新大陸でも大騒動
第397話 新大陸つくるどー!
「では、このポイントに決定しますか?」
眼下に広がる大海原と、ホワイト・オルター号のマップをもう一度見直した俺は、無言で頷いた。
「ここが一番理想的なポイントだな…」
単に、俺達の住む大陸から完全に真裏にあたる場所ってだけだが。
「では、惑星改造ミッション開始いたします。【惑星改造わくわく君】投下!」
「投下します!」
滅茶苦茶にいい加減なネーミングだが、賞状を入れる筒ぐらいの棒状のわくわく君を、サラのGOに合わせてリリアさんがホワイト・オルター号の窓から投下。
投下されたわくわく君は、なぜか物悲しい『ひゅるるるるう~~~~』という音を立てながら落下し、『ぽちゃん』っと何とも情けない音を立てて海中へと消えて行った。
わくわく君の動きは、全てサラがモニター出来るという。
さすがは、謎の管理局仕様の現地活動用サイバネティックス・ボディの性能と言っておこう。
リリアさんはサラと脳波で繋がっていて、周辺の海流なども考慮しつつ、わくわく君を指定のポイントへと誘導中。
海中へと投下してからどれぐらい経っただろう? 多分、体感的には30分ってとこかな。
「海底に到着しましたのでドリル展開を開始…無事に海底掘削を開始しました。ここからは掘削完了までは内蔵AIがオートメーションで行います。掘削完了までおよそ3時間強ぐらいですね…」
海流に流されたり海中の大型生物に邪魔され無いように、サラの脳波モニターからの情報をチェックしつつわくわく君を誘導するのは、かなり脳に負担があったのか、ちょっとリリアさんはお疲れ気味だ。
「皆さん、お疲れさまでした。お茶の準備が出来てますよ」
そんな俺達に声を掛けたのは、俺の嫁~ず序列第2位のミルシェ。
ドワーフメイドさん作のピンク色でフリフリがいっぱい付いたエプロンで、にっこり笑顔の俺の新妻です。
「ありがとう、ミルシェ。では、掘削が完了するまで休憩しよう」
そう言うと、サラとリリアさんは、ふうとため息をついた。
あのネス湖の湖畔のチャペルでの結婚式から、もうすぐ1ヶ月。
管理局長の告げた期限まで残す所、20日ちょっと。
俺は嫁~ずとサラとリリアさん、ユズユズとその他大勢を伴って、大量の転移者を受け入れる為の新大陸創りに、この360度水平線という惑星の裏側の海のど真ん中までやって来ていた。
あの大騒動の結婚式の後、バカンスと称して誰も居ない海に出た俺と嫁~ずなのだが、今後の事を考えてこの『世界の危機パートⅡ』という形で話をしたのだった。
とは言え、俺の抱えている秘密を完全にばらしたってわけじゃ無い。
色々と設定を考えて、それっぽく説明をしたのだ。
この世界に、神々の世界から少々大きな力を持った眷属達が大量にやって来る。
それ等を受け入れる為に、神々より大陸を創れと言われた。
ネスの御遣いであるサラとリリアさんと共に、それらを行う。
やってくる者達は、強大な力を有している可能性があり、もしかすると俺達の住む大陸を襲撃してくるかもしれない。
なので、大陸創造と同時に、その者達が俺達の元に来ない工夫が必要である。
またネス様より色々と啓示も受けているので、それを実行するためにも協力して欲しい…などなど、輪廻転生システムと管理局、そしてシステムのバグには一切触れずに、何とか色々とこじつけて説明をしたのだが、これ等の話に関して、嫁~ずは…
「私達はトール様に付いていくだけです。色んな意味で!」
付いていくというのは、考え等を追従するって意味じゃ無く、本当に物理的に付いて来る気だってのは分かってたよ。
何かする時には、必ず連れて行けと言われてたし、だからこそ世界の危機…になるのかどうかわかんないけど、秘密も一部打ち明けたのだし、だからこそ今ここに全員揃ってるんだし。
本当は危険が全くない訳も無い、誰も来た事が無い惑星の裏側までの飛行。
来てほしくは無かったが、もちろん俺の抵抗なんて物が無駄にすぎない事は、本人が良く分かっている。
言いだしたら絶対に退かない結構頑固なメリルを始め、我が家の嫁~ずは精神的にも物理的にも強いからなあ…。
とにかく、俺達は新大陸創造への第一歩を踏み出したのであった。
そうした多くの話合いにより、夫婦間の信頼関係は、より一層の事、深く固く結ばれる事となったのだ。
『なるほど…それで肉体的にも硬くなった大河さんと、深く結ばれたのですね』
サラ、やめなさいって!
『ねぇねぇ、プロテクトを解除してくれる様に、局長に行ってくださいよ~!』
やだよ! いい加減に諦めろって。
『だって、新婚旅行中の出来事を覗き見したいじゃないですか~! 特に全員との初夜のシーンとか! 永久保存版ですよ! 是非ともエンドレスリピートで観賞を!』
ふっ…念入りに局長に頼みこんだからな。お前らには絶対に見せんぞ! そこだけは絶対に開示しない様に頼みこんだからな。
『ちくそー! いつの間にそんなやり取りを…』
ん? ちょっと頼みたい事があるんですけど~って考えながら寝たら、夢に出て来てくれるけど?
『まさか直接通信可能なんですか!? もしや…大河さんの頭の中にも、いつの間にやら超小型ポジトロン電子頭脳がリリアの手で埋め込まれたんじゃ…』
リリアーーーー! まさか、やってないよなーーーー!?
『お呼びでしょうか? その件につきましては、全くもって身にも記憶にも覚えがございません。まさかその様に思われているとは…このリリア、とても遺憾に思います。思えば私の普段の言動が、今回のような思い違いを貴方様にさせてしまったのでしょう。私の不徳の致すところであり、慙愧に堪えません』
どこの政治家の謝罪会見だよ…滅茶苦茶あやしいぞ!
本当に大丈夫なんだろうな?
『それは、ひみつ。ひみつ、ひみつ。ひみつのリリアちゃん♪』
信用できるかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
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