第149話 これにて一件落着?
『サンデル・ラ・グーダイド国王。そなたはこの様に私欲に塗れた下賤な輩を国の中枢に据えておるのか? これではこの国への加護は取り消すより他ない。この先、我の加護はアルテアンの一族と、我の信徒にのみに与える事にする!』
もう、国王様の顔は真っ青、軍務卿の顔は真っ白! 集まった人々や騎士は、真っ赤な顔で軍務卿を睨み付けている。
「お…お待ちください、ネス様! 私はその様な事、一切思っておりません! これは軍務卿が勝手に言いだした事。私が自ら厳しい罰を与えますので、何卒寛恕を…」
陛下が平伏して許しをネスに乞うた事だし、ま、お灸はこんなもんで良いか。
『よかろう。サンデル・ラ・グーダイド国王が責任を持って処分すると言うのであれば、今回だけは目を瞑ろうぞ』
もう処分って言わしちゃった…てへっ! だって、あんなのが将来の父さんの上司って、嫌じゃん。
「ま、間違いなく…おい、軍務卿を捕らえよ! 沙汰が決まるまで牢に入れておけ!」
はい、軍務卿さん、人生オワタ。
やりすぎかもしれないけど、こんな奴が軍の指揮・命令権を持ってたら、この先何をするかわからんし。
さっきまでの言動を顧みれば、多分叩けばかなり埃が出るだろうから、一向に俺は気にしない。
大臣の職は罷免されるだろうが、その他に罪があるんであれば、それはそれで自業自得だと思うしね。
国王陛下の大臣の指名責任だってあるんだから、ちゃんと調べて裁くだろう。
って、実は来る途中で見つけた脱税をしていた子爵家、ネス教を騙った準男爵家は、実はこの軍務大臣してる侯爵のカニおっさんの息がかかりまくった、実の息子達だった。
まあ、欲に塗れた、典型的なクソ一族なんだろうなあ…最初に会った時は、そうは見えなかったけど、ネコ被ってたのかな。
騎士たちが寄って集って大臣を捕縛しているのを横目に見て、ネスに指示を出す。
なんか大臣が喚いているけど、往生際が悪いなあ…
『このホワイト・オルター号は、トールヴァルドが使途としての使命を果たすために我が下賜した物。私利私欲のために我が物としようなどと考える輩がこの先現れた時には、我が直々に神罰を下し、この国への加護の一切を取り消すと知るが良い』
「「「「「「「「ははーーー!!」」」」」」」」
練兵場に居合わせた人々が、一斉に平伏した。立っているのは、俺達一行だけ。
『此度はトールヴァルドの達ての願いにより、使徒トールヴァルドが認めた者達を、ホワイト・オルター号への搭乗を許可する。トールヴァルドと良く話すが良い』
「「「「「「「「ははーーー!!」」」」」」」」
さてさて、これにて一件落着かな? 何か違う気もするけど、まあいっか。
場を国王の執務室に移して、国王様とお話。
俺と父さんと母さん、王家一同が執務室に勢ぞろい。
誰が飛行船に乗るのか? めっちゃ真剣に熱く会議が行われている。
飛行船の部屋は、ビジネスホテルっぽいんだけど、それで良ければ王家全員乗れるんけどさ…
え? 使徒の使命の為に使用する乗り物なのだから、そもそも質素で当然だろうって? 陛下のおっしゃる通りです。
結局、全員が部屋なんて気にしないから乗ってみたい! と、言ってきた。
そですか…では、皆様を我が領までの空の旅にご招待しましょう~!
ちなみに往路の様な、飛んで 飛んで 飛んで 飛んで 飛んで 飛んで 飛んで 飛んで 飛んで 、周って周って周って周~る~♪ 様なコースでは飛びません!
当初に予定していた、一泊二日で我が領まで行きますよ~!
あ、そうそう! 往路で見つけた不正行為は、しっかりと国王様と内務大臣さんに報告しておきました。
内務卿さん、報告内容にかなりブチ切れてまして、軍務大臣の一族を徹底的に調べあげると、滅茶苦茶意気込んでいました。
内政閥と軍閥だから、仲は良くなかったのかな?
父さんも将来は気を付けてね…バリバリの軍閥出身なんだから!
なので、そんな内務卿さんには手土産として、この国の詳細な地図をあげました。
もちろん、ネスより社外秘…じゃない、部外秘にするように言われている事を伝えるという、念押しも忘れません。
結構正確に出来た地図は、とても喜んでいただけました。
特に、脱税行為のための隠し畑の位置が書かれた部分は…
良い感じにこの国はネスに頭が上がらない感じになってきた事だし、いっちょう王都に教会でも造ってみようかなあ。
しかし、これじゃネスを使って、俺がこの国を好き勝手してるみたいだよなあ…
そもそも、ネスの加護って、特に何も無いんだけど。
ま~利権や権力に胡坐をかいた腐れ貴族は、徹底的に潰してこの国を変えるつもりだったんだから、今さらか。
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