第788話  きつねさん&くまさん

 ドワーフ親方に、まずは乗って来た試作蒸気自動車の問題点などを話し、改良して貰うようにお願いをした。


 そして問題の『きつねさん号』の開発に関して、親方に相談だ。

 俺がイメージしているのは、生前に何度か見た事がある、タケ〇カ自動車工芸とか光岡〇動車のマイクロカー。

 確か排気量は50ccぐらいで、速度も大して出なかった、ちっちゃい車だ。

 結構、ファニーで丸っこくて可愛らしいデザインだった記憶がある…うる覚えだけど。

 スクーターベースの物だったら、4輪ともスクーターの小さいタイヤだったのを覚えているので、今回もそれに倣って造ろう。

 車体は安全性を考慮して屋根付きで、シートは2個。

 ユリアちゃんは、コルネちゃんと車でお出かけしたいらしいので、これは絶対。

 蒸気機関は1基で、シフトはオートマチック…というか、前進と停止だけの超簡単で、誰でも運転出来ちゃう遊園地のバッテリーカーと一緒だけど、バック付き。

 バッテリーカーって知ってる? パンダとかクマとかの顔の付いた子供用の乗り物で、可愛いハンドルが付いてる奴。

 子供とかが100円玉入れて、一定の時間動くあの乗り物。

 あれをの安全性と操作性を参考に、俺様のスーパーテクノロジーをつぎ込むのだ。

 まあ、あれにはクラッチなんてものは無いから、一応はオートマチックだね。

 そもそもトルクコンバーターとかの複雑な機構なんて知らないし造れないんで、シフトレバーじゃなくてボタン式で動力を反転させるだけ。

 それぞれのシフトに対応したボタンを押せば、ちゃんと前進したりバックしたりできる様にしようと思う。

 もちろん、間違って走行中に押したって誤作動しない様に工夫は必要だろうけど。

 という事は、当然ながらペダルはアクセルとブレーキのみ。

 ついでにパーキングブレーキなんて物は無い。

 シフトボタンで停止を押したら、自動的にブレーキがかかるようにする。

 あとは、ウィンカーとライトとブレーキランプ…これは既存の製品の形状を少し弄って、可愛いきつねさんの顔に見立てて造ろう。

 サイドミラーは、勿論の事ながら、きつねさんの耳の形。

 全体的なデザインは、ドワーフさんお得意のデフォルメ化できつねに似せて、内装にもチラホラときつねの意匠を入れよう。

 最高速度は、せいぜい15km/h程度まで。

 本当は安全の為にエアバッグとか付けたいんだが、そんな物は開発できません。

 エアバッグの車体への衝撃から展開までの時間とか展開速度とか、それはもうメーカーさんが気が遠くなるほどの研究と緻密な計算、そして数え切れないほどの実験を繰り返して実用化させた物だ。

 それを俺が、てきとうな知識で実用化なんて出来るわけが無い。

 だから何かにぶつかっても大丈夫な様に、超硬い金属でボディーを造ろう。

 何せマイクロカーは小さいから、馬車にだって踏み潰される可能性がある。

 あ、安全の為にライトは昼までも常時点灯ね。

 あとは、シートベルトはしっかりした魔物系素材で製作する事にしてっと。

 シートもレ〇ロ製の様なフルバケット・シートだ。

 あ、そうそう、身体と面している部分は柔らかいクッションも欲しいな。

 そうそう、クラクションはコンコンコーンって感じで良いかな?

 本当の鳴き声は違うらしいけど、本物なんて俺、知らんし。

 ん~~~~っと、後は……………。

 

 

 気付くと、俺と親方は、きつねさん号計画に夢中になり、いつのまにか陽が傾くまで熱く語り合っていた。

 コルネちゃんとユリアちゃんは、退屈だったのかソファーでお昼寝しちゃっていた。

 一応、考え得る限りのアイデアというか注文をドワーフ親方に告げ、おれは2人を優しく起こして、今日は帰る事に。

 帰りの車の中では、ユリアちゃんがきつねさん号の進捗状況? を尋ねてきたが、いきなり始動した計画なので、概要はこんな感じとだけ話をしておいたが、それでも自分専用の車の計画には、ユリアちゃんはわくわくしっぱなしだった。

 そんなユリアちゃんと俺の会話を、羨ましそうな顔で聞いていたコルネちゃん。

 まあ、コルネちゃんはうさぎさん号も運転した事あるもんな。

 ふむ…だったら、コルネちゃんには、うさぎさん号と同型になるが、くまさん号でも造ってあげようか、HaーHaーHa! と、冗談で言ってみたら、是非とも欲しいとお願いされてしまった。

 迂闊な事を言っちゃ駄目だな…俺ってやっぱ馬鹿かもしんない。

 まあ、この先、領都の父さんの屋敷での大樹のお世話とかにコルネちゃんが行く事もあるかもしれないから、別に造ってあげてもいっかな。

 でも、もしも2人の専用自動車なんて作ったら…嫁ーずと母さんがブー垂れる可能性があるなあ。

 だって、今のうさぎさん号は2人乗りだけど、嫁ーずは5人。

 母さんは、そもそも専用車を持っていない。

 怒られる前に、そこら辺も考えておいた方が良いな。

 

 妹達と蒸気自動車の話で盛り上がっていると、あっという間に保護地区の門を通り抜け、ネス湖の湖畔をしゅぽしゅぽ走って俺の屋敷へと戻って来た。


 でもさ…ユリアちゃんもコルネちゃんも、変身して飛んだり走ったりした方が、車に乗るよりも、絶対に早いと思うんだけど?

 え、コルネちゃん、どうした? ふむふむ…街中でそうそう変身できないし、運転するのが楽しいからと。

 ユリアちゃんは…走るの嫌? 車でお買い物に行きたい? 

 そか…まあ、計画はもう始動しちゃったから、欲しい理由なんて今さらだけどね。



※こっそり新作投稿しています。

 姫様はおかたいのがお好き

 https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730

 不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!

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