第262話 転送
夕飯は極々簡単な物で済ませて、全員が風呂でさっぱりした後、それぞれの船室に戻って休む事になった。
もちろん、俺の部屋のカギはがっちりと掛けておいたぞ。
さてさて、では戦闘の後始末をしましょうかね。
え~っと、ナディアとサラは、ちょっと来てくれ。
部屋のノックは、3回、2回、3回で。
『はい…マスター、そのノックは何ですか?』
『大河さん、もしかして秘密の合図ですか?』
そうそう、ノックの仕方で誰かわかるでしょ?
『マスター…部屋の前で普通に念話すればいいだけでは?』
『大河さんは、そういう所で変なこだわり持ってたりしますからねえ』
………。
『なるほど、マスターのこだわりですか。承服いたしました。今後は、3、2、3のノックを心がけます』
いや、別に普通で良いかな…
『ナディア。大河さん、自分で言ってて恥ずかしくなったみたいですよ。なにせ元は中二病持ちの中年ですから』
『そうなんですか、マスター!?』
ごめん…ほんと、もういじめないで…俺が悪かったから…(涙)
ナディアとサラを部屋に招き入れたら(婚約者~ずには内緒)、作業開始です。
まず、全員から回収した『全部すいと~る君』をパカッと開けて、中から『物質吸収ボール』と『エネルギー吸収ボール』を取り出します。
何が起こるか分からないんで、ナディアはこの部屋にシールド張っといて。
『了解しました、マスター』
さて、取り出しましたこのボールは、大きさこそピンポン玉程度しかありませんが、大陸すら飲みこめるほどの収納力を持っています。
この取り出した4個の『物質吸収ボール』を…
『お! 大河さん、いよいよ封印ですね』
そう、いよいよ封印だ!
ここに取り出しましたる、この『天地創造球』に『物質吸収ボール』を吸収させます。
こいつは、昔サラから聞いた話を元に創り出した物だ。
輪廻転生管理局のサラの机の上には、通販で購入したコスモボールという、極小の宇宙が封印されたクリスタルボールが飾ってあるという。
さすがに俺ではいまだに解明されていない宇宙の成り立ちまで想像できないので、創造が出来ない。
ビッグバンのイメージは何となくわかるけど、創造しようとしたら中途半端なイメージだったので、管理局の許可が下りなかった。
そこで、太陽系によく似た宇宙をクリスタルボールの中に再現したのだ。
生命体は…電子顕微鏡でも見えないかもしれないけど、この中の地球に同サイズのミドリムシを大量に同封してある。
何十億年か上手く進化したら人間になるかも…
ま、カズムもこの中に吸収されるわけだから、生命に必要なアミノ酸やら何らやは満たされると思っておこう。
『天地創造球』に『物質吸収ボール』を近づけると、すっと吸収されます。
全部のボールを吸収させ終わったら、『天地創造球』を…っと。
『ここでいよいよ私の出番ですね!』
張り切ってるなあ…サラ。
『ええ、そりゃそうでしょう! 何せ大河さんとナディアのせいで、私は出来ない娘扱いです! ここで少しは良い所を見せないと、このままダメダメドジっ娘属性が固定されますから!』
え~~~~~~~~っと。
『すでに手遅れかと思いますけどね…』
だよね~、ナディア。
『さ~~! 張り切ってまいりましょう!』
うん、もういいや…やる気になったサラに任せよう。
とはいっても、管理局に連絡して回収してもらうだけなんだけど…。
『輪廻転生管理局へアクセス…開始。アクセスコード…1192KBK職員名SARA。…アクセス確認。局長へ輪廻転生システム極地実験星より管理局への転送要請。…申請許可確認。転送座標および時刻を指定…完了』
おう…何やらすごい事になってるな。
ってか、アクセスコード憶えちまったぞ? いいくにつくろうかまくらばくふ じゃねーか、それ?
『大河さん、60秒後に私の右手の上から転送しますので、それを貸してください』
ほれ、どうぞ。
サラが『天地創造球』を右手に持ち、軽く目の前まで持ち上げると、時間が来たのだろう、何の前触れもなく『天地創造球』が消えた。
『これで転送完了です。後は事前に管理局と打ち合わせしたように、アレをどこか遠くのブラックホールにでも管理局が放り込んでくれます。これでカズムの封印は完了ですね』
『もしかして、サラってやれば出来る子なんでしょうか?』
それはどうかな、ナディア。
ただの猫かぶりなだけの気がするのだが。
『本当に2人共、失礼ですね! 能ある鷹は爪を隠す、と言うでしょ! それが私なのですよ!』
…空き樽は音が高い。
『…浅瀬に仇波』
『何です、2人共…それ、意味不明なんですけど?』
こう言えばいいか? 能無し犬の高吠え。
『こう言えば理解できますか? 能無しの口たたき』
『うっきーーーーーー!! 馬鹿にされてる事だけは、よ~~~くわかりました!』
おう、これが分かれば大したもんだ。現国で5取れるぞ! 10段階評価の(笑)
『うぐぐぐぐぐぐぐ…大河さん、ナディア…この恨みはらさでおくべきか!』
魔太○かよ…
そう言い残すと、サラはバーーーン! と、扉をぶち破る勢いで開け放ち、飛行船の廊下で叫んだ。
「トールヴァルド様におかされる~~~~~!」
あ、あいつ、やりやがった!
「ナディアさんも、連れ込まれてます~~~~!」
何てことを! こんな事を大声で言ったりしたら…
バッバッバッバッバーーーン!
飛行船内に響き渡る、荒々しい扉の音…
『トーーーール様!! 何をしてんですかーーーー!!』
カズムより難敵が押し寄せてくる…俺、今夜死ぬかも…
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