第432話 あれは良い物だ…
昼過ぎには復活したサラとリリアさんと共に、モフリーナの待つ第9番ダンジョンへと蒸気自動車で向かった。
嫁~ずは、せめて第9番ダンジョンまでは一緒に行きたいと駄々をこねたが、あれやこれやとご機嫌を取ったり宥めすかしたりして、お留守番してもらう事に成功した。
リリアさんの、「世界の大事のために敵地へと向かう夫を、出発前に疲れさせて妻としてどうなのですか?」という一言が、もしかしたら嫁~ずにとって一番堪えたかもしれないが。
昼食後のティータイムは、嫁~ずが…特にミレーラが俺のそばから頑として動かなかったのには、ちょっとびっくりしたけど。
蒸気自動車を走らせ、俺の領地と元は父さんの領地の間に立ちはだかる山脈を貫通するトンネルを抜け、ダンジョンへと整備された街道を走る事40分少々。そんなに急ぐ事も無いのだが、思ったよりも早く午後4時ぐらいには到着した。
モフリーナの管理するこの塔型ダンジョンは、とてつもなく巨大化して、地上1階層だけでも塔の外周は3kmほどにもなる。
正面のダンジョンへの入り口は、冒険者が大勢出入りしているのだが、俺たちは見つからない様にこっそりとダンジョンの裏側、つまり入り口の真反対側へとダンジョンの外壁に沿って向かう。
裏側まで到着したら、通信の呪法具を起動してモフリーナを呼び出す。
『到着されましたか?』
『うん、お願い』
たったこれだけの短いやり取りだが、これで十分。
ダンジョンの壁の一部が何の前触れも無く消え去り、モフリーナがにっこりと笑顔で俺達を出迎えた。
「では、そのお車を中へ」
モフリーナに促されるまま、俺は車をダンジョンの中へと進めた…と言っていいのかは、甚だ疑問が残るところだろう。
なぜなら、ダンジョンの壁を超えた瞬間に、モフリーナによって最下層にあるダンジョンの管理室へと転移させられたのだから。
もちろん、最終的にはそうしてもらえる様に頼むつもりだった。
なにせ蒸気自動車は、一般人ではそうそう手が届かない程度には高価な品物であるし、それをダンジョンの外に置きっぱなしというのも色々と気になる。
かと言って、ダンジョンの中の通路に置きっぱなしというのも…冒険者たちに、ドロップアイテムだとか思われたらえらいこっちゃ!
持ち去られたりしたら、さすがに俺もちょっと凹む。
なので安全な場所で、帰って来るまでモフリーナに保管してもらおうと考えていたのだが、俺が言う前にちゃんと段取りしてくれるなんて…さすが、出来る巨乳ネコ耳娘は違うな。
などと、アホな事を考えていた俺だが、サラとリリアさんの視線がやたら冷たい事に気付いて、慌てて思考を切り替えた。
こいつら絶対に俺の考えを読んでた。だからこそのあの視線だろう…間違いない! 嫁達に報告されたら、命が危うい…。
「さて、トールヴァルド様。ご準備はよろしいでしょうか? サラ様とリリア様も、よろしい様でしたら、早速出発いたしますが?」
モフリーナの言葉に、無言で頷く俺達3人。
「では、移動いたします…行きます」
その瞬間、またあの何とも言えぬ浮遊感が俺を襲った。胃の中が引っくり返りそうだ…うっぷ…。
そう感じた時には、もう俺達の脚は地面に付いていた。
何て表現したらいいんだろう?
あると思って踏み出した、下りの階段の最後の一段が無くて、ガクッてなった感じって言えばわかるかな?
思わず膝から崩れ落ちそうになったよ。
後ろではサラが思いっきり尻もちついてたけど、俺もああなるところだった…危ない危ない!
ちなみに、サラとリリアさんはメイド服。ミニメイドとかじゃないぞ? ちゃんとしたロングスカートの型だよ?
ラノベだと、すぐにメイド服はミニだったりするけど、そんなキワモノじゃない、クラシックなヴィクトリアンメイド型の物だ。
よくイメージされる黒では無く、グレーがベース色だが、白いエプロンは誰もが想像する通り。
長袖のロングスカートのワンピースで、袖も襟のボタンもきちんと留めるのがデフォルト。
よくサラは腕まくりして、襟のボタンは外して着崩していたりするが、それはこいつがすぐだらけて仕事をさぼってるから、リラックスしやすい様にしてるだけで、普段はサラであってもきちんと着ているのだよ。
ちなみにスカートの下は我が家では各自の好きな様にさせている。
頭飾りも、ホワイトブリムでも好きなデザインのカチューシャでも可なのだ。
ってなわけで、すっ転んだサラの長いスカートがめくれ上がっているのだが…シルクの白のストッキングに白のショーツ、白のガーターベルトが丸見えです。
おお…あのセットは、是非とも嫁に履かせたい…あれは良い物だ。
『サラちゃんの心配はナッシングですか!?』
かぼちゃパンツ買ってやろうか?
『そんな色気の無い物は履きません!』
いや、お前にはそもそも色気が無いだろう…?
『うっきーーーーーーーーーーーーーーーーーー!』
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