第233話  まさか!?

 とりあえず、王都での温泉&エステ開業は、エステティシャン不足などを理由に、先延ばしする事にした。

 お手紙にもそう書いたのだが…果たして王妃様は納得してくれるかな? しなくても延期は延期。

 まずは、王都で温泉&エステ開業希望者を募るところからスタートだな、うん。

 フランチャイズ化するために、出来るだけ早く、業務のマニュアルを揃えてパッケージ化するとしよう。


 なんせ俺が仕事で王都まで出向くと、民族大移動か参勤交代かってぐらいの人数が動く事になってしまったし…大げさか?

 いや、決して大げさなどでは無い! 絶対に母さん達も来たがるのは目に見えている

 母さんと王妃様は仲が良いらしいから、王都のスパ・リゾート建設に、絶対に一枚噛みたがるはずだ。

 エステに関しても、あれやこれやと注文を付けるはず。

 そして、あの父さんが、母さんだけを王都に行かすはずはない!

 コルネちゃんも、ナディアも、果ては巨乳メイドさんも、もれなく付いて来るはずだ。

 ホワイト・オルター号ならば、夜行バスみたいに寝てる間に王都まで着くから、そんなに負担は無いとはいえ、領の首脳陣が揃って王都へと行くなど、本来あってはいけない事なのだ!

 すでに何回もやっちゃってるけど…

 だから、最短で最高の効率をもって、温泉&エステ開業まで漕ぎつける必要がある。

 現状のままだと、一から十まで手取り足取り教えねばならないし、設計と工事もほぼ俺が主力となっている。

 俺がいなければ頓挫する事業など、将来不安で仕方ない。

 ま、温泉に関しては仕方ないにしても、銭湯&エステぐらいは、パッケージ化出来るはずだ。


 特に問題なのが、エステティシャンの養成だろう。

 これに関しては、我が領でもすでに増員要請が出ているぐらい、人手不足であり急務である。

 ってことで、エステティックサロン開業養成スクールを作ろうと思う。我ながらいい案じゃね? 

 エステティシャンの育成をしながら、サロン経営に関するノウハウも教えればいいだけの事。

 もちろん入学に関しては厳しい審査と細かな決め事を契約させ、さらにそこそこ高額の授業料をとる!

 高額の授業料ぐらい余裕で払えなければ、あっというまに借金まみれになるだろう。

 ある程度の自己資金を投入できる人か、投資してもらえる様な人でなければ難しいのだよ、起業とは。

 少なくとも半年先ぐらいまでの予算と必要経費に余裕が無い奴に、この事業は任せられん。


 よし、最低このラインで色々と考えてみるか…こうしてじっくりとフランチャイズ制って物をこの国に根付かせて…


 …根付く? …根を張る? …根を伸ばす? …根?  まさか!?


「サラ! どこだ、サラ!」

 まさか…だが、もしそうだとしたら…

『どうしたんですか? のんびりお昼寝してるというのに』

 おま、仕事さぼって昼寝かよ! いや、今はそんな事はどうでも良くはないが、良い事にしておこう。恐怖の大王は、一体何に転生したんだ?

『それが分かんないんですって~。何せ反応が微弱で』

 最初の反応から、ちょっとずつ大きくなってないか?

『ん~~~~~~。ここからの観測では、良くわかりませんね。誤差みたいなもんです』

 それは、本当に移動してるのか?

『あれ? 移動は…してない? でも最初の場所から微妙に位置が変わった様な…』

 俺の推測だが…もしかして、恐怖の大王って…植物に転生してないか?

『え? 植物…?』

 最初に反応があったのは、この円状大陸のほぼ中心近くなんだよな?

『あ、はい。そうです…』

 今までの会話から察するに、お前の観測は、【サラの立ち位置から対象を観測】するものだよな?

『ええ、まあそうですね。巨大な望遠鏡で見ている様な感じです。詳細は省きますが、戦闘機などに搭載されているレーダーに近い感じですね』

 レーダーの仕組みはあんま良くわからんが、それは今は良い。

 つまり、最初の反応地点からこっちに近づく物は観測出来るが、最初に観測した物とそれが同じ物かまでは分からないんじゃないのか?

『そう…かもしれないです? 自分でも良くわかりません』

 いいか、良く聞け。俺の推測だぞ?

 

 恐怖の大王は、植物の種の形で転生し、長い休眠状態に入っていた。

 その為、サラの観測に引っかからなかったんじゃないか?

 先日、そいつは発芽して観測に引っかかった。

 それはエネルギーを少しずつ消費しながら、根をこちらに伸ばしている。

 元々の種は実は移動しておらず、エネルギーを消費しながら近づいて来る根っこをサラの観測は追っている。

 実は、こっち以外にも四方八方にも根を伸ばしているが、それはこちらからでは観測出来ない。

 そして、もしも非常に少ないエネルギーで真っすぐ空に向かって伸びている場合は、これもまた観測不能。

 あいつは、この大陸中に根を張ってでっかくなる、厄災の樹なんじゃないのか?

 そう、俺達が父さんの屋敷の裏庭に植えた神木の様な、いやアレのもっとスケールのでっかい樹木になるとは考えられないか?


『大河さん…それはあるかもしれません。もしそうであれば…』

 ああ、時速10cmでも、成長し続けてるってなると驚異的なスピードだ。

 こりゃ、ある時一気に巨大化するかもしれんぞ。

 もしも大陸中に根を張られたら、もう取り返しがつかなくなる!

 のんびり来るの待ってる場合じゃないぞ!

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