第160話 ご挨拶
「トールヴァルド様、娘がお世話になっております。ミレーラの父、ヴォード=マレスでございます。そしてこちらが妻のメーベルでございます。この度はミレーラに逢わせて頂き、誠にありがとうございます」
少し小柄で華奢な、いかにも文官然とした男性と、やはり小柄で華奢な女性が、ミレーラのご両親。
ご両親は、聖騎士団の事務方なんだそうで、以前聞いたようにべダムさんとは血縁関係にある。
グーダイド王国で言えば、下級勲民…つまり貴民位で言えば、準男爵相当らしい。
2人揃って丁寧に腰を折ってくれたが、仮にも義父・母になる方達だ、そんな堅苦しいのは止めだ止め!
「頭をお上げ下さい、義父様、義母様。私がトールヴァルド・デ・アルテアンでございます。私は御二方を家族と思っておりますので、どうか堅苦しい挨拶などはおやめください。さあ、私の家族も紹介させてください」
そう言って、2人に両親、妹、婚約者2人と、妖精達を紹介した。ま、使用人は普通紹介しないよね。
父さんが伯爵で、俺が子爵。メリルが王女で、コルネちゃんがネスの巫女と聞いて、驚いていた。
神聖国の腐った姫巫女制度とは違うのだよ、我が天使コルネちゃんが就いた巫女という職は。
ミレーラの救出後、ご両親もこの腐った教会の姫巫女制度を聞いたらしい。
この国では、姫巫女に選ばれるという事は誉れであり、喜ばしい事だと思われており、両親も誇りに思っていたとの事だ。。
しかしてその実態が革命により暴き出され、国中が知る事になった時、小さな村にある教会の関係者ですら、民衆による私刑が行われたという。
寒村の教会など、そんな悪事に加担しているわけがないと考えていたのだが、村の少女に関する情報を中央に上げていたというから、この太陽神を祀る真アーテリオス神聖国という国自体が腐っていたのかもしれない。
この世の害悪は死んで良し! 女子供を喰い者にする奴らに生きる価値など無い!
救い出された姫巫女の中から、最も高位な家の出であるミレーラが、貢物というか人質というか生贄的に俺の所へと送られたそうで、それは本人も家族も納得した上での事だったそうだ。無理やりでなくてよかったよ。
姫巫女制度の実態を知ったミレーラは、祖国の為に身を奉げる事の方が、豚の欲望の捌け口となるより、よほど幸福で正しい事だと考え自ら志願したんだって。
ご両親としては、戦争をたった一人で収めた人間など、どんな恐ろしい奴か分からないからと反対していたが、ミレーラは頑として聞き入れなかったという。
まあ、他の姫巫女が犠牲になるのであれば…と考えた、自己犠牲の精神なんだろうけど。
そんな裏事情を全て知った我が家の情に篤い面々は、当然と言えば当然なんだけど、ミレーラは絶対に幸せにしますからご安心くださいと、口々にミレーラの御両親へ声を掛けていた。
義理人情に篤く、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌を重んずる家族だからなあ…って、南総里見八犬伝じゃないけどね。ちょっと暑苦しい家族だけど、嫌いじゃない。
「お父さん、お母さん…わたしトールヴァルドさまのお側に行けて、すごく幸せですから、何も心配しないで」
ミレーラの言葉が本心であると分ったのか、ご両親はまた涙を流していた。
ご両親の体中の水分無くなっちゃうよ? お水飲んだ方がいいと思う。
むぅ…少々重い話や真面目な話が続いたので、ちょっとストレスが溜まって来た。
「ホワイト・オルター号に忘れ物をしたので取ってきます」
と言い残し、サラを引き連れ飛行船に戻って来ました。
むむむ? 飛行船の警戒システムのログを確認したんだが、シールドにちょっかいかけた形跡がないなあ…グーダイド王国の腹黒貴族達とは大違いだな。
実は、我が祖国ながら腹黒い貴族が着陸する度に、隙を見てはシールドを突破しようとしていた。
もちろん、俺もしくは妖精達かサラが思念派で乗船許可をしなければ、シールドは突破出来ないので、無駄な事なんだけどね。
ま、そのシステムの穴をついてサラは密航して来たんだけど…。
この神聖国の人達は、民度が高いのか、ネスと太陽神が怖いのかどっちだろう…まあ、後者っぽいな。
さてさて、この教会の一番高い尖塔の天辺に、太陽神3D映像投影装置を設置しますかね。
この太陽神の投影装置はネスの投影装置と違いAI搭載型なので、実はある程度の受け答えを数ある会話パターンを自ら組み合わせて行う事が出来る。
多分、もう誰も覚えてないだろうけど、高性能なんだよ…この装置。
ついでに俺との思念派でのやり取りも可能なので、もしもこの国に危険が訪れた場合、誰かが太陽神に祈ればそれが俺に届くようになっている。
ちゃんと太陽神が俺に報告する内容は取捨選択してくれるので、無駄な通信はしてこない、超便利仕様だ!
この投影装置を設置してもらう蜂さんはっと、ブレンダーとクイーンはどこにいるんだ? あ、ツインの部屋のベッドで腹出して寝てやがる!
まあいいけど…クイーン、ちょっと頼まれてくれ。これをあの尖塔の天辺にくっ付けて来て…うん、兵隊さん達で。
ファクトリーから、いかにもヤル気がございませんという風体の兵隊蜂が出て来て、面倒くさそうに装置を持って飛んでった。
う~む、最近めっきり出番無かったから、だらけまくってるなあ…忠実なしもべのはずなのに…
あ、もう帰って来たのか、ご苦労さん。
え? あ、うん…寝てていいよ。ごめんね寝てたところ…って、何で俺が謝んなきゃいけないんだよ!
これ絶対にサラの影響だろ! そうに決まってる! 後でサラを折檻だ!
『りふじんです! おーぼーです! JA〇Oに訴えます!』
いや、J〇ROは絶対に関係ないジャロ…
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