第648話  知らんよ?

 実は、この世界での建国に関してのルールは、ぶっちゃけもの凄く簡単だ。

 そもそも、誰かに認めてもらう必要も無い。

 基本的に、言った者勝ち的な感じである。

 なので、例えば俺の領地をもって、トールヴァルド国を建国した! と、俺が宣言したら国となる…はずなのだ。

 ルールとしては、そのはずなんだけど、実情はちょっと違ったりする。


 例えばさっきの俺の例で言えば、俺の領地はグーダイド王国に所有権が有るので、トールヴァルド国とするのであれば、まずはグーダイド王国から領地を割譲してもらう必要がある。

 そして俺は割取してもらった土地に住む…これはすでにしているが、そして国民が…これも領民がいるけど、住んでいる事。

 国名…は、トールヴァルド国でもいいけど、その国の法律が整備されている事と、国民に周知されている事。

 それが明文化されていて、周辺の国にも認めてもらう必要がある。

 つまりは、国主が所有権を有する一定の領土と、一定数のそこに住む国民と、その国を統治し国民を様々な要因の害悪から守る為の組織を持ち、周辺の国々から国家として認められる事が暗黙のルールなのだ。

 いや、まぁ…周辺の国に認めてもらえなくてもいいんだけど、その時は認めさせるように何らかの力…つまり金や物や武力でもって、対等な立場であると認めさせなければならない。

 矛盾している様だけど、これは必要な事なんだ。

 だって、簡単にポコポコと国が出来たら、色々と面倒な問題が多々出てくるのは目に見えている。

 だから、なかなか新しい国とは認められないってのが、現実なんだ。


 さて、では何でこんな事を言い出したかと言うとだな…実は建国するからだ!

『はいはい、この前言ってた奴ですね?』

 え~っと、サラは知ってたよな?

『ダンジョン大陸で建国して、大河さんが傀儡政権を裏から操りんでしょう? つまりは黒幕!』

 あ、そっちか…いや、間違いでは無いんだけど、別に傀儡政権にするつもりはないぞ?

『でもダンジョンマスターが国王を【創る】んですよね? んで、ダンジョンマスターは、大河さんの言葉に従うってんだから、傀儡政権で間違いないのでは?』

 あ~、なるほど…でも、俺はダンジョン大陸の政治には積極的には関わるつもりはないぞ?

『はぁ~!? 管理局長の肝いりであんたがあの大陸創ったんでしょうが! 思うがままに統治しないでどうすんですか!?』

 思うがままって、人聞きの悪い事を…大陸はダンジョンマスターの3人で分けてもらうけど、別に好き勝手に3人で統治したらいいと思うぞ。

『ダンジョン大陸に、大河印の巨大ハーレム作るんじゃ無かったんですか!?』

 何でだよ! 何でそうなる! 

『だって、ケモ耳もふもふ尻尾のわんにゃん連合国の獣人…特にメスが今か今かとあんたの登場を待ってるのに!?』

 いや、誰も待ってないだろ…

『あんた…まだ10代なのに枯れてるねぇ…』

 どういう意味だよ! おれは元気モリモリだわ!

『そうでっか。だったら、その元気は嫁達に搾り取られて終わるね。そろそろ、お終いって書かれた赤玉が出るんじゃない?』

 出ねーよ! まだまだイケるわ!

『ふ~~~ん…んで、何の話でしたっけ?』

 くっそー! ボーディに頼んで、こいつを地下200kmに封印したろか!

『出来ない事言ってないでぇ~、どこに建国するんすかぁ~? 早く言ってくださいよぉ~』

 頭悪そうなヤンキーみたいな話し方がムカつく!

『ホレホレ、さっさと言ったんさい。協力できることがあるかもしれないでしょうが』

 ちくそー! いつか泣かしてやるからな!


 いいか? 俺は、野盗とか悪漢達が好き放題したあの土地に建国するつもりなんだよ。焼き払って精霊さんが更地にしまくったあの場所だ。

 んで、そこに月神と大地神の教会も建てるんだ。

 グーダイド王国とアーテリオス神国から行政や軍事に関わる人達を移住させて、ダンジョン大陸からこっちに移された人達と共に頑張って建国してもらうんだ。

 まあ、国民の数がもう少し欲しいから、もちょっとだけダンジョン大陸から移しても良いかなって思ってはいるけど。

 そんで、いまだに神国でお世話になっているカパス老率いる、地底人(命名俺)達も、そっちに再度移住してもらう予定だ。

 もちろんポリンちゃんも引き連れてな。

 グーダイド王国だって、王位継承権の低い王子とか王女とかいるんだから、その辺の奴を派遣してもらって、建国して統治してもらったらいいじゃん。

 小さいけど国王になれるんだから、喜ぶんじゃね? 最初は大変だけど、そこまで俺は責任持てんし。

 農民に職人に商人もガンガン移住させて、幾つかの国を同時建国してしまったら、万事問題解決じゃね?

 今の所は、グーダイド王国とアーテリオス神国が戦勝国なんだから、あの辺り一帯は占領下にあるし。

『当面の食料とかの物資はどうすんです?』

 それは国を統治するために縁戚を送り込む国が考えりゃいいじゃん。

 何度も言うけど、そこまで責任持てんよ、俺は。

『どうなっても知りませんよ?』

 俺だって知らんよ。

 面倒な事は全部誰かに丸投げして、俺は領地でのんびり昼寝するんだい!

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