第692話 吐きそう…
ディナーに関しては、結果のみを報告しよう。
ダンジョンマスターズだけでなく、もふりんもカジマギーも参加はしなかったが、晩餐に参加した俺を含め、我が家のメンバー全員が大絶賛であった。
肝心のダンジョンのシェフは、コボルトとゴブリンだった。
何と、給仕までしてくれたのだ。
モフリーナ曰く、転移されて来た人々の中でシェフや給仕として長年経験を積んでいた者達の、その蓄積された経験や技術をそっくりそのままコピーして、このコボルトやゴブリンに移植というか教育したそうだ。
どうやったのかは、よくわからん。
だが、確かにもの凄く美味い飯を造れるのは確かだ。
「別に難しい事ではありません。戦闘などで敵の戦闘能力を解析して対抗措置を取るのと、そう変わりはありません」
とモフリーナは事もなげに言ったが…そう変わらないの?
ま、深く考えるのはよそう。
きっと、なんやかんやとやって、あれやこれやして、その結果一流のシェフが生れたんだろう、うん。
「トール様、このディナーは王城での晩餐に匹敵しま…いえ、それ以上ですわ!」
メリルが言うんだから、まあ間違いは無さそうだ。
絢爛豪華で七彩溢れる華やかなグーダイド王城の食堂とは違い、質素ともいえる程に飾り気のない食堂ではあるが、白て統一された食堂は、実に清潔感溢れ、慎み深く配置された調度品までもがそれを強調している様だった。
しかもディナーに饗される料理の匂い以外、一切しない室内。
余計な匂いで料理の邪魔をしない様によく考えられている。
食堂に飾られている花々も、それら全てが造花や改良された花であると説明されて、深く納得し大いに感心した。
賓客をもてなすための細やかな気遣いで溢れるこの食堂は、是非とも我が家でも参考にしたい。
食堂やディナーの品々を見るドワーフメイド衆の目がキラキラ輝いていたから、まあきっと帰ったら色々と頑張ってくれるだろう。
さて、ディナーも無事に終えて、本日はカジマギーに案内されて、個々の部屋へと移動した。
ここでは特筆すべきことは何も無い。
俺が嫁-ずに襲われたりするとか思ってた不埒な君達!
さすがにダンジョンマスターズの掌の上でコロコロ転がされる様なダンジョン塔の中でなど、嫁ーずも自重するのだ。
なので、ゆっくりと備え付けの風呂にて疲れを癒して、本日はゆっくりと寝る事にした。
いや特筆すべきことはあった!
風呂に備え付けられていた石鹸がもの凄くいい匂いをしていたのと、寝間着として用意されていた下着類とパジャマっぽい物の肌触りが、まるでシルクの様であった事と、ベッドがもの凄くふかふかだった事は、是非とも記すべきだろう。
あと、余談ではあるが、サラとリリアさんは、カジマギーともふりんによって、例の3人の王様となるホムンクルス? の最終調整とか最終確認とかに連れて行かれていた。
なので、身体的にも脳内的にも、この夜はじっくりぐっすりと熟睡できた。
明けて翌朝。
窓から差し込む明るい日差しで目が覚めた俺は、いつの間に洗濯されていたのか、昨日着ていた服に着替えた。
宿泊施設の説明で、カジマギーが脱いだものはバスルームの籠に入れておいてと言っていたが、夜中の内にバスルームの中の洗濯物を回収してたんだなあ。
んで洗濯して、きっちりアイロンをあててベッド脇に戻しておくなんて、ダンジョン中を自由に行き来できるだけの事はある。
さて、お着換えを終えた俺が廊下へと出て、先日案内されたロビー的な所に来ると、既に嫁ーずだけでなく、ドワーフメイド衆やユズユズ、サラにリリアさんと、全員が勢揃いしていた。
全員で朝日で輝く大陸の風景を楽しんでいると、どこからともなくカジマギーともふりんがやって来た。
「みなさま、ごゆっくりできたでちょうか?」
もふりんとの言葉に、全員がニッコリ笑って、
「御召し物は昨夜のうちにクリーニングしておきましたが、何か問題がございましたらお申し付けください」
カジマギーの言葉に、全然問題ないと首を振っていた。
「では、ちょうちょくのあと、だんじょんのさいちんぶへとごちょうたいちまちゅ」
「トールヴァルド様は、王となる者へエネルギーとお名前をお授け下さい」
…とうとう、この時が来てしまった。
この場に居る我が家のメンバー全員の視線が俺へと集まった。
何故か口の中に唾が溜まった。
そうですか…とうとう俺のネーミングセンスが白日の下に曝されますか。
今まで色々とガチャ玉で創ってきたし、それに名前を付けたりもした。
だが、それは俺が付けた物とは公にはなっていない。
あくまでも聖なる女神ネスから賜った物に付いていた名前だと、皆は認識しているはずである…だよね?
それが、皆の目の前で名づけする羽目になるとは…緊張しすぎて、吐きそう…。
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