第434話  そろそろ始めよう

「大河さん、サラちゃんのココに、きゅぴーん! と来ました! 転移が始まります」

 そういって額を指さすサラ。お前は、どこのニュータ〇プだよ…まあ、いい。

「よし、んじゃまずは様子を見ようかね」

 そう言って、俺はダンジョン管理室のモニター的な物を見つめた。

 なぜか、俺の隣にもふりんがちょこんと座ってきたのだが…お膝に座ってもいいのよ? え、遠慮する? 残念無念…


 このダンジョン大陸に散らばる、無数の蠅型魔物のベルゼ君達から、リアルタイムで情報が送られてきている。

 それをどうやらモフリーナと高性能演算機と化したもふりんで、情報の取捨選択を行い、必要な情報だけを俺達に見せてくれている様で、とてもすっきりして…るわけないか。何せ東京ドームほどもある広い空間一面にモニター(面倒なのでこう呼ぶ)が並んでいるんだから、目がチカチカする。

「来ますよ!」

 サラの声が聞こえたかと思った瞬間、全てのモニターが一斉にフラッシュをたいた様に輝き、俺の網膜を焼いた。

「目が、目がーーーーー!」

 サラが煩い…前もそれやらなかったっけ?

「陽性残像って奴だな。ちょっと目を瞑ってたら戻るよ」

 瞼を閉じても、白く目を焼く強烈な光の残像が、暫くの間残っていたが、やがてそれも収まって来たので、ゆっくりと目を開ける。

 無数に浮かぶモニターには、動く何かが映っている。あまりにも情報が多すぎてよく分からないが…一番近い所にあるモニターをじっと見ていると、それが人である事に気付く。

「無事に転移が終了した様だな。今はまだ奴らも動揺しているだろうから、もう少しして奴らが落ち着いたら作戦開始だ」 

 独り言の様に呟きつつ、ソファーから立ち上がり、ゆっくりと数多のモニターを見て周る。

 

 モニターの中に移っているのは、いきなりジャングルに放り出された人々。

 髪の毛や肌の色も様々な人々が移っていたが、この中の40%は日本人って言ってたなあ。明らかに他の星から来たような生命体もちらほらいるけど。

 いや、はっきりと言おう。あれは、間違いなくエイ〇アンだ。こっちはプレ〇ターとしか思えない。耳が尖がってて眉が吊上がってる…まさか、あれはヴ〇ルカン人なのか!? Mr.スポ〇クなのか?

 それに…ゴブリンに似てるけど、あれってヨ〇ダだよな? まさか、ジ〇ダイのマスターか!?

 あの巨大な脳とでっかい目の気持ち悪い生き物って、マーズ・〇タックに出てた火星人じゃね?

 おいおい、どんなラインナップだよ、この転移者は。

 気持ち悪い生物がまだまだいるぞ! 中には直視に堪えない不気味なモザイク案件まで。


「な、なあ…あいつらって言葉通じるのか?」

 思わずサラとリリアさんに確認してみた。

「ええ、通じますよ?」「はい、もちろんです。問題なく会話は出来ます」

 との、お返事でした。

「そっかあ。言葉が通じても、倫理観が同じとは限らないしなあ…」

「トールヴァルド様。どういたしましょうか?」

 モフリーナが、モニターを見て歩く俺に並び、訊ねてきた。

「どう…とは?」

 質問の意図が理解できない。

「醜悪な魔物としか思えない物は、最優先で排除いたしましょうか?」

 おっと、過激な発言だな。

「待て待て待て! 見た目で判断してはいけない。見た目が醜悪でも、すごく良い奴だって居るかもしれないだろ?」

「それはそうですが…あれは、きっと分り合う事は出来ないと思います」

 モフリーナが指さした先のモニターには…大きいハサミ状の両手を持ち、ふぉっふぉっふぉっふぉ…と変な声を発する、宇宙忍者言われた奴がいた…うん、俺もあれはダメな気がする…

「それでも、ちょっと待とう。まだこのゲームは始まったばかりだ。まずは、説明とチュートリアルだ。そこで篩に掛ける」

 俺は懐から、マイク状の呪法具を取り出した。

「それじゃそろそろ始めよう。希望と絶望の渦巻くこのダンジョン大陸で、彼等が生き残れるかどうか…」

 モニターをバックに、俺はモフリーナ、もふりん、サラ、リリアさんを振りかえって、開始を告げた。

「さあ! デス・ゲームの開催だ!」

 ふっ…決まったぜ。と、思ったら、全員のの視線がとても冷たい物になってました。

 何故だ!

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