第309話 黒パン推し
ちょっと遅めの朝食を終えた、我が家の面々にこの後の予定をちょっとだけ伝えようかな。
「え~もうすぐアーテリオス神国に到着します。神国ではべダム首長との会談の間しか滞在しませんので、皆には船内で待っててもらおうかと思います。夕刻までには会談は終わると思います。一応、護衛として、父さんとナディアには同行してもらうつもりです。あと、あの不思議ちゃ…じゃなかった…ポリンさんは、教会からお迎えが来ると思います。カパス老には、戻った際に俺から説明しますので、彼女が泣こうが叫ぼうが喚こうが、きっちりと引き渡してください。連絡事項は以上です。何か質問のある人~」
誰も挙手しなかったので、これにて定時連絡(?)終了。
さて、操縦席からは何となく見たことある風景が広がり始めた。
操縦席にある世界地図(航行した場所しか分からないけど…)を見ると、神国まであと2百Kmちょっと。このままゆっくりと進んでも、お昼ご飯食べてお茶を愉しんだ後ぐらいに到着だな。
おっと、電波不思議少女ポリンちゃんにも朝食を運んでもらわなきゃな。
え~っと、サラ。分ってるよな?
『はいはい、電波を受信しましたよ~』
お前の場合は、電波受信というより…盗聴だと思うのは、俺の勘違いなのだろうか…
『歯が折れるぐらいクソ硬っいパンと、具の無いスープでも持って行きますかね』
どこのラノベの異世界だよ…この世界のパンも固いけど、ドイツの黒パンとそう変わらないはずだぞ?
まあ、黒パンも焼いてから1月ほどおくと、斧で叩き切る程に硬くなるけど…ありゃ保存食だからな?
この船にはそんな物は乗せてないぞ。普通の出してやれ、普通の! あとちゃんと具入りのスープもな。
『そんな、冗談に真面目にコメントしなくても…』
…何かと異世界物って言えば登場する硬いパンは、マジで一言物申したいんだよ。
ハイジ世代だと、特に皆が感じてる事なんだよ!
『そう言えば、ずっと前にもそんな事言ってましたね』
ああ。黒パンってのはライ麦パンの事だが、薪代節約の為に一度に大量に焼いて保存したから硬くなるのであって、焼き立ては決して硬くないんだ。発酵にイースト菌使うパンと違って、サワー種っていうパン種を使うから、ちょっとクセのある酸味だけど、全粒粉だから栄養価も高くて、腹もちも良い優秀な食品なんだ。
そこを俺は分かって欲しいんだよーーーーー!
『変なスイッチ入っちゃいましたね…まあ、熱い黒パン推し野郎の弁はさておき、取りあえずご飯持って行きます』
ドイツではライ麦パンには厳格な基準があってだな、ライ麦の含有量によって名前が違うんだよ! 俺のお薦めは薄く切ったライ麦パンに、ラードを薄く塗った上にコーンビーフを乗せて、軽く炙ったものが…おい、サラ聞いてるか?
おーーい! サラーー! 返事しろーー!
『『『『マスター、長いです。あと、少し鬱陶しいです』』』』
…………ごめんなさい。
昼食をのんびりと食べて、ティータイムを愉しんでリラックスしていた所、やっと神国に到着した。
神国のいつもの着陸ポイントである、お城の裏手の広場の上空に到達したら、いつもの着陸シークエンス。
ゆっくりと高度を下げて、着陸脚を伸ばし、大勢の人々が待つ広場の真ん中にゆっくりと着地した。
事前に到着予想時刻を伝えていたので、多くの人が出迎えに来てくれていた。
もちろんべダム首長もその中に居る。
え~っと…太陽神の教会関係者は…ちゃんと来てるな。
よし、それでは、アーデ、アーム、アーフェン。不思議ちゃんを連行…じゃない、連れて来てくれるかな。
逃げ出せない様に、しっかり結界で囲んでね。
『『『は~い、了解しました、マスター!』』』
あの娘には悪いけど、ここでお別れだな~。いや~なんか、ほっとした。
シールドを解除してタラップを降ろすと、出迎えの方々がゆっくりと近づいてきた。
今後の移住計画や不思議ちゃんに関して、さっさとお話をしてとんぼ返りしなきゃね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます