第436話  日本人どこ?

「お疲れさまでした」

 話し終えた俺に、冷たい水で満たされたコップを差し出すモフリーナ。

 礼を言って、一息で飲み干した。

 ふぅ…やり切った感がすごいな。1万人を騙すのって、結構度胸要るなあ。


「大河さん、食べ物とか魔物からドロップするんですか?」

 ダンジョン大陸初心者用の説明の内容を聞いていたサラは、頭に疑問符を浮かべたサラが俺に訊ねる。

「ああ、それを含めて色々と言えない事もあったから、嫁~ずには今回留守番させたんだよ。あいつ等には、神の眷属とか説明したじゃんか。でも実際はシステムバグでやってきた大量の転移者。最初の段階からズレがあるからな」

 そこで一息ついてから、改めて解説。

「んで、この大陸には基本的に動物は一切居ない。植物は生えているが、動物は創造してないからな。局長さんも動物とか運べって言ってたし。って事は、転移者って早々に食い物に困って最悪餓死しちゃうかもしれないじゃん。まさか食人行為なんてさせるわけにはいかんしな。そんな事になったら、この大陸ごと消滅させてお終いにする」

 転移者同士で、文字通り食うか食われるかの争いなんてさせられない。それが弱肉強食の世界では、ごく自然な行為なのだとしても、俺の創った大陸では絶対に許さない。

「なので、簡単に食料が手に入る様に、色々とモフリーナと調整したんだよ。例えば、幼稚園児でも素手で倒せるような、超虚弱スライム君がその代表だな。ドロップするのはこっぺパン1個ぐらいだ。たまにレアドロップできなこパン。ハズレはロールパンかな。基本的に、必ず転移者は前に1日3回は遭遇する様になっている。もちろん強い魔物相手なら、豪華な食料になるぞ。その代わりに魔石は一切ドロップしない」


 そう、魔石はドロップしないのだよ。魔物の核である魔石は、すぐにダンジョンが回収して再利用するのだ。

 色々と計算してみたが、魔石を新たに創りだして魔物にするよりも食料をドロップしたほうが、断然コストが低かったのだ。

 そして転移者が死ぬよりも生き残ってくれた方が、エネルギー収支も大幅にプラス。

 ならばよっぽど酷い奴以外は、生き残らせた方がダンジョン的にはお得って事になる。

 そして、俺の街でドロップ用の食料をモフリーナが大量に定期的に購入してくれるので、俺の領地的にも美味しい。

 ちなみに、支払いは黒竜さんの鱗と爪払いとなっております。領の年間予算ぐらいの価値があるから、俺が現金化している。

 俺は領地の税収が上がって嬉しい。モフリーナ&もふりんは、ダンジョン的にエネルギー収支がプラスで嬉しい。転移者達は生き残れて嬉しい…かどうかはわからんけど、簡単に食料が手に入る。

 これ、上手く回る様だったら、ほっといても良いんじゃね? って感じもするけど、まあ転移者達の精神的ストレスとかもあるだろうから、そう簡単にはいかないはずである。

 なので、このダンジョン大陸での転移者達の動向を細かくチェックして、優良そうな奴には個別に面談した後、俺の領地へと迎えるつもりだ。

 俺は領地に普段はいるので、基本的に人選はもふりん任せになると思うが、随時面接は承っております、ハイ。


「ちなみに、何回かに1回は武器や防具や生活用品なんかもドロップするぞ。こっちはハズレなのかアタリなのか微妙な所だけどな。ちなみにダンジョン塔の宿泊施設には、サバイバルナイフと丈夫な作業服、その他etc…の簡単な初心者用ダンジョン攻略セットも置いてある。着換えはフリーサイズしかないから身体の大きな奴とか小さい奴は不便かもしれんが、そこは仕方ないだろう? ちなみに下着は全員かぼちゃパンツで、ブラは無い!」

 全員分の着換えなんて準備できるか! 1万人分だぞ? 人以外の種族も居るんだぞ? 知った事かよ!

 真面目にダンジョン攻略してたら、色々とドロップすんだから、頑張れとしか言いようがない。

 んで、ちゃんと真面目にやってたら俺の領地へとお迎えが行くわけだしな。


「あ、そうだ! 俺もサラに聞きたい事あったんだよ」

「んが…! なんですか…ふぁ~~~~?」

 こいつ、居眠りしてやがったな? まあ、いい。

「転移者の7割が地球人なんだよな? んで4千人が日本人なんだろ? でも、このモニター見てても…そんなに居ない様に見えるんだが…」

 1万のモニターの7割が地球人なはずなのに、どうもそうは見えない。ましてや4千人はいるはずの日本人の姿が見えないのは何故?

「居るじゃないですが…そこに映ってるのとか、日本人ですよ?」

 俺の目の前に並ぶモニターを目で追ってみたが…猿〇惑星から来たのとか、アメリカのエリア51に居るとか言われてるグレイとかしか映ってないんだが?

「それが、日本人ですけど?」

「ひょえ!?」 

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