で休憩とか休日を考えるならば、少なくともクルーは4セット以上必要だ。

 なのに、アニメにしても小説にしろ、登場人物が少なすぎる!

 あのホワ〇トベースのパイロットだって、ほとんどミ〇イさんがしてたんだぞ!

 彼女の勤務と給与体系はどうなってんだ!?

 ブラックな職場なのか、地球連〇軍は?

 まあ、それはどうでも良いんだが…実質このホワイト・オルター号は、サラ、リリアさん、俺が操縦できる。

 基本的に、一度でも行った事のある所への飛行に関しては、離着陸以外の操縦は不要だ。

 だから、自動操縦モードに入れてしてしまえば、あとは誰がコクピットに座ろうと、操縦桿をどう扱おうと問題ない。

 だからたまにユリアちゃんが座ってはしゃいだりしても大丈夫…今も座ってるけど…ウルトラ・パワーで壊したりしないよね…?

 ま、そこまでユリアちゃんも馬鹿じゃないだろう。

 コルネちゃんもすぐ近くで見守っている事だし。

 って事で、一段高い所にある、操縦席の後ろに据え付けられたソファーセットで、俺はお茶を頂きながらその様子を見ていた。

 たまに、『べきっ!』とか、『がしゃん!』って音がしたり、『あ!』とか『ちょっと!』とかユリアちゃんやコルネちゃんの声もするが…。

 あはははは…多分、大丈夫だろう。

 

 さて、コックピットの正面にある外部モニターに、天辺が雲に隠れた高い塔が見えて来た。

 あんなクソ高い塔は、この大陸には一つしかない(っと、思う)。

 そう、毎度お馴染の、モフリーナの管理する第9番ダンジョンだ。

「2人共、もう少しで到着するから、ブザーが鳴ったら席を交代してね」

 オートパイロットが切れる警報が鳴ったら、操縦席を空ける様に言うと、

「はい、お兄さま」「はーーい!」

 2人共、とっても良い返事を返してくれました。

 んじゃ、もう少しだけゆっくりしますかね。

 これで短い王都行きの旅も終わりだなあ。

 心残りは、兄×妹物の薄い本の新刊を手に入れられなかった事か…。

 いや、まだチャンスはあるはずだ。

 あの王女様達への契約料としての小型バギーの納品の時…その時までに出版されている薄い本、全部まとめて手に入れてやる! 次こそ、俺はやるぞーー! 

 俺が心の中でそう誓っていると、何故かコルネちゃんがまたまた冷たい目を俺に向けていた。

「お兄さま…考えている事を口にするのは止めた方がよろしいかと。あと、その様な本を購入しようとしていた事も、昨夜の事と合わせて、お義姉さまにご報告いたしますね」

「やめてーーーーー!」

 これじゃ、昨夜と同じ流れじゃねーか!

 コルネちゃん、嫁に…嫁達にだけは言わないでくれーーーー!

「駄目です」

 俺の心の声よ、口から飛び出るなーーーーー!

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