第375話  到着~♪

「アルテアンよ、私は帰ってきた!!」

 コックピットで仁王立ちし、眼下の父さんの村を眺めながら、ちょっとだけ気持ちよくなっていた。

「トール様、いきなり叫んだりして、どうされたんですか?」

 メリルがもの凄く可愛そうな子を見る様な目で、俺を見ていた。

 メリルの背後に並ぶ嫁~ずも、非常に残念な人を見る目をしていた。

 だが、俺は気にならないのだ! アナ〇ル・ガトーごっこは、恥ずかしがったら負けなのだ!

 アニメでは最後には負けるんだけど…

「いや~年末に出発してから、もの凄くバタバタしたから、なんだか懐かしくなっちゃって」

 苦しい言い訳だったが、

「確かに、言われてみればそう感じますね。アルテアンに居るのが当たり前になったんですね…私達」

 メリルも感慨深そうに眼下を見ながらそう言った。

「私は子供の頃から住んでるので、故郷ですけどね~」

 ミルシェは当然だな。

「わ、私も…第二の故郷だと思ってます」

 ミレーラは恥ずかしそうに、ちょっと上目遣いで、

「ここは私の終の棲家なんだから、愛着もありますよ」

 イネスは、やっぱりどことなく漢前に、

「この領の裏も表も知り尽くしてますからねえ…私は」

 うん…マチルダは金の流れも全て知ってるもんな…でも、悪の黒幕みたいになってないか?

 でも皆がこのアルテアンを好きになってくれて、嬉しいのは確かだ。

 何たって、もう皆の名前はアルテアンなんだから。

 

 第一夫人 メリル・デ・アルテアン

 第二夫人 ミルシェ・デ・アルテアン

 第三夫人 ミレーラ・デ・アルテアン

 第四夫人 マチルダ・デ・アルテアン

 第五夫人 イネス・デ・アルテアン


 実はこの世界、結婚しても姓を夫の姓に変える必要はないらしい。

 正確には、法的に夫婦別姓も認められている。

 これは身分制度の弊害でもあるのかもしれないのだが、姓を持つ身分の高い女性を、姓を持たない平民が嫁に迎えると、姓が無くなってしまう。

 もちろんその逆もある訳だし、他国では洗礼名とかも有るらしい。

 貴族名でよく目にする、姓名の間の前置詞(デ、フォン、オ、ダ etc)やミドルネームなどが変わる事を嫌う人など、名前を変えたくない人が多いために夫婦別姓が認められているって事らしい。 

 だが、我が嫁~ずは、全員が俺の姓を名乗る事にしたそうだ。

 これは母さんの薫陶によるものなのかどうかは定かでは無いが、アルテアン家の団結力を周知するためだとか何とか言ってた。

 俺的には、メリルなんて王族なんだから名前は残した方が良いんじゃないかと言ったんだが、

「私だけ除け者ですか!?」

 と、半泣きで言われてしまった。

 もちろん必死に宥めて、是非ともアルテアンを名乗ってくださいと、こちらからお願いするはめになった。

 

 理由はともかく、これで名実ともに立派なアルテアン家の一員となったわけです。


「さあ、それでは皆さん着陸しますよ~! アナウンスがあるまで着席してベルトをしてくださいね~」

 俺がそう呼びかけると、慣れた手つきで着席するアルテアン家一同と、御親族の皆様。

 すでに乗船経験があるだけに、手慣れたものですな。

「それでは、アルテアン侯爵邸前に着陸しまーす。準備はいいですか~?」

『おっけ~で~す!』

 揃った声の返答を聞きながら、俺はホワイト・オルター号を減速した。


『大河機長、大河機長! 逆噴射ですか!?』『キャプテン、やめてください!』

 お前ら…何を縁起でない事を…しかも、滅茶苦茶古い事件を…

『機長! 真っ先に逃げ出すんですか!』『職責を放棄するんですか!』

 いい加減にしろー! 着陸に集中させろ!

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