第430話  とあるダンジョンの転移者名簿

「ああ…朝日が黄色く見える…」

 人っていうのは、極度の虚脱状態になると視認している世界から色味が抜けモノトーンっぽく見えるそうだ。

 最も眩しく輝く太陽は、そのモノトーンの世界の中では黄色味がかって見えるとか何とか…本当だった…

 嫁~ずの寝室強襲は仕方がないのだが、ドワーフメイド衆とサラとリリアさんの入室だけは断固拒否した。

 倫理的に問題ありまくりなだけじゃ無く、肉体的というかスタミナ的に絶対に無理! いや、スタミナがあっても、手は出しませんよ? 

 いくら合法ロリだろうと、嫁でも恋人でも無い女性とそんな事はしません!

『でも前世では月1のお愉しみとか言って、風俗通いをしてたじゃないですか』

 そ、それはそれだ! いいか、サラ。間違っても皆の前でそれを言うなよ!

『そりゃ、そんな事は言いませんが…その抵抗はいつまで続くんですかねえ』

 ……もちろん、ずっとだ。

『流れに身を任せた方が楽ですよ?』

 例え茨の道であろうとも、俺はその一線だけは守る!

『無理だと思いますけどねえ…だって大河さんって、押しに弱いですから』

 …俺の望む平穏な日常は、一体いつくるのだろう…


 領地に戻ってから数日は、こんな感じで色々と家の中でのバトルもしつつ過ごしたわけだ。

 バトルの結果は、侵略には抵抗できたが、内紛が勃発して俺の城は陥落したと言っておこう。

 意味がわかんないって? そこは想像力で補ってくれ。




 明日はいよいよXデー!

 輪廻転生局のシステムバグが引き起こした、大量転移者がやって来る日だ。

 日没と共に、色々と無理やりハッスルさせられ消耗してぐったりとしていた俺の夢枕に、局長が立ちやがった。

 嫁~ずの強襲によって、色々とヤバい状態のベッドで寝ていた俺の枕元にだ。

『君…色々とすごい状態だね…』

 開口一番、憐れみと蔑みを含んだこの言葉。

 俺だって、こんな状態で会いたくは無かったよ!

『まあ、君の趣味はこの際おいておくとして、いよいよこの地の明日の夜。現地時間では、時差の関係でちょうど半日遅れになるんで朝だけど、転移者を送り込みま~す!』

 あ、そうですか。

『感想、薄っすいなあ。もうちょっと、こう…何か無いの?』

 いや、だってその予定だったし。覚悟も準備も出来てるからね。

『まあ、君がそれで良いなら構わないけど…あ、取りあえず転移者の詳細を教えておこう。転移者は全部で約1万人。君と縁が深そうな地球人は…っと、7,000人だね。他は色々な星から来るよ』

 多いな、地球人。

『各人のプロフィールはサラの脳に焼き付けるとして、次元と時間を渡って来る転移者だから、肉体とか精神に幾分のチートが備わってる可能性は、無くはないんで注意してね』

 それは聞いてたけど…ユズキとユズカも転移者なのに、これといってチート無いのは何で?

『あの2人もチート持ってるでしょ? この世界で生まれてないのに、この世界の言葉を話せるし読み書きできてるじゃん』

 へっ? あ、そう言えば…この世界で生れたら、言語が違っても意思疎通が出来るんだっけ。

『そうそう! でもあの2人はこの世界生れじゃないでしょ? それって立派なチートだよ』

 なるほど、確かに…。でも異世界ファンタジーだったら、おまけで貰えるような能力だな。

『おまけって…。あれはあれで凄い能力だと思うけどね』

 そうなんだろうけけど、異世界転移物のラノベじゃ定番だからさ。

 それで、サラの脳に転移者のプロフィールを焼きつけるの? あいつの脳ミソ大丈夫だろうか?

『大丈夫だって! 君の世界だって、10万3000冊の魔道書を記憶してる女の子がいるじゃん』

 それはラノベやアニメの世界の話だ! 空想の作り話だよ!

『まあまあ。とにかくサラの脳は大丈夫。壊れたら修理したらいいし』

 あんたもリリアさんも、たいがい鬼畜やな…。

『それで、転移する者の中でも注意すべきは、全体の50%ほどだよ。直接戦っても、まあ君といい勝負ってとこかな』

 む? 五分五分なのか。それは嫌だな…

『君が恐れているのは、転移者の魔法かな? この星では、転移者は"君が考えている様な魔法"は、使えないから心配しなくても良いよ』

 そうなのか。ちょっと安心…出来ねーよ! 

 それじゃ、想定外のが使えるって事じゃねえかよ!

『ただの超能力や特殊能力があるぐらいだから。心配なら、何か創造したら? 今なら許可のバーゲンセールで何でも申請を通しちゃう気分だよ』

 う~~~む…それは、転移者の様子を確認してからだなぁ。

『まあ、長時間空を飛んだり出来るのはいないから、そう簡単にあの大陸から出れないんで時間はあるかな』

 そっか。だったら、当初の予定通り監視と誘導から入ろうかな。

『うんうん。取りあえず今から必要な事はサラの脳に焼き付けておくから、頑張ってね~』

 あいよ。


 うん、相変わらず何か大切な事を隠してる感じだよな。けど、なるようにしかならないか…。

 諦めにも似た覚悟を決めていた俺の耳に、静まり返った丑三つ時の屋敷の地下から、サラの絶叫が響き渡った。

『にぎゃーーーー!!! ま…た…かーーーー!! 管理…局長---!! いつ…か、こ…ろして…やるーーーー!!』

 うん、サラにそれは無理だと思うぞ。

『ふんぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!』

 壊れない様に、祈っててあげるよ。

 んじゃ、おやすみ。

『うごごごごごご…おえぇぇぇぇぇぇ!!』

 ね、眠れん…

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