第781話  一路リーカへ

 俺達が王都から帰ってきてから、7日ほど経った陽の午後。

 領都リーカの父さんお屋敷に逗留している母さんから、全ての準備が整ったと通信が入った。

 

 母さん達がリーカに留まっている間に、俺達も母さんを迎える準備は万端済ませてある。

 具体的には、屋敷で使ってなかった部屋などを片付けて、母さん達が過ごしやすいように部屋を一部改築。

 とは言っても、寝室がそのまま産室に出来るようにしたのと、いざ出産間近となった時の為に、魔族のお医者さんや領都で俺やコルネちゃんがお世話になった産婆さん(まだ生きてた…びっくりだ)が宿泊できる部屋を用意したぐらいだが。

 手を入れたのは、だだっ広い地下室の一部に、一部屋大体12畳程度の部屋を6部屋造ったのと、そこにトイレとバスルームを増築した、ちょっと豪華なワンルームマンションに。

 母さん達が宿泊する部屋は、屋敷の尖塔がある部分の壁をぶち抜いて20畳ぐらいの部屋にし、風呂とトイレを設置。

 コルネちゃんとユリアちゃんは同室希望だったので、母さんお部屋の隣に15畳ぐらいはある部屋をリフォーム。

 2人の部屋にはトイレだけ設置して、風呂は俺達と同じ浴場を使ってもらう事にしている。

 産後に動きが制限される母さんと違って、自由に動き回れる2人なので、風呂もトイレも不要かと思ったけど、夜中にトイレまで歩くのは嫌! と、ユリアちゃんからの訴えがあったので、トイレだけは設置しました。


 さて、ここまでのリフォームではあるが、完成までの工期は実に3日。

 お仕事は、エルフさんとドワーフさんに依頼をした。

 力技のエルフさんと、手先の器用なドワーフさんが大人数で押しかけ、後いう間のリフォームでした。

 両種族がタッグを組んだうえ、大人数投入のおかげで、滅茶苦茶工事が早く進んだのだ。

 いっその事、エル&ドワ建築会社とかやっちゃえばいいのに。


 でも困った事もあった。

 実は、精霊建設さんの出番が最近あんまり無い事から、精霊さん達がちょっと拗ねたのだ。

 しかし、家の中であの精霊さんのドタバタ工事はちょっと遠慮したかったんで、エルフさんとドワーフさんに頼んだのだが、ここが精霊さんのプライドを刺激したらしい。

 精霊建設の親方たちが、自分達も静かに工事が出来ると大主張。

 宥めるのに、随分気を使ったよ…エネルギーちゅーちゅーも大分やられたけど…。

 それでも、精霊さん達は工事がしたいと不満たらたらだったので、近いうちに何か大仕事でも考えなきゃなぁ。

 いや、費用0円で大規模工事とか出来ちゃうんで、一昔前はとても重宝してたんだけど、今はそんなにでっかい工事って少ないんだよねえ…何か考えなきゃな。

  

 さて、準備も万端整ったという事で、母さんとコルネちゃん、そしてユリアちゃんを迎えに、一路リーカの父さんの屋敷に。

 今回は、嫁ーずは屋敷で留守番。

 俺だけで蒸気自動車をシュポシュポと走らせて、長いトンネルを走り抜け、父さんの屋敷までのんびりドライブ。


 この俺が運転する蒸気自動車だが、構造はとても簡単なので、あちこちの工房が複製を試みているらしい。

 まぁ、我がアルテアン家が、技術を秘匿しているもんで、利益もウハウハ。

 それが気に入らない貴族が居るのは間違いなく、自分がパトロンとなっている工房に開発を命じたんだろう。

 とは言っても、この魔石式蒸気機関は、ちょっとやそっとじゃ複製できない。

 先にも述べたが、構造はとても簡単。

 金属製のシリンダーとピストン、そして水を供給する魔道具とそれを蒸気まで加熱する魔道具の組み合わせ。

 この世界には弁という概念が無いのと、精密な加工が出来ない為、そもそもこの基幹部品の複製すら上手く出来てない。

 金属製のシリンダーとピストンの肉厚、強度もさることながら、材質の耐熱性能と如何に効率よく熱を逃がすか…etc。

 俺とドワーフ職人たちによる、果てしない試作と実験の繰り返しの果てに実用化出来た物なのだ。

 1台2台の蒸気機関をばらしたところで、見た目しか真似できない為、かなり開発中の事故が多発しているとか。

 俺達が開発中にも事故は何度もあったが、安全対策をばっちりしてたから誰も怪我してないけど…大丈夫かな?

 斯様に、基幹部品1つでもこの状態なのに、ブレーキにクラッチ、シフトギアにステアリング、衝撃吸収装置にと、もう果てしないほどの技術の複製をしなければならないのだから、自動車や蒸気機関車という物に関した基本的な知識の無いこの世界の人に、それを造れってのが土台無理な話だ。

 って事で、他領の工房で蒸気自動車が開発されたって話は、未だ聞かない。

 ま、俺の子供が成人するぐらいには、十分儲かってるだろうし、技術公開しようかな。


 ぼへっとそんな事を考えながら車をのんびりシュポシュポ走らせ、俺は母さん達が待つ父さんの屋敷へと向かった。




※こっそり新作投稿しています。

 姫様はおかたいのがお好き

 https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730

 不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!

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