第232話 根が社畜
もう恐怖の大王の事は当分の間、無視だ、無視!
俺はやる事がいっぱいあるんだから、のろまな亀なんざ知るか!
さて、今日も今日とて書類仕事…を?
父さんの街に出店したエステのVIP会員数が、すでにいっぱいいっぱいだと!?
母さんの奥様ネットワークを舐めてた…桁数増やして対応するか? あ、頭にアルファベットでも付けるか。
しっかし、VIP会員の会費って、そこそこお高目に設定したはずだが…あるとこにはあるんだなあ、金って。
年会費に加えて月会費と施術料が必要だってのに、本当に理解してるのか?
ふむふむ…痩身コースと美肌コースが人気なのか。次いで脱毛コース…これは見なかった事にしよう。
写真の技術があれば、接術前と施術後の違いを宣伝出来るのだが、これは難しいか。
ガチャ玉で創れない事は無いが、店のCMの為に無駄遣いするのもどうかと思うしな。
ま、口コミでガンガン広がってるみたいだし、当初の想定収益は完全にオーバーの350%増だから、問題なし。
いや、店舗の拡大とエステティシャンの増員は不可避だな。
父さんの領でも、募集かけておこう。
あと、皆のお給料アップと福利厚生も考えねば…辞められたら困る。
んで次はっと…ん?
「誰だ、王家の封印付きの手紙を通常業務の書類に混ぜたのは! 見落としたら、大問題になってたぞ!」
「あ、それ私です」
「え、メリル?」
仮にもあんた王女様だろうが! 婚約者である俺を処罰させる気だったのか!?
「それ、お母さまとお姉さま3人からの要望書です。大した中身じゃないので、却下でも大丈夫ですから」
そんなわけあるか! 王家からの要望書だぞ!
王妃様と王女殿下…あれ?
「王妃様から?」
「はい、お母さまからです」
「王女殿下って…お姉さん3人とも嫁に行ってるよね?」
「ええ、3人とも公爵家、侯爵家、伯爵家に降嫁してますけど?」
「その方達が揃って?」
「いえ、連名で嫁入りした各家々の奥様方やお嬢様方からも」
いやな予感がヒシヒシと…
そ~っと封筒を…あ、もう封はメリルが切ってるのね。
ってことは、内容知ってるの? あ、知ってるのね…
でも勝手に他人宛の手紙を開封して見たらだめだよ?
日本だと犯罪だから、それ。
え~何々…王都に温泉とエステ店を至急出店しなさい…って、
「これ要望じゃ無く、命令じゃん!」
「いいのです。お母さまの戯言に付き合ってたら、トール様と私たちの時間が減ります! 無視です! 却下しましょう!」
んなわけに行くかよ!
ほっとくと、もの凄い大事になる気がする。
「いや、メリルよ。現状、我が街と父さんの街のエステは、非常に大きな利益を上げている。王都出店は、そう難しい事では無い。温泉がが出るかはわからんが、元々王都進出は考慮していたのだ」
「でも…」
それでも否定しようとするメリルの言葉に、かぶせ気味に、
「まあ聞け。何も俺が経営を全てする必要は無い。フランチャイズ制を導入するのだ…いや、当初はコミッション方式をとり、 その後施設とシステム全てを売却してもいい。忙しいのは最初だけのはずだ」
「ふだんいちゃついてる?」
「いや、全然違うから! フランチャイズ制。え~どう説明したらいいのか…加盟店制度? ん~詳しくはまた今度」
「それだと、どうだというのですか?」
「簡単に言うと、俺達のエステと同じ商売をしたい人に、エステに関する様々な知識とノウハウを提供して、対価としてロイヤリティーって言う名目で、お金を徴収する契約をした店舗の事だな。本当はもっと複雑だが。これなら俺が最初だけ手を入れれば、その後は契約した店舗のオーナーが頑張るだけで、俺はここでのんびり出来る」
これなら、寝てる間にもガッポリ稼げるってわけだ…うっしっしっし!
「それでも…」
ふむ…これでもダメか…
「それならば、俺が移動する時は、全員付いてくるとかなら、どうだ?」
「それなら…でも、また1人でコソコソと行ったりしません?」
まだこの間の事を根に持ってるのか…
「しません!」
「本当の本当に?」
「女神ネス様に誓って!」
ん~~っとメリルが悩んでいるが、常に移動は一緒だと言う点が効いたのか、しぶしぶOKが出た。
うん、ネスに誓うのが一番信用されるってのは、何か納得いかないが、仕方ない。
「でも、これで『おはよう』から『おやすみ』まで、ずっと一緒ですね! …お風呂もベッドの中も…」
ん?
「何か言った? 聞き取れなかったんだけど?」
「あはあはあはははははは…何でもありませんから。お気になさらずに」
あのバタフライしそうなほど泳ぎまくった目は、何か隠しているはずだが…まあ、納得してくれたなら良い。
うっし! 忙しくなるぞ! って、何でおれは自分から仕事を作ってんだよ!
のんびりゆっくりスローライフ目指してるはずなのに!
『業が深いですね』
根が社畜なのかなぁ…俺って…
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