第239話 俺なりの幸福論
翌朝、大勢の人達に見送られ、俺達はアーテリオス神国から俺達は旅立つ事になった。
民衆の前で、神具持ちは全員変身してみせた。
なぜかユズキは半人半天馬型になってたけど…それ、気に入ったのか? ネタ変形だったんだけど…
何でこんな事をしたかというと、べダム首長が、「私も共にこの世界と太陽神様のために戦わせてくれ」、「せめて聖騎士を連れて行ってくれ」と、かなりしつこかったから。
なので、見送りの人達へのサービスも兼ねて、ネスとうさ耳ロリ太陽神の大空の競演をしてみた。
『我ネスの使徒、トールヴァルドよ。此度の戦いは、この世界の存続を掛けた、聖なる戦いである。人々の安寧の為、我の与えた神具の力を存分に使うが良い。アーテリオスの民よ、トールヴァルドのために祈るが良い。さすれば彼の者の力となろう』
『ネス様の使徒、トールヴァルドよ。我、太陽神の加護を授けましょう。どうかこの世界を救ってください。この太陽神とアーテリオスの民がきっと力になりましょう』
ってな事を言わせて、2柱の映像をピカーって光らせてみました。
あ、見送りの人達、めっちゃ拝んでる。涙流して平伏してる人までいるよ。
うん、毎度毎度の事だけど、お年寄りが映像見て涙ながして感動してるのを見ると、ちょっと心が痛む。
ごめんね、おばあちゃん…その映像と言葉は、全部俺が創ったの…
変身とこの演出で、べダムさんも納得してくれたみたい。
まあ神具無くして無双出来るのは、今まで見た中で父さんしか居ないからな。
今回は諦めてもらおう。
ってな事をした後、文字通り飛び立った。
今までアーテリオス神国の国内の様子に関しては、全く知らなかったけど、なかなかの穀倉地帯が広がっていて、とても豊かだ。
クソみたいな宗主や司祭とかのせいで、多くの人が苦しんだり、道を違えてしまっていたが、あの戦争のおかげで膿が綺麗さっぱり消えてなくなったからか、はたまたべダムさんの治世が良かったのかは分からない。
だけど、民が幸せそうに暮らしている様子を見るのは、気持ちが良いもんだ。
なんたって、めっちゃ皆笑顔だからな。
確か、転生前に幸せの国ブータンって言われてたよな。
国王様が、≪発展のゴールは【国民の繁栄と幸福】である≫って言ってた記憶がある。
建前じゃなく、本気でそう言って、それに向かって努力できる王様ってすごいと思う。
俺も、それを目標にしたいところだが…国民総生産を無視できないんだよな、この世界。
いつか俺なりの幸福論を確立したいところだ。
そんな事を考えつつ、コクピットで延々と続く麦畑をぼんやりと眺めていると、いつの間にか母さんが側にいた。
あれ? 母さんは、確か王都の別邸に残して来たはず…何でいるの??
「こっそり隠れて乗って来たのよ」
いや、そんなはずは…確かに出発した時、地上で手を振っていたのを俺は見たぞ?
「影武者よ」
影武者!? 母さんにそんなの…まさか、あれは変装したメイドか?
しかも、俺の心を読んだかのようなこのやり取り!
母さん、あんたはエスパーですか!?
「そんな事はどうでもいいのよ」
いや、マジで心読めてるでしょ!? どうなってんだ?
「そんなことより、トールちゃん…あまり考え込まない方がいいわよ。あなたは、あなたなりにとっても努力しているのだから」
「……え?」
何を言いだすんだ、母さんは? もしや俺の心が読めるのか?
「顔に出てるわよ。ヴァルナルも初めてもらった領地の貧しい小さな村を見て、とても思いつめた顔をしていたわ。どうしたら民の暮らしが良くなるのか、どうしたら皆が笑顔で過ごせるのかってね。トールちゃんのおかげで、アルテアンの領もとても豊かになってきたわ。領民の暮らしもとても良くなって、昔の様に野菜くずだけのスープと、固い黒パンだけの生活じゃ無くなったわ。でもね、人は常により良い物を欲しがるし、楽をしたがるものなの。あなたは領民の為…いいえ、国のためね。十分頑張ってるわ。だから、あとは領民達しだいよ。あなたが悩み考え苦しむ時期は過ぎたわ」
「母さん…」
「今は、ただ目の前の敵に集中しなさい。そして皆で揃って家に帰るの。民だけでなく、私達も幸せにならなきゃ駄目なのよ。きっともうすぐ、あなたにも子供が出来るわ。その子が生まれた時、笑って迎えてあげられる様に、顔をあげなさい」
後ろを振り向くと、全員が揃って俺を見ていた。
俺が心配なのか? いや、そうじゃない。
皆の目は、自分の手で明るい未来を幸せを掴もうという、強い意思が感じられる。
そうだな、俺も未来の家族の為、子供達が笑って過ごせる世界を作る為、今はカズムに集中しなきゃな。
「分かったよ…母さん。民のため、世界のため、家族のため、そして未来の子供達のために、俺は必ず恐怖の大王を倒す!」
俺の事を見る母さんの目は、とても優しかった。
敵わないな…さすが我が家で最強の女傑だ。
「トールちゃん、今変な事考えたわね?」
「いっでででででっでででででででででで!!」
ほっぺた両手で抓んないでーーーー!
「あなたは、すぐ顔に出るのよ!」
みんな~! た~す~け~て~! って、誰も居ねえ! 逃げやがった!
「反省してるの?」
「ごめんなさ~~い! ママ~~~ン!」
教訓…母さんの前では、変な事を考えてはいけない。
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