第271話  神様集合!

 ホワイト・オルター号の上部に取り付けられた立体映像投影装置から、聖なる女神ネス様が登場。

 皆には、突然空に美しい女神が現れた様に見えた事だろう。


 俺はすかさず民に背を向け、ネスに跪く。

 我が家の面々も、俺に続き膝まづいた。

「聖なる女神ネス様。此度は、私の無理な願いに応えて頂き、恐悦至極にございます」

『良い、トールヴァルドよ。此度の恐怖の大王討伐、ご苦労であった。皆も良くトールヴァルドを支え戦った。其の方らの協力なくしてこの偉業成らなかったであろう。心より感謝する』

「勿体ないお言葉です、ネス様」

 平伏する振りをして、そっと後ろを覗くと…皆、唖然としていた。

 畳みかけるならば今だな。

「ネス様、畏れ乍ら申し上げたき儀がございます」

『ふむ。我が使徒トールヴァルドの言葉とあらば、聞かぬわけにもいくまい』

「有難うございます。実は、私の後ろに控える人々は、恐怖の大王と戦ったこの地の民。幾度もの戦禍により、地下で暮らすを余儀なくされた、不幸な人々です。この先、ゆるりと滅びへと向かっているという話を先ほど耳にし、このトールヴァルド、何とか力になりたいと考えておりますれば、如何様にすれば良いか、知恵をお借りできればと」

 神様の助言って形をとれば、まあ民衆も納得するだろう。


『なるほど…あい分かった。我は水と生命の神、ネス。其の方らの信奉する神は?』

 ネスが人々へと話しかける。

「お…畏れ乍ら…我々は、月神様を信奉しておりまする」

 やっぱ代表者なんだな。カパスさんが小さいながらも張りのある声で答えた。

『そうか…では、我が名に於いて徴する、太陽神、月神よここへ』

 その声と同時に、ホワイト・オルター号の船体前部がゆっくり開き、巨大なフィギュアが2体姿を現した。

 お馴染のうさ耳ロリ巫女太陽神と、初登場のきつね耳ロリ巫女月神だ!

 太陽神が緋袴だが、月神は紫袴。太陽神がニコニコ顔付き太陽のぬいぐるみを持っているのに対して、安らかな寝顔の月のぬいぐるみと、幾らかの違いはあれど似た様な姿。

『女神ネス様の招聘により、この太陽神まかり越しましてございます』

 うさ耳が言うと、きつね見もそれに続く。

『女神ネス様の招聘により、この月神まかり越しましてございます』

 カパスさんを始め、この地に住む民は顎が外れてんじゃね? ってぐらいに大口を開けて、ぽかーんとしてた。


『太陽神、月神。この地の民は、度重なる戦禍により、貧窮に喘いでおると言う。如何したものか?』

『ネス様、この地では私の加護以外の理由で地が荒れておりまする。太陽神としては、何もする事が出来ませぬ』

『では、我、ネスが雨を降らせればこの地は富むか?』

『それでは足りませぬ。この地の土はすでに死んでおりまする』

 ちょっとうさ耳が困った顔をしている(様に見えるだけ)。

『では、月神はどうか?』

『ネス様、我が月神の加護をもってしてもこの地は蘇りませぬ』

『この地の民は、其方を信仰しているというが?』

『はい。その信仰心は篤く、私にも届いておりますれば、力になってやりたいとは思うのですが、この地では…』

 やっぱきつね耳も困った顔をした(様に見えるだけ)。

『そうか、この地では然もありなん。恐怖の大王が根を張ろうとしていた土地故、すでに死した地となっていたのであろう』

『『では、如何様に?』』

 ネスの言葉に、声を重ねて太陽神と月神が問う。


『うむ、それはのぉ…トールヴァルド、そなたに民を任せたい。この地から民を富める地へと導いてはくれぬか。人の世の政に神が手を出す事は出来ぬ。我が使徒たるお主にしか頼めぬ事。力を貸してはくれまいか?』

 そのネスの言葉と同時に、背後で黙って神々のやり取りを聞いていた人々が、一斉に俺を見た。

『トールヴァルドよ、我が加護を与えたもうた子等を助けてはくれぬか?』

『太陽神も願う。トールヴァルドよ、力を貸してはくれぬか?』 

 神様も、そして俺の家族も、この場の全ての人の目が俺に向いた。

 これで信用ばっちり、今ならどんな詐欺でも出来ちゃうぞ!


「お任せください、ネス様、太陽神様、月神様。このトールヴァルド、持てる力の限りを尽くしましょう」


 ふっ。これで洗脳…もとい、人心掌握は完璧だろう。

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