第863話  ナニかいるな?

 数日後、俺と妹2人は、大空の旅へと飛び立った。

 最後の最後まで嫁ーずが一緒に行くと駄々を捏ねたが、あれやこれやで宥めすかして留守番をさせる事に成功した。

 ま、まあ…今朝まで俺が色々と頑張って宥めたんだ…何があったかは聞かないで欲しい。

 でも、一言だけ言わせてほしい…マジで疲れた…。


 ってな事も有りましたが、ホワイト・オルター号には、献上する蒸気自動車であるひつじさん号と、陛下から発注されていた小型バギーの完成品も数台積み込んで、俺と、コルネちゃん&ユリアちゃんの3人で王都に向けて出発したのだ。

 ホワイト・オルター号は、はっきり言って巨大な飛行船だ。

 普通の飛行船であれば、操縦に数名が必要だ。

 だが、この飛行船の内部、人の目に絶対に触れないとある場所には、超高性能コンピュータが搭載されているのだ。

 そう、かの有名なバ〇ルの塔に設置され、5000年もの間、地球上のありとあらゆる出来事を記録し、そればかりか砂嵐まで巻き起こして塔の存在を隠し続けた、あの有名な超高性能コンピュータと同型が搭載されているのである!

 いや、嘘です。

 何か仕組みは良く分かんないけど、俺の願望が形になったのが、このホワイト・オルターです。

 余計な事を言ってしまったけれど、まあ、それでも似た様な物だ。

 ガチャ玉により創造されたこの飛行船は、実は地球では考えられない程にファンタジーでハイテクだ。

 そもそも、飛行船って定義から考えると、普通は船体内部に多くの気嚢を持ち、比重の軽い気体を充填して浮遊する。

 だが、このホワイト・オルター号には、気嚢に似た形状の物は数個あるのだが、ヘリウムとかの浮揚ガスは入っていない。

 言ってみれば、ただの飾りである。

 とは言っても、飾りだと言って置いているだけでは勿体無いので、出入りできる扉を設け、数人が寝泊まりできる場所や、シャワールーム、トイレなどとして活用している。

 大きく目立つ船体自体は、見た目は柔らかな素材で出来ている様にも見えるのだが、吊下げたキャビンの重量で船体が折れ曲がったりしない様に、かなりしっかりとした骨格が入っており、外装も実は結構な強度を持っている。

 なので、カーゴスペースとしても活躍している。

 今回の献上品である蒸気自動車であれば、数十台積み込んだところで、びくともしない。

 そんな船体から太い柱でキャビン部が吊下げられているわけなのだが、その柱もかなりの強度があり、内部は空洞だ。

 そこを通れば、キャビンと船体を行き来も出来る。

 え、今更説明なんて要らん? 今まで散々乗りまわしてたんだから、説明が必要な時期は、とうに過ぎている?

 はい、そうですね…まだまだ説明したい事とかあったのに

 太陽神と月神の巨大フィギュアとか、ネスの3投影装置可とか、シールドの事とか、自動操縦の事とか…。

 それも散々出てきたから、今更だろって? 

 ええ、そうですね…ごめんなさい…。


 では、気を取り直しまして。

 とに角、超ハイテクでファンタジーなこのホワイト・オルター号。

 空気抵抗とか完全に無視して飛行しているので、揺れなんて全くない。

 ネス湖の湖畔を飛び立ってから王都に行くまでの空の旅は、パイロットである俺が操縦席に座る事なんて、ほとんど無い。

 なので、コルネちゃんとユリアちゃんとで、食後の雑談しながらのティータイムだって出来ちゃうのだ。

「で、2人は父さんに何を報告に行くの?」

 和やかなムードの中、ずっと気になっていた事を、ズバリ訊いてみた。

「お兄様であっても、お話は出来ません。お母様から承った重要な任務ですから」

「にんむですから!」

 コルネちゃんが、質問は完全に拒否しますとばかりに、真面目な表情でそう答えた。

 ユリアちゃんは、お姉ちゃんの真似がしたかったのかな?

「もしも情報が漏洩したりしたら…」

「がくがくぶるぶる!」

 ああ、うん…。

 コルネちゃんが真面目な顔だったのは、強い意思かと思ったけど、母さんが怖かっただけなのね。

 ユリアちゃんが震えてるのを見てたら、完璧に理解出来てしまったよ。

「あ、うん…そうか…。俺もまだ死にたくないから、聞かないでおくよ…」

 

 っと、取りあえず言ってはみたものの…先ほどの質問の時、コルネちゃんの視線が俺の背後へとチラッと動いたのを俺は見た! 

 見逃さなかった! 間違いなく見た! 俺は断言出来る!

 このホワイト・オルター号に乗り込んでから、ずっと気になっていたんだが…やっぱナニかいるな?

 ま、姿が見えないって事は、間違いなく妖精さんかもっち君だろう。

 王都の父さんの邸のもっち君とか妖精さんとかと交代のためにこっそり乗り込んだのか? いや、そうじゃ無いな。

 それならば、堂々と姿を見せたって問題ないはずだ。

 コソコソと姿を隠して気配を消して、さらに俺の背後にいるって事はだな…嫁ーずが俺に監視を付けたんだな? 

 いや、さっきのコルネちゃんとユリアちゃんを見るに、母さんも関係してるな。

 もしかして、嫁ーずが妖精さん達にも協力してもらえたら云云かんぬんってのは、こういう事なのか?

 ふむ…そもそも浮気なんて俺はさらさらする気は無いが、こそこそ隠れて監視されてるってのも良い気がしないな。


 ん~~~、この隠れてる妖精達は、どうすべか。

 ってか、俺って妖精の生みの親のはずなんだが、何で俺じゃ無くて嫁ーずとかの言うことばっかり聞いてんだろ?

 ううむ…このままでは、兄×妹物の新刊を買いに行けないではないか。

 これは大問題だ! 王都に着くまでに、対策を考えておかねばな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る