第637話  ダンジョンハート

 あの猛烈な炎に曝されたダンジョンがどうなるか分からない。

 ってか、そもそもあの棺みたいだったダンジョンの蓋を開けっ放しだった!

 いかんいかん…ちゃんと用をたしたらドアは閉めなさいって、前世でも言われてたのに、忘れるとは~!

 こりゃ、まいったなぁ~!

「はははははははははー!」

「お主、今何と言った! まさかダンジョンの入り口を開けっ放しのまま来たのかや!?」

 え、俺何も言ってませんけど?

「ええい! 全部顔に出とるわ! 入り口を閉じておれば、幾ら極炎の中であろうと耐えれるものを、よりにもよって開けっ放しとは、何をしてくれとんじゃ! あそこにはダンジョンハートがあるんじゃぞ!」

 さあ、記憶にございませんが? ってか、ダンジョンハートって何?

「しらばっくれるのも、大概にせい! ほれ、妾のダンジョンに行くぞ! ダンジョンにネルヴォを繋げば、他の場所でもダンジョンが造れる! その後であの街は消し去るのじゃ! そもそもダンジョンハートが無くなれば妾は消えてしまうでの!」

「ほえっ? ダンジョンの大元を消し去っても大丈夫なのか? ってか、ダンジョンハートって、ネルヴォって何ぞ?」

 のじゃロリの言ってる事は、意味不明だぞ?

「あぁもう! ダンジョンハートは、妾の心臓の様な物じゃ! それを破壊されたら、妾は消え去ってしまうのじゃ! そうなる前に、ダンジョンハートの機能を移すための器を造らねばならん! ダンジョンを別の場所に造るためにもダンジョンにネルヴォ…神経みたいな物を繋げる必要もあるのじゃ!」

 ほっほ~!

「つまり、それがダンジョンのコアみたいな物って事か?」

「あれは、コアになる元じゃ! ダンジョンを拡張した暁には、あれをコアとする予定じゃったのじゃ!」


 汚じゃる丸…じゃなかった、のじゃ汚マスターの説明によると、こうだ。

 ダンジョンの神によって、この星に造り出されたダンジョンマスターとダンジョンハートはセットなんだそうな。

 ダンジョンハートにはある程度のエネルギーが有り、ダンジョン拡張作業が終われば、それを結晶化してコアとするらしい。

 まさに、ダンジョンの心臓。

 ダンジョンマスターはダンジョンの頭脳であり、ダンジョンハートがその名の通りダンジョンの心臓と…うん、聞いてもわからん。

 んじゃ、あれを今焼き払ったら…こいつも消えるのか?

「おい、お主! 今、滅茶苦茶物騒な事を考えてたじゃろ!」

 何で分かるんだよ…

「いいから、さっさと元の場所に案内せい! ダンジョンにネルヴォを繋いで、ダンジョンハートを移動させるのじゃ!」

 俺の裾をぐいぐいと引っ張る幼女。何故かガジマギーも一緒になって俺を引っ張っている。 

 幼女2人が俺を廃墟に連れて行こうとするとは…何やら事案発生の予感が…

「お主、こんな緊急事態じゃというのに、何を鼻の下伸ばしておるのか!」

「こやつは、我が主の言葉など聞いてはおりませぬぞ! 不埒な妄想に耽っているだけの変態ですぞ!」

「誰が変態かー! ああ、もう分ったよ…んじゃ連れて行くから、ちと待っとけ」 

 面倒くさいなあ…あれ、でもよく考えたら…

「でも、別に今すぐ焼き払う訳じゃないんだから、そんなに慌てる必要無くね?」

「「あっ!」」

 いや、あれはあくまで今後の予定だぞ? 今すぐどうこうするつもりはないからな?

 絶対にこいつら、それに気づいてなかったっぽいな。

 ん? って事は…

「お~い、モフリーナ! もすかして、モフレンダのダンジョンも、そのなんとかハートを移さなきゃならないんじゃないの?」

 そうだよ、あの山の天辺のダンジョンも、移す予定なんだから、なんちゃらハートを移動したり、ダンジョンに神経繋げるとかしなきゃダメだろ?

「あ、もうそれは終わってますので大丈夫です」

 OH! 流石、出来る女は違うねえ。

 どっかのお馬鹿なのじゃロリとは、えらい違いだ。

「何故に妾を憐れむ様な目でお主は見ておるのじゃ?」

 めっちゃのじゃロリに細目で睨まれた。

 だって、自分の心臓を下水道に置き忘れるとか…ねぇ?

「…残念な奴だなっ…と」

「お主が無理やり妾を連れだしたんじゃろうが!」

 滅茶苦茶に脛を蹴られました、それも幼女2人がかりで。

 結構痛いですから、止めておくんなまし。


「馬鹿な事やってないで、さっさと行って来て下さい! いつまでも話が進みません!」

 ナディアにまで怒られた…

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