第816話  こ、これは!?

 おかしい…お相手がメリルだけになったのに、何故か普段と変わらぬ程の疲労感…何故だ…。

 お空の上で真昼間から爛れた生活をしてしまった俺とメリル。


 倒しても倒しても、何度でも蘇る強敵に、俺は必死に戦い抜いた。

 その回復量とスピード足るや、何度俺に死を予感させた事だろう。

 しかし、たとえどんな強敵であろうとも、勝てぬ戦とわかっていても、男には退けぬ戦いがあるのだ!

 そう、あの宇宙を股にかけたキャプテンも、『男なら 危険を顧みず、死ぬと分っ〇いても行動しなければならない時がある…負けると分って〇ても戦わなければなら〇い時がある…』と、言っていたじゃないか!

 長いセリフだったので、一部伏せておきました。

 いや、それは良いんだ…。 


 無限に続くかと思われたあの戦いは、どう考えてもおかしい!

 そもそもメリルはイネスと違って、こんなに体力は無かったはずだ。

 イネスだったら、ここまで体力あるかと言われたら、それも疑問だけども…。

 今はスヤスヤと俺の横で眠っているが、さっきまでの獲物を狙う肉食獣の様な目をしたメリルは、どう考えても…まさか!?

 薬なのか? ヤクなのか!? 

 そ、そう言えば、途中でメリルが『水分補給です…』とか言いながら、何かを飲んでいた様な…どっかに残骸が…あっ!!

 ベッドの下に、見た事も無い様な瓶が転がっている!

 正確には、この世界では見た事が無い様な瓶だ。

 前世では何度もお世話になった、滋養強壮ドリンクの定番中の定番、ユン〇ル皇帝液の瓶とそっくりじゃないか!

 スクリューキャップじゃなく、コルクの栓で封をしてる様だが、どこでこんなヤクを仕入れたんだ?

 いや、それより、こんなドリンクの存在を、俺は知らない。

 この世界に、こんな強力な滋養強壮ドリンクがあるなんて聞いた事ないぞ?

 まさか…ユズユズ夫婦なのか?

 こんな知識をこの世界の誰かに伝えたのは、あのどこでもイチャラブ馬鹿夫婦なのか!?


 はっ!? そう言えば、噂で聞いた事がある。

 確か温泉スパリゾートの大人の娯楽区画にある、人魚さん達経営の娼館で何やら最近特殊な飲み物が流行っているとか。

 その飲み物は、数か月前に販売されて、娼館で働く人魚さん達が、毎日何本も消費すると噂の飲み物だとか…。

 確か魔族さん特製の、超高級飲料だとか聞いていたが、まさかお酒の類では無く、もしやコレの事か!?

 それをメリルがこっそりと仕入れてきたというのか? しかも…封をされてる残りが…ひのふのみの…ダースで買ってきたのかよ!

 こ、こいつは危険なヤクだ! と、取り締まらねば!

 いや、待てよ…これ、男にも効果あるのか? あるんだったら、ちょっと対応が変わってくるな。

 もしも男にも女にも効果があるのであれば、王都の貴族とかに、高値で売り付ける事が出来るじゃないか!

 畜産業と治療院ぐらいしかお仕事の無い魔族さんにとっても、大金を稼げる仕事となるはず!

 あ…違う…男にも効果があるとか分かると、俺が無理やり嫁ーずに飲まされる未来しか見えんわ。

 一番最初に最初に死ぬの、俺で確定な気がして来た…。 


 そんな事を考えていた俺だが、横ですやすやと幸せそうな顔で眠るメリルを見ていると、だんだんと眠気が…。

 窓から見える空も、茜色に染まって来ている。

 ホワイト・オルター号は、空に敵性魔獣でも出ない限り、完全自動航行で王都を目指す。

 敵が出てもシールドで防げるけど、そんな時は一応アラートが船内に鳴り響くのだ。

 今まで鳴った事ないけど、もしもの備えも完璧なので、俺もメリルと一緒に寝る事にしようかな。

 ちょっと腹は減ったけど…また後でメリルが起きた時に、一緒に何か食えばいいか。


 だけど、このヤクだけは何処かに隠しておこう…俺の身が危険すぐる君だ…。

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