第622話  バーサーカー爆誕!

『ぉーーーーほっほほ…かかってきなさーーーーい! うりゃーーーーーー!』

 ……あれが皇都を暴れ回り破壊の限りを尽くしている魔王…じゃなく、我が母です。


 着替えが済んで、ウルスラグナに乗り込んだ母さん、そしてサラとリリアさん。 

 サラとリリアさんの事は、何の心配もしていない。

 きっと、すぐにこいつを乗りこなすだろう。

 ただ、母さんが慣れるまでには、相当な時間が掛かるだろうと思っていた。

 何せ、元は平民で戦いとは無縁の世界に居た人だ。

 元々負けん木の強い性格だし、女性だからとか母親だからとかを別としても、芯の強い女性なのは確かだ。

 だが、戦争で両親を無くしてしまっている人だから、こういった直接的に力を揮うって事を嫌ってると考えていた。 

 だからいつも直接的な暴力からはなるべく遠ざけていたのだが、父さんの戦闘力が今回はどうしても欲しくなった。

 今回の皇都殲滅は、スピードが最優先なのだから、あの戦闘力を放っておくのは勿体ない。

 そこで、蟲に寄生される事の無いウルスラグナに乗せて、共に戦おうと思ったんだ。

 もちろんサラとリリアさんも参加。

 そうすると、母さんだけがホワイト・オルター号に残る事になる。

 いや、ブレンダーやクイーン達も残るには残るのだが、やっぱり寂しいだろう…と。

 ならば、父さんに付いて行く事が出来る様に、ウルスラグナに乗せちゃえって思ったんだけど、結果がアレでした。

 

 父さんとサラは、巨大なバスターソードを武器に選択し、母さんとリリアさんは、これまた巨大なハルバードを選択した。

 搭乗した当初はもたついていたが、さすが筋肉バカ…いや、高い運動能力を持つ父さん。

 すぐに順応して、バスターソードを振りまわし始めた。それも、めっちゃ高速で。

 まあ、サラもリリアさんも、謎の管理局員能力で、簡単に乗りこなせるだろうから特に気にもしてないのだが、問題は母さんだ。

 我が家において最強の女帝ではあるが、それはあくまでも精神的な物であって、身体はいたって普通の女性。

 いつも戦う父さんを背後でニコニコと見守っている母さん。

 怒ると怖いけど、本当は誰よりも家族想いな母さん。

 俺が何かしでかしても、絶対に俺の味方でいてくれる母さん。

 そんな母さんだからこそ、取りあえず歩かせることが出来たらいいなあ、寂しくない様に、父さんのあとを付いていければいいなあ…ぐらいの考えで、あれに乗せたのだが…何と、瞬時に乗りこなしてしまった。

 しかも、どっかの映画で見た、青龍偃月刀を揮う関羽雲長の様に、豪快にして華麗な槍捌きを披露した。

 これには、一同唖然呆然、言葉も出なかった。 

 

「お義母さま…流石ですわ…」

「流石です!」

「お義母さま…す、すごい!」

「あれほどの技を、どこで…」

「お義母さま、ぜひとも手合わせを!」

 嫁達は、口々に母さんを褒め讃え(?)、妹達は、

「お母さま、いつの間に練習を?」

「おかあさん、かっこいい!」

 そう口にしていた。


 まさか母さんまでもが人外だったとは…というのが、俺の素直な感想だ。

 母さんが人外だと分ったのなら、もうあとはどうにでもなれ!


「それじゃ、全員用意出来たみたいなので、皇都殲滅作戦を開始します! あ、ウルスラグナ組は、突入前に背中に油樽を括り付けるからね。自分で叩き切って、自分で焼いてください」

 ウルスラグナ組は、武器を軽く挙げて了承の意を表し、残るメンバーはこっくりと頷く。

「突入は、ウルスラグナ組とアーデの5人で1チーム、コルネちゃんユリアちゃんと、ユズキとユズカ、ナディアとアームの6人で1チーム、メリル、ミルシェ、ミレーラ、マチルダ、イネスとアーフェンの6人で1チーム。これで皇都のゾンビを根絶やしにして欲しい。俺はダンジョンを探し出して、ダンジョンマスターを救出する」

 俺はゆっくりと全員に視線を巡らせた後、

「作戦は以上! では、諸君の健闘を祈る。作戦開始!」

 俺達は、一斉に変身し、皇都へと突入した。

 そして…巨大なハルバードを揮い、縦横無尽に皇都を駆け周り、ゾンビを一刀両断するバーサーカーが誕生したのであった。


 俺は悪くない…多分、悪くない…。


*新作始めました。


断罪の刃  闇を照らす陽の如く

https://kakuyomu.jp/works/16816927861644288297

 良かったら、読んでみてください。

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