第650話 無責任男?
わーい! ばんざー! と、子供の様に両手を上げて、身体全体で嬉しさを表現しつつ走り回りたい気分だ。
リリアさんと話した次の日、両国首脳陣へとリリアさんの案を、ほぼ修正なしで伝えた所、
「本当にそんな褒美でいいのか?」
と言われつつも、OKを頂いたのであった。
これで面倒な戦後処理も復興に関するあれやこれやも、全部両国の偉いさんに丸投げで、お家に帰る事が出来るのだ!
『え、マジであんな案でOK出たんですか?』
え~っと、あんたが提案したんじゃなかったっけ、リリアさん?
『ええ、まあ…何となく面白そうだから提案したんですけど…そのまま通るとは…いえ、別にそのままでも問題ないですけれども…』
何か引っかかるけど、問題が無いならいいや。
『それで復興に関する事まで、全部丸投げ…ですか? ダンジョンに関してはまだ言ってませんよね?』
うん、丸投げ~! ダンジョンは、まだどこに造るか検討中だから、お口にチャックしといた。
『まあ、それなら構いませんけれども…復興ねえ…』
え、何か問題でもあるの?
『何というか…空襲を受けた都市の復興…いわゆる戦災復興都市計画を丸投げして来たんですよね?』
うん、その通り! ってか、戦災復興都市計画って、太平洋戦争の空襲を受けた東京の復興計画みたいだな。
『ええ、その通りです。戦争なのですから、事の善悪はさておき、焼夷弾によって空襲を受けたり艦砲射撃を受けた東京などの都市は灰燼に帰したわけですね。そしてその焼け落ちた都市を復興させようと戦後に計画された物です』
おぅ…戦争とは、悲惨な物だな…お亡くなりになった人達のご冥福をお祈りいたします。
『ええ、記録しか見ていませんが、悲惨で凄絶な戦争でしたね。史上初めて原子力爆弾が投下されたのも、貴方の住んでいた国ですからね』
ああ、そうだ。広島も長崎も、原爆の資料館とか見たよ…二度と原爆なんて使われない事を祈るよ。
『本当ですね…ところで…』
ん?
『この度の戦争で、多くの都市や村々を灰燼に帰したのは、どなたですか?』
……誰だろうなあ?
『あんただよ! まさか忘れてませんよね? その復興を丸投げって、責任感皆無ですね!?』
いや…覚えてるよ? 忘れてなんて無いから! ちゃんと覚えてるから!
『本当ですか? 怪しいですねえ…。ですが、まあいいです。自分で更地にしておいて、復興は他人任せですか?』
え、ああ、うん…まあ…そうですね。
『さすが無責任男…いえ、これぞ正しく無〇任一代男ですね!』
ハ〇肇とクレイジーキャ〇ツかよ! 俺は、植〇等かよ!
『だって、歌詞がそのまんまですよね。俺はこの世で〇番、無責任と言わ〇た男。餓鬼の頃〇ら調子よく、楽し〇儲けるスタイル…そのまんまじゃないですか』
違うよ! 苦労してるよ! めっちゃ頑張ってるから!
『こつ〇つやる奴はご苦労さんって、首脳陣に言って来たんですか?』
言わねーから! 絶対に言っちゃ駄目な奴だからな、それ!
『分かっちゃい〇けどやめられねぇ~♪』
いえ、それは別の歌だからね…
『しびびぃ~ん、らぷそ〇ぃ~♪』
それは完全に違う歌だよ! タイ〇ボカンシリーズの逆転イッパ〇マンのEDだよ!
山本〇さゆき大先生の歌だよ! カラオケで歌ったら、めっちゃウケたよ!
『ところで、山本まさ〇き & ピンク〇ッギーズの、ピン〇ピッギーズって何でしょうね?』
知るかよ! あ、待てよ…確か、声優の卵でバックコーラスしてたグループだった気が…
『ふ~~~~~~ん』
ちゃんと聞けよ! 一生懸命思い出してる俺に失礼だろうが!
『さて、奥様方のお茶菓子でも作りましょうかね』
聞けって! 管理局から派遣されて来た奴は、皆こんな感じだな!?
『……………』
何とか言えよ!
おい、ねえってば!
ちょっと、返事して?
お~い聞いてる?
ねえ、リリアさ~ん?
おーい………く、悔しい…
正式な論功行賞は民の前で行われるとか何とかで、王子様曰く、お国に戻ったら陛下がお言葉をくれるので、この場ではお話しだけだそうだ。
まあ、後方支援として輸送や物資供出とか色々とやったからね。
あ、そうそう! 我がアルテアンが誇る輸送部隊も、これで一旦はお役御免になるので、それぞれの元の待機場所というか会社へと帰還させる事にした。
とは言っても、全部引き上げたら兵士達の帰還が大変なので、大半の大型蒸気自動車は王子様に無償で貸与する。
運転手は…運転自体は出来るのが居るだろうから、誰かが勝手にやるでしょう。
無償レンタルだけど、ちゃんと無傷で返してね、っと念押しは忘れない俺だった。
ま、実家のある領地では、次々に大型の蒸気自動車が製造されているので、運転手だけを連れて帰った所で、今後のお仕事に支障はないのだ。
ちなみに、べダムさんからも改めて神国からアルテアン一家に対して報奨をとか言ってたけど、こっちは丁寧にお断りしておいた。
あの超面倒臭いポリンちゃんを押し付けちゃってたんだし、それと今回の恩賞でチャラって事にしてもらった。
恐縮していたべダムさんだったが、今後もっと面倒になると思うよ…あの不思議ちゃんがいると…。
ってな事で、何とか戦争に関しての事後処理まで終わったので、お家に帰ります。
今回、実家から派遣していた運転手達をカーゴルームに乗せて、我が家に向かって空へと飛び立ちます。
あ、モフレンダとボーディとカジマギーは、一足先にモフリーナがダンジョン大陸へと連れて行ってます。
まだまだやる事はいっぱいあるけど、全部帰ってからだな。
今は、のんびりと空の旅を愉しむとしよう!
「トール様…人魚さん達との約束は覚えてますわよね?」
「メリル君…今だけは忘れさせてください…」
あんなサバトは思い出したくない。
「そうですか、今だけは忘れたいと? 皆さん、お聞きになりましたわよね?」
あ、振り返ったメリルの視線の先には、嫁ーずが…やばい…
『はっきりとこの耳で聞きました!』
皆、仲が良いね…声が揃ってるよ?
『忘れない様に、身体に刻みこんであげましょう!』
んなぁ!?
「トールちゃん、帰るまで時間があるのですから、しっかり種付けするのですよ?」
「トールよ…死ぬなよ?」
母さん、父さん! もっと他に言い方ないのかよ!
「おねえちゃん…おにいちゃん、しぬの?」
「大丈夫よ、ユリアちゃん。精神的に死ぬだけだから」
おい、コルネちゃん! 何をユリアちゃんに教えてるんだよ!
「さ、では行きましょう、旦那様」『行きましょう、旦那様!』
メリルを筆頭に、俺は嫁ーずに引きずられる様にして、船室へと連れ込まれた。
頼むから…手加減してね…。
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