第690話  しゃーねーなあ…

 応接室で嫁達も交えたダンジョンマスターズとの会談は、思ったよりも長時間に及んでしまった。

 いや、この後特にする事も無かったから時間が掛かったところで問題は無いのだが、名付けなんてしたくない俺と、俺に名付けをさせたいダンジョンマスターズの静かな攻防が繰り広げられたから時間が掛かったのだ。

 ダンジョン大陸に行く事は、吝かでは無い。

 造り上げた王様役の人形? ホムンクルス? に、命を吹き込むと言うか、エネルギーを注入するのも、まあ問題は無い。

 だが、名付けだけは絶対に嫌だ!


「なあ…自分達で造り出した者なんだし、今後の育成方向にも影響があるかもしれないから、名前は自分達で…」

「何を言うか。アレを造り出す切っ掛けを妾に与えたのは、お主であろう? 最後まで責任を持て!」

「あの大陸は、元々トールヴァルド様の所有物です。私はただ借りているだけですので、統治者の名前は大陸の持ち主が決めるべきでは…」

「いやいや、この先永久的に3人に無償で貸与するんで、俺の事は気にしないで全然OKだから!」

「…そもそも、あそこの住人は…あんたが送り込んだ…」

「モフレンダのちゃんと話してる声って、初めて聞いたかも!? いや、そうじゃ無くて、あの人達はこっちに戻りたく無い人達や、こっちに送り込んだら拙い人達なんだから! モフリーナだって知ってるだろ!?」

 どれを誰が話しているのかは、御想像にお任せします。

 

 とにかく、ダンジョンマスターズと俺の話は水平線の彼方まで平行線をたどっていたのだが、ここで思わぬ伏兵が参戦。

「長え間、家ぅ空けち大陸ぅ創っちょったんやけん、ちゃんと最後まで責任ぅとりちゃ!」

「んだんだ! 留守ん間ん仕事ぅ全部わし達に押し付けち遊んじょったんやけん、名付けぐらいしちゃり!」

「よだきいやら思うちょんのやろうが!」

「わし達は死ぬる思いで仕事ぅ熟したんや!あんたも死ぬる気でやっちみぃ!」

 何と、ドワーフメイド衆が、もの凄い剣幕で俺を攻めたてた。これって、攻めてるんだよね?

「よう言うた、ちみっこいの! それ見い! 其方のメイド達まで言っておろうが! 嫁ごはどう思うとるんじゃ?」

 ドワーフさんの援護射撃に力を得たボーディが、今度は嫁ーずに意見を求める。

「私はトール様の意向に従うまでです」

『以下同文!』

 メリルの言葉に賛同の意を表する嫁一同。

 ってか、お前ら回答考えるのが面倒なだけだろ?

「ふむ…なる程のぉ。ちなみに大陸には、先にも申したが、全員招待するぞよ? この前に来たようなダンジョンでは無く、きらびやかな王宮の一室の様な客室も用意したんで、宿泊もOKじゃ。遊びに行きたくなりゃせんか?」

『う”っ!』

「食事は超一流のシェフの作でのぉ。豪華なデザートもあるぞよ?」

『あ”あ”っ!?』

「ボーディ、物で釣るなんて卑怯だぞ!」

 ボーディが嫌らしい作戦に出よった!

 見ろ、嫁ーずが円陣組んでこしょこしょ相談し始めちゃったじゃねーか!

『トール様、是非ダンジョン大陸に行きましょう!』

 …こうなると思ったよ…。

『名前も一緒に考えてあげますから!』

 逃げ道潰されたよ…とほほ…

「ふっふっふっふ…どうじゃ、家族一同からこう言われては、流石のお主も逃げれまい。さあ、妾達と共に行くぞ!」

 はあ、しゃーねーなあ…

「分ったよ…でも、俺にネーミングセンスとか求めるなよ? めっちゃ名付け下手だからな?」

「トールヴァルド様、王様っぽい名前であれば良いのです。それと、まだ私達の造り出した統治者の姿も見ていませんので、是非とも姿を直に見て頂きたいのです。見たうえで浮かんだ名前であれば、私どもに異論は御座いませんので」

 モフリーナの返答に、もう抵抗する気も失せた俺は、「わかった」とだけ告げた。

『きゃ~~~!』

 途端に喜ぶ嫁ーずとドワーフメイド衆。

 君達、遊びに行きたいだけだろ?

 ちなみにユズユズは、結果がどうであろうとも感知せずらしい。

 面倒事じゃ無ければ、どうでもいいそうだ。

 

 はぁ…またですか。

 長期不在だと大変な事になるんだけどなあ…さっさと帰ってくるとしよう…。 

 もう、人魚さん達に借りを作る様な事はしたくないからな。

 あの急造ホテルでサバトを開きうための生贄集め…いや、参加希望者集めなんて、俺は絶対にしないからな!



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 断罪の刃  闇を照らす陽の如く

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