第767話 ノリと勢い?
朝食後、ホワイト・オルター号へと父さんと向かう。
何のためにって、もちろん母さんのお言葉を実行するためにですよ。
父さんなんか朝食後すぐに、「トール、早く行こう! いや、今すぐ出発だ!」っと、一見すると張り切っているようにも見えるが、俺は知っている。
ただ母さんが怖いだけだという事を…俺もだけど。
そんな父さんと向かった練兵場では、朝も早くから多くの騎士さん達が訓練に励んでいた。
その背後に鎮座する巨大で真っ白なホワイト・オルター号は、降り注ぐ日の光と練兵場や隣接する王城の作り出す影とが作り出すモノトーンの世界が、まるで神聖なヴェールを纏っている様だった。
まぁ、俺が勝手に女神さまから賜った神具だと言ってるだけだが、その威容を目にした人にとっては、神の創り出した乗り物と感じるんだろう。
もしろん結界機能のせいもあるのだが、誰一人として近づこうとはしていなかった。
そんな練兵場へと上記自動車で乗り入れると、父さんは騎士さん達へと一目散で駆け出した。
そして大声で一言。
「全員集合!」
何だ何だと、ぞろぞろと集まってくる騎士たちに、父さんは続けて、
「我が妻ウルリーカより、緊急指令が発動した!」
そう叫んだ瞬間、今までだらだら歩いて集合していた騎士さん達が、猛ダッシュで父さんの前に整列。
…騎士さん達も母さん怖いの?
とか感想を抱きながら、俺も父さんの横に並ぶ。
「ここにいるトール…アルテアン伯爵は、昨日陛下に伯爵が開発した品々を献上したのだが、献上に至らぬ試作品の数々もこの王都に持ちこんでいる。我が妻はそれらの検分と試用を希望している」
騎士さん達、めっちゃ直立不動だよ…。
「よって、今よりアルテアン伯爵の指示の下、作品群を我が屋敷へと運び込んでもらいたい! 急ぎとの要望だ。全員、速やかにアルテアン伯爵の指示を仰げ! 以上!」
……騎士さん達に指示を出している父さんは、その指示内容を聞かなきゃ結構格好いい。
まあ、言ってる内容が内容なだけに何とも言えないけど…。
だって、母さんが作品を見たい、触りたい、使ってみたいと言ってるから、急いで運べって命令だし。
父さんの話が終わるや否や、騎士さん達のリーダー格の人が数人俺の元へと駆け寄って来た。
「伯爵様、何人必要でしょうか!?」
「伯爵様、我々は何を準備したらよろしいでしょうか!?」
「伯爵様、早く御指示を!」
いや、ちょっと待って! そんなに前のめりで汗臭いマッチョマンに迫られても困る!
ってか目の前の騎士さん、充血した目は見開かれてる上に、めっちゃ鼻息荒いし…俺の顔に鼻息掛かってるんですけど! チュー出来ちゃいそうなんですけど!
ちょっと止まって下さい! 止まって!
止まれって! それ以上近寄るな!
ったく…
「んじゃ出来るだけ大きなほろのない馬車を3台用意して、ホワイト・オルター号の後部ハッチ付近に集合。人数は運搬と道中の護衛に20人ほど。まだ開発途中なので運搬する品々には布でも掛けて見られない様に。それでは準備掛かれ!」
俺も命令してみました。
いや~俺には騎士さん達への命令権なんて無いんだけど、ノリと勢いでね…。
その後の騎士さん達の動きは、とてもキビキビとしていた。
あっという間に、頼んでも居ないのに予備も含めて大型の馬車が5台もやって来た。
20名と言ったのに、何故かホワイト・オルター号の周りには50人ほどの騎士さん達が詰めかける。
結界を解除したホワイト・オルターの後部キャビンのハッチを開放すると、
「伯爵様、どれを運び出すか指示をください!」
「貴様等、丁寧に扱え! 死にたいのか!?」
「どの順番で積み込めばよろしいでしょうか?」
「こいつはちょっと重いぞ。何人か手を貸せ!」
ホワイト・オルター号のキャビンの中は、一瞬で戦争になった。
皆、母さんが怖いのか?
お母様…あなたはこの国の騎士さん達に、一体何をしたのですか?
こんなに屈強な僕を大量に従えて、お母様…あなたは戦争でも始める気なんですか?
「伯爵様、ぼーーーっとしてないで、ちゃっちゃと指示をください!」
騎士さん達の慌ただしい動きを見ていた俺も、とうとう怒られちゃったよ…。
※こっそり新作投稿しています。
姫様はおかたいのがお好き
https://kakuyomu.jp/works/16817139558018401730
不定期更新ですが、( `・∀・´)ノヨロシクオネガイシマス!
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