第301話  コネって大事

 うん、大まかな方針は決まったし、あの不思議ちゃんの様子でも見に行くとするか。

『大河さん、弱った少女の心の隙間に付け込もうと考えてるんですか?』

『マスター…軽蔑します』

 違うわ! さすがに初心者にはママンの説教はきついだろうと思ってな。

 本当に様子を見るだけだよ。

 それに、このままだとママンと一夜をともにすることになるんだが…そうなると、あの娘のメンタル、回復不可能なほどのダメージ受けるど?

『むむむ…いくら密航者とはいえ、それは可哀想な気がしますね』

 だろ?

『マスター、どうなさるおつもりですか? 変に情けをかけると、懐かれてしまうと愚考します』

 懐くとか、捨て犬みたいだな。まあ、宿泊用の部屋をあてがうだけだよ。

 部屋はいっぱいあるからな…だが、俺だけが行くのも問題あるって事か。

 んじゃ、サラ。後で様子見ついでに、てきとうに部屋に案内しといて。一番小さい部屋でいいから。

『あいあい さー!』

 後、飯はユズカに言って部屋に運ばせて。

『ルームサービスですか?』

 いや、食堂に来させる気か? あの不思議空間に巻き込まれるぞ?

『それは嫌ですねえ~。部屋に持っていかせます』

 うんうん、軟禁状態にしとくのが、あの子と俺たちの精神の安寧の為に一番良いと思うぞ。

『『ですねよね~』』

 そういえば、アーデもアームもアーフェンもえらく静かだな…

『マスター、この子達…寝てます』

 お前ら、自由だな! 別にいいけど、いいんだけど…もちっとこの問題解決のために、アイデア出すとか協力しようとかないわけ?

『『『すぴ~…すぴ~…すぴ~』』』

 気持ちよさそうに寝てるな。こ3人も、ある意味不思議ちゃんだからなあ…

 よし、そんじゃサラ、ナディア、今後の方針はさっきの決定の通りに。

 後はべダムさんとの話し合い次第だな。あの人が俺のお願いを断るとも思えないから大丈夫でしょう。

 持つべきは、誠実でこっちの言う事をよく聞いてくれる、絶大な権力を持つお友達だよね。 

『確かに、グーダイド王家とべダム首長のコネは、かなり強力ですね』『マスターのコネは最強』

 うむ、コネは使ってなんぼだ! かじれる脛はかじってなんぼだ! サラは売りに出したらなんぼだ!?

『ひっど!』

 ま、値が付かないけどな…

『え、もしや私の価値ってプライスレス?』

 知ってるか? 不用品はお金を払ってリサイクルセンターに引き取ってもらうんだぞ。

『それが?』

 サラも誰か引き取ってくれんだろうか…今なら幾らか持参金もつけるが…

『サラちゃんは引く手あまたですよ!? 持参金なんて付けたら、戦争が起こります!』

 返品不可って契約結ばないとな。

『……90日間、返品保障でお願いします…不安になってきた』

 ダメだ! 絶対に受け付けない! 返品するぐらいなら、どっかの娼館にでも売りつけてもらおう!

『…サラちゃんは、娼婦として行きずりの男達に汚されてしまうのですね…』 

 お前を買ってくれる特殊な性癖の方がいらっしゃればね。

『ヘタレでシスコンなDT野郎がきっと買ってくれるはずです!』

 俺は買わねーよ!

『え? 大河さんが、ヘタレでシスコンなDT野郎なんですか?』

『マスター、自爆です』

 ………。


 もういいから、さっさとサラはあの不思議ちゃんの世話に行けー!

 ナディアは、アーデ、アーム、アーフェンを起こして、ベッドに放り込んで来い!

 俺は、母さんや婚約者~ずに、今後の方針を説明をしに行くからな!

 後のことは任せたぞ!

『『りょう~かい!』』

 はあ、疲れる…


 どうやら不思議ちゃんは、ものすごく寝相が悪かったらしい。

 サラ曰く、何故かまっ裸であられもない寝姿を晒していたそうだ。

 母さん達が説教の時に脱がしたわけでなく、どうやら寝ながら自分で脱いだ様で、右足のソックスだけ履いてたとか。

 うん、俺が様子を見に行かなくて良かった…もし行ってたら、今頃俺の命は風前の灯火だっただろう。

 しっかし、あの不思議ちゃん…よくそんな大胆にリラックスして寝れるなあ。感心するよ。

 天鬼族3人娘に、交代で部屋の前で見張りを言いつけ、起きたら呼ぶように頼んでおいた。

 もち、ちゃんと服を着せてから呼びに来るように強く念押しした。

 その際、『フリですか? フリですよね? ラッキースケベを装うんですね? 了解しました!』などと、ものすごくいい笑顔で言われたが、絶対に違うからと再度念押しする羽目になった。

 みんなして何に毒されたんだろう…まさか、俺なのか?

 とにかく、危険回避のためにも、あいつらが呼びに来たら、まずは女性陣に行ってもらおう。

 男女比率がここまで違うと、マジで色々と気を使うんだよなあ。本当、苦労するよ。

 

 しかし、昼頃に出発してまだ半日しか経っていないとは思えない程に、濃い時間を過ごした気がする。

 何か他にする事があった様な気もするが、もう今は何もする気が起きない。

 だけど忘れるわけにはいかない。べダムさんに先に一言お願いしておかねば。


 気が付けばホワイト・オルター号は、この地に来た時と同じ様に山脈沿いを飛行し、山脈を越えるポイントまで差し掛かっていた。

 太陽は、遥か遠い反対側の山脈の、さらにその向こうへと隠れようとしていた。

 俺の腹時計からすると、晩飯1時間前ってとこか。

 明日の昼過ぎには到着するはずだから、ちゃんとべダムさんだけでなく、我が家の面々ともしっかりと打ち合わせしとかなきゃな。

 

 ちゃちゃっとお話して、飯食ったら、もう今夜はさっさと寝るぞ。

 何時の世も、戦よりも事後処理の方が大変なんだなあ…

 

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