第737話  よっく分ります!

 我が家に戻った俺達一行は、取りあえず溜まった仕事を一心不乱に片付ける事に集中。

 間違っても人魚さんに借りだけは作りたくないからな。

 いや、あの乱こ…いや、お見合いパーティーからずっと、人魚さんはパーティーの定期開催を希望する要望書を出し続けているんだが、そう簡単に俺は承認したりはしない。

 ってか、あのホテルの使い道は既に決まっているのだから、またあの乱痴気騒ぎに使わせたくない。

 とは言え、多くの人魚さん達が今回も妊娠したというのも、これまた事実である。


 種族としての人魚さん達は、もともと個体数…というか人数が少ない。

 これはドワーフさん達やエルフさん、魔族さんにも共通している事ではある。

 しかし、そもそも人魚さん達には女性しか居ないと言う、特大の問題があった。

 他の種族は、少ないとはいえ男女が揃っているので、近親交配の可能性が高くはあるが、今の所はその心配はなさそうだ。

 ギリギリだけどね。

 しかし、その心配どころでは無いのが人魚さん。

 異種族の交配であっても、必ず女性の人魚さんが生れて来るという、とても珍しい種族特徴があるため、今までは種の存続の為に、他種族のオスというか男性を騙したり攫ったりしていたらしい。

 異世界物でよくある、「くっ…殺せ!」って、攫われた男性が思ったかどうかは分からない。

 まあ、例外なく人魚さん達の容姿は良いので、意外と攫われても良い思いをしてるかもしれない。

 他種族・多種族を襲って繁殖を繰り返す関係上、人魚さん達は自然とこの大陸の海岸沿いに広く散らばっていったのだと言う。

 そしてあちこちの国で、密かに繁殖を続けているのだそうだ。

 ちなみに、この大陸の海岸沿いといえば、延々と断崖絶壁が続いている。

 ごく稀に砂浜や船を着ける事が出来そうな岬などがあるが、基本的には暗礁が水面下に多数あるため、海岸沿いの船の往来や、着岸を難しくしている。

 つまりは、あまり人々は海に出る事が出来ないというのが現状。

 海産物がこの大陸で高価なのは、ここに原因があると言っても過言では無い。

 つまりは、海に出る事が出来そうな狭い地域に、人も人魚さん達も必然的に集まっているという分け。

 俺の領地の、南端にある砂浜がいい例だな。

 いや、いい例どころか、この大陸で最大の砂浜だと、人魚さん達に教えてもらった事がある。

 要は、俺の領地が最も人魚さん達にとって居心地が良いという事だ。

 ただ、捕獲できる異性が少なかった事が問題で、ドワーフさんの男性は、身の危険を感じて海岸には行かないそうで、逆にエルフさん達は、人魚さん達が身の危険を感じる為、姿を見つけると海に潜るとか。


 だが、そこに降ってわいた、俺のスパリゾートを中心とした温泉街の娼館勤めと、例のパーティー開催のという最上級の繁殖の場を俺が提供しちゃったもんだから、各地から人魚さん達が続々と集結したらしい。

 現在の人魚さん達は、俺の領地の温泉街の一画にある娼館で娼婦しているのだが、ここの人魚娼婦さんは、ほぼ数日おきに全員が入れ替わっているという。

 行くたびに新人娼婦がお目見えする娼館…人魚さん達だけど…は、野郎共にとってはパラダイスで、人魚さん達にとっても繁殖の機会が増える最高の狩場らしい。

 とは言っても、やはり枯れる人数と回数が限られる訳で、例のパーティーの様に人魚さん達にとってヒャッハー状態には、ちょっと遠いとの事。

 だから、あのパーティーをプリーズ! と、要望書が日々積み上げられているんだと…迷惑な。

 繁殖の手伝いをして種の存続に一役買っているとはいえ、実に迷惑な話だ。


 などと、真面目に考えていたのだが、繁殖したいだけなんだったら、娼館の数をもっと増やしてもいいかもな。

 連日の様に大盛況で満員御礼状態だとか聞いた事あるし、遊びで俺の領地でお金を落としてくれる野郎どもが増えるならウエルカムだし。

 でも、遊びで一晩とかなら楽しめるんだろうけど、何日も拘束されて延々と搾り取られるのは嫌なんだろうなあ…男って。

 俺も男だから、その気持ちはよっく分るよ、マジで心の底から、よっく分ります!

 だって…きっと今夜は数日ぶりに嫁ーずが…。

「トールさま、この書類なんですけれど…」

 メリルがそんな事を言いながら、妙に俺の腕と肩に胸を押し付けて来たり、 

「トールさま、ホテルの従業員募集の件なのですが…」

 ミルシェが、妙に胸元の開いた服を着て、俺の正面で前かがみになったり、

「あ、あの…温泉街のごみ処理の事で…お伺いしたい事が…あっ!」

 俺の目の前で、超ミニスカートのミレーラが、スカートを机に引っ掛けて、おパンティーを丸出しにしたり、

「トールさま、今日はなんだか暑いですねえ…」

 とか言いながら、マチルダが上着を脱いでほぼ下着姿になったり、

「ふぅ…修練で汗をかいてしまったぞ!」

 なぜかイネスは、汗で濡れ透けた服を俺の目の前で大胆に脱いで汗を拭ったり…

 

 目の保養にはなるけど…皆、絶対にわざとだよね?

 俺の執務室で、普段そんな絶対に事しないよね?

「あ、トールさま、本日のお仕事はこの書類で最後です」

 マチルダが、極々普通に恭しく書類を出して来たが、

「なので、夜はしっかりと時間が取れますよ?」

 執務室の隅っこでこっちを見ていた嫁ーず一同は、マチルダの言葉ににやりとした。

 俺、また喰われるのね…あの人魚さん達の生贄にした男共の様に、俺も搾り尽くされるのね…。

「あ、トールさま」

 ん? な、何かな…メリル。

「明日の仕事が滞ったらいけませんので、書類にサイン出来るだけの元気は残してあげますから、安心してくださいね」

 そうか…ペンを握るためのエネルギー以外は、全部吸い尽くすつもりなのね…。

 って、安心できるかーーーーーー!

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