第614話  言質とったどーー!

 銀ピカの鎧に身を包んだ俺は、またもやドームの最上部まで、一気に駆け上がった。

 もちろん、そのクルミみたいな奴の様子を、よく見る為だ。

 俺が天辺にたどり着くと、なぜか後からナディアやアーデ、アーム、アーフェンと、男の夢が現実化したような、可憐で可愛い手乗りサイズの妖精さんが、美しい羽根をパタパタさせながら、いっぱい近寄って来た。

 あの聖なる戦士のエンディングで、全裸で軽やかに駆ける妖精の姿は、俺のハートをガッチリつかんで今でも目を閉じれば浮かんでくる、美しい姿だった。

 あれを元にデザインした妖精さん達なのだから、可愛くないはずが無い! いや、可愛いに決まっている!

 本当は、あの可愛らしいハイレグのレオタード姿にしたかったんだが…なぜか、最近の妖精さんの服装は、露出が減る一方だ。

 

 俺以外には、その姿をはっきりとは見る事が出来ない精霊さん。

 いや、何故か装備越しだと精霊さんの姿が見えたり、存在を感じる事が出来るそうだが、その姿は見た人によって結構違いがある様に感じる。

 俺が見てる精霊さんの姿も、本当は違うのかもしれないのだけど…丸っこくて可愛いんだよなあ。

 そんな精霊さんの服装は、作業服だったり、レオタードだったり、ピチピチのボディースーツだったり、忍者だったりと様々だが…元が丸いから、エロくも無くて、何だか微笑ましく見えるだけ。

 そう、色気なんて全然感じないのだよ…残念だ。


『マスターは、そのレオタードというのがお好みなのですか?』

 ぶはっ! な、何を言い出すんだね、ナディア君!

『仰っていただけたら、すぐに脱ぎますが?』

『『『そうですそうです!』』』

 ナディア、何を言ってるんだ!

 アーデもアームもアーフェンも、そんな事を言っちゃいけません!

 君達は、そのままが一番可愛いんだから、脱ぐとか言っちゃだめです!

『でも、マスターはいつか私達と子作りしますよね?』

 …はぁ? 

『ずっと前に、約束してもらいましたから』

『はっきりと』『間違いなく』『聞きました』

 いや、言ってないぞ! 言ってないからな!

『そうですか? では、奥様方にもう一度相談しなくては…』

 ちょっと待てーーーい! もう一度? 今、もう一度って言ったよな?

『はい、言いましたが、何か?』

 もしかして、俺の嫁さん達に、それ言ったの?

『ええ、勿論です』

『当然!』『ずっと前に!』『結婚式の後に!』

 うぇ? 4人共?

『はい、奥様達とお話ししましたけど?』

『『『奥様が先なら、全然かまわないって言われました!』』』

 ぬぉ!? 嫁さんが先なら…え? 何がとは聞いたらまずいんだろうな…多分、話の流れからすると…

『『『『子作りです!』』』』

 やっぱそうか!

『ですので、いつでも仰って下さったら、脱ぎますよ?』

『『『全裸です!』』』

 だめだめだめだめだめーーーーーーーーー!

 皆には、清い身体のままでいて欲しいの! 

『なるほど…それも奥様に相談してみましょう』

 …そう言えば、さっきも相談とか言ってたな…

『ええ、奥様が懐妊したら、ローテーションに入れて頂けると』

 ローテーション…って、嫌な予感が…

『もちろん、夜の営みのです』

 すとっぷすとっぷ、ストーーープッ!

 無いからな? 嫁さん達に相談しても、ローテーションには入れないからな?

『安心してください。マスターのお手は煩わせません。ローテーション管理は、奥様序列1位のメリル様がしているそうですから』

 ナニ、ソレ…ハジメテキイタンダケド…。

 俺、管理されてたんだ…夜の事まで…。

『ですから、相談するのは当然かと…そう言えば、サラもローテーション入りを希望していた様です』

 何だよ、ローテーション入りって。プロ野球の、先発投手陣かよ…。

 じゃ無くて、サラだけは絶対に無い!

『そうですか? わかりました』

 ほっ…分ってくれて良かったよ。

『念の為にもう一度だけお聞きしますが、サラだけは絶対に無いのですね? 男に二言は無いですよね?』

 え、ああ…うん…あれ? 俺、何かやらかしたか?

『では、その様に奥様方にはその様に報告しておきます。サラだけは無い…つまり、私達ならOKだと。言質とったどーー!』

 んぎゃーーーーーーーーーーーーー! 

『二言は無いそうです。アーデ、アーム、アーフェン、楽しみですね』

『『『楽しみですね~♪』』』

 ………自爆しちゃったのか、俺?


 微妙に落ち込み、ドームの天井にがっくりと手を付き膝まづいて落ち込んでいると、何だか違和感が。

 その正体は、視線。

 どこからか、視線を感じたんだ。

 でも、どこから?

 辺りをキョロキョロと見まわしたが、妖精族が俺の周りには居るだけ。

 もちろん、全員が俺に視線を向けているわけだけど…そんな視線じゃない。

 こう…憎悪とか怒りとか…ドス黒くドロドロとした纏わりつくような、恨みというか負の感情というかが籠った視線。

 何気なく真下…ドームの中を見てみると、視線をもっと強く感じた。

 よく目を凝らしてみると、クルミの割れ目のその奥から、それは俺に向けて放たれていた。

「げっ!」

 そう、視線の主は、クルミの割れ目から、俺を見ていた目玉だったのだ。  



*新作始めました。


 闇を照らす陽の如く 断罪の刃

https://kakuyomu.jp/works/16816927861644288297

 良かったら、読んでみてください。

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