第715話  もっち君

「それで、この…俺に知能指数の近い妖精さん達は、この先どうするつもりなんだ?」

 ちょこっとぶーたれた俺は、ふてくされつつも、ナディア、アーデ、アーム、アーフェンに向かって尋る。

「マスター…拗ねてます?」

 小首をかしげ、唇に右手の人差し指をあてて、ちょっと上目遣いのナディアがそう言った。

 うん、あざと過ぎる…そのうえ、

「原因は、お前だろーが!」

 ガウガウと俺が怒りを露わに飛び掛からんばかりに吠えると、嫁―ずが協力して俺を押さえて、

「どうどう!」「抑えて抑えて」「悪気…ないんじゃないかと…」「冗談ですってば」「獣か?」

 なんか、口々に好き勝手に言いやがる。

 っちゅーか、俺は馬じゃねーぞ、メリル!

 俺は抑え込みで身動きとれねーけどな、ミルシェ!

 ミレーラよ、悪気しか感じられなかったのは、俺だけなのか?

 冗談…だったらいいな、マチルダ。

 獣かもしれん…俺の中には獣が居るのかもしれんぞ、イネス! がおー!

 いや、それはどうでもいい事だけど。


「とりあえず、どうすんだよ、このもっち君は」

「「「「「 もっちくん? 」」」」

 もはや妖精族の代表ともいえるナディアと天鬼族3人娘が声をそろえて聞き返してきた。

「いや、何というか、そんな感じの姿だろ? だから、もっち君って…いや、名前なんてどうだっていいんだってば! とにかくこの10体? は、どうすんだよ!」

 思わず真面目に説明するところだった。

 本題は見失わないぞ、俺は。

「そうですね…きちんという事も聞くようですから、トール様のお屋敷とこちらのお屋敷にでも置いてあげればよろしいかと」

 ほう、いう事を聞くのか…ん?

「ちょっと待て、何でナディアがそれを知ってるんだ? 今日、初めて見たんじゃなかったのか?」

 どうにも疑問なので、そう聞くと、

「あっ!」

「今、あっ! って言ったよな!? ナディアは、知ってたんだな? 知ってたんだろ? だろ!?」

「ええ~その件につきましては、私は記憶してございません」

 どこの政治家の弁明だよ!

「間違いなく言ってた! アーデ、アーム、アーフェン! お前ら、ナディアに報告してただろ!」

「「「 はい! 」」」

 3人娘は、元気よく頷いた。

「やっぱりか!」

「裏切者―!」

 ナディアが叫んでるが、裏は取れた!

「知ってたんじゃねーか、ナディア! さっきから、何でこのもっち君誕生までの流れに、妙にナディアが詳しいと疑問に思ってたんだよ。アーデたちは、ちゃんと定期的に報告してたんだな?」

「「「 一日一回は報告してました! 」」」

 うむうむ。正直でよろしい。

「あぅぅぅぅぅぅぅ…」

 唇をとんがらせて、両手の人差し指をツンツンしたって駄目だ! 可愛いけど…駄目だ!

「知ってて、ここに着くまで黙ってたのかよ! しかも俺並みの知能指数だとか言いやがって!」

 トール君は、激おこぷんぷん丸だぞ!

「えっと…実は知ってました…黙っててすみません。でも知能指数は、本当です…よ? あ、嘘です嘘です! クイーンの配下の蜂より、ちょっと…いや、大分…かなり…もの凄く頭がいい程度です!」

 余計にもっち君の頭の良さが分らんわ!


「何で隠してたのかは、どうせ面白がってだろう。どっちにしろ、一度は確認に来なきゃならんのだから、それは良い。んで、このもっち君には、特技とかあるのか?」

 ただの羽根つき大福もちにしか見えんのだが?

「妖精としての光学迷彩やシールド機能などの基本的な能力は全部備わっています」

「ほう?」

 ナディアの説明に、妙にやる気(?)な、羽根つき大福もち達。

 微妙に大福もちにあった、点? 線? が、顔文字の『キリッ! (`・ω・´)』に見えるんだけど…やっぱ、あれが顔なのかなあ?

 

 ま、基本的な能力はしっかり備わっているのであれば、ボディーガードにするのも悪くない。

 王都の屋敷には妖精さん達がわちゃわちゃ居るから、もっち君と交代してもらおうかなあ。

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