第421話 憐れなドラゴン
「ミルシェさん、ドラゴンブレスが来ます! 大楯で防御!」
「はい!」
17歳の乙女が持つとは思えないほど巨大な盾を持ったミルシェが、メリルの指示に従って、ブレスに向かって猛突進。
「ミレーラさん、ミルシェさんと私達全員に、ディヴァイン・ヒーリング掛けれる様に準備を!」
「了解です!」
パーティー最後方で、全員に回復魔法を掛ける準備をするミレーラ。
「マチルダさん、データは?」
「はい、こちらに」
マチルダが解析したドラゴンの情報を見たメリルは、にんまり(仮面で見えないけど…きっと笑った)して、
「もうブレスが止まります…3…2…1、今です!イネスさん、お好きに突撃! ただし、喉を狙ってください」
「おお! 待ってました! いっくぞーー!」
イネスが、ドワーフとエルフの職人さん達謹製の、巨大なバスターソードに魔力を纏わせ、真っ赤に燃え上がった剣を携え突進!
「ミルシェさん、右に移動してスーパー・クレイモア!」
「はい! いきま~す~!」
ドラゴンブレスを防ぎ切った大楯を持ったまま、ドラゴンの向かって右側面に走りだしたミルシェ。
「マチルダさん、ミレーラさん、私は左に向かいます! 後ろをついて来て下さい!」
「了解!」「わかりました!」
メリルが、マチルダとミレーラを従えて、ドラゴンの左側へと走りだす。
そして…
「スーパー・クレイモア、一斉射!」「ノーブル・スピアー発射!」
ミルシェとメリルの必殺の遠距離攻撃が左右からドラゴンに炸裂!
身を捩り苦しむドラゴンに向かって、イネスが飛び込む。その両手で握ったバスターソードは、すでに限界まで炎を蓄え、
「と…ど…め…だーーー! クリムゾン・ストライク!!」
ドラゴンの首に振り下ろした。
憐れドラゴンは、その巨大な首がズルッとずれて、血をまき散らしながら地面に堕ちた。
メリルの指揮ももちろんだが、見事に各自が装備を使いこなしている。
俺の嫁達…いや、ジェムファイターって、ちょっと凄すぎんか?
「皆さん、お疲れさまでした~!」
メリルの締めの言葉に、
「「「「お疲れさまでした~!」」」」
どこぞの体育会系の部活の練習終わりみたいなノリの返事をする嫁~ず。
ふと後ろを振り返ると、やはりユズキとユズカがドラゴンを圧倒していた。
朱金に輝く鎧を纏いランスを持った戦乙女…乙女? 戦新妻が、深紅の闘士と共にドラゴンに突進を繰り返していた。
ブレンダーはそのサポートにまわり、クイーンはお馴染の目とお尻の穴への攻撃を兵隊蜂達に命じて突貫させている。
いやもう…これってドラゴン虐めじゃね?
お尻を庇おうとすれば目を狙われ、手で目を守ろうとすれば、でっかい的であるボディーにユズカのランス突撃が襲いかかり、腹を庇うため身を縮こませるとユズキの正拳ラッシュが顔面に。
文字通りにタコ殴り。見ててドラゴンが憐れに思えてくるよ…。
まだ嫁~ずは戦いになってたけど、こっちは動物愛護協会からクレーム来そうな戦いだな。
やがて、ドラゴンが最後の抵抗を試み、ブレスを吐こうとした瞬間、その大きく開けた口中にユズカのランスが突き刺さる…訂正、突き破り、戦いは終わった。
ユズユズはハイタッチして喜んでるけど、ナニコレ? 最強の生物ドラゴンを圧倒する、我が家の面々って…
「ごめんな、もふりん…ドラゴン2体も倒しちゃって」
俺の横で、ほけ~っと口を開けて戦いを見ていたもふりんに、心から謝罪する。
「だ、だいじょうぶでち! このせんとうけいけんは、ふっかつじにはんえいちゃれまちゅかりゃ。さらにつよいどらごんになりまちゅから」
まさか、俺の嫁達と使用人&ペットにドラゴン2体が圧倒されるとは思わなかったのだろうな。汗をだらだら流しながら、我が家の面子を見るもふりん…きっと怖かったんだろうな…安心して欲しい、俺もだから。
素晴らしい笑顔で戻って来た嫁~ず曰く、
「思ったよりも歯ごたえ無かったですわ」
「ブレスの威力が、もうちょっと強い方が」
「皆さん…ほとんど怪我しませんでした…」
「動きがパターン化されて過ぎている気がします」
「脆弱だ! もっと強い相手を求む!」
と言った、脳筋発言をした。どれが誰の発言かは分かってもらえると思う。
「私にかかれば、ざっとこんなもんよ! 奥の手を出すまでもなかったわね!」
「柚夏は前に出過ぎだよ…もうちょっと間をとってくれなきゃ」
「いやん…怒らないで~あ・な・た♡」
「馬鹿だなあ~怒る訳ないじゃないか~柚夏が怪我しないか心配なだけだよ~」
ユズユズ夫婦は、どこでもいちゃいちゃ。
ちょっと場を弁えて欲しい所だ。
「わうわう!」
「……」『……』
めっちゃ褒めて欲しそうな、マイペースなブレンダーとクイーン&蜂達。
ああ、我が家は平和だなあ…明日も晴れるかなあ…
「げんじつとうひちてないで、さっさとこのすいしょうにえねるぎーちゅうにゅうしちてくだちゃい!」
暇を持て余す我が家のメンバーの、気分転換というか気晴らしというか息抜きというか、とにかくレクリエーションで倒されたドラゴン復活のためのエネルギーを、もふりんに言われるがまま、差し出された水晶に補填する俺であった。
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