第119話  どよめく謁見の間

 やって来ました、我がグーダイド王国首都! 予定通りに6日目の夕方に到着。

 蒸気自動車の各部をドワーフの職人さんと点検したが、特に問題は発見されなかった。

 道中で木製の車輪が破損した程度で、蒸気機関も車軸もその他のパーツも破損無し。

 う~む……領地の森に生えているローズウッドに似た非常に硬い木を使用しているのだが、車輪はこれでもダメか。

 要改善項目としてチェックしておこう。早めにそれが分かっただけでも、この耐久テストに意味は有ったな。


 さて、王都に蒸気自動車で乗り込むと、やはりというか注目の的だった。

 荷台に張った幌に描かれた紋章で、この車の持ち主がトールヴァルド・デ・アルテアン子爵であることは明白なので、特にちょっかいをかけてくる者はいないのだが、好奇の目を向ける事を止める事は出来ない。

 そんな衆目の中、美少女の婚約者~ず&コルネちゃんを晒す訳にもいかないので、座席で大人しくしていてもらう。

 この旅の最終目的地である王城に着くまではね。

 旅程の途中にサポート要員として配置していた馬車10台を引き連れて、街中をゆっくりと王城へと進んだ。


 王城の城門では、見た事も無い馬が曳かない馬車(?)を見て驚き、紋章を見てさらに驚き、止めに第四王女メリルと、子爵であり聖なるネス様の使徒である俺と、ヴァルナル・デ・アルテアン伯爵夫妻が馬車から降りて来たのだ、そりゃ大騒ぎにもなる。

 普通は国王への謁見などは先触れを出して許可を求め日取りを決めて……と複雑で面倒な手順を踏まなければならないのだが、流石に第四王女メリルが居たからか、すぐに許可が下りて謁見の間に通された。


「皆の者、面を上げよ」

 国王様のお言葉で、ちょこっとだけ頭を上げる。まだ全部はあげちゃいけません。

「良い、面を上げよ」

 二度目のお言葉で頭を上げます。これがこの世界の常識らしいです…面倒くさ。

 ここには、俺、両親、コルネちゃん、婚約者~ず、ナディア、天鬼族3人娘が控えてます。

 ドワーフ職人さんは、蒸気自動車の整備と見張り番。実は妖精さんがこっそり護衛のために1人ついてます。

 謁見の間には何人かの王国の重役さん(?)がいるけど、誰だかよくしりましぇん。まあ、滅多に会わないから気にしなくてもいいか……おっと! ゴリラの近衛さんは国王様の近くに居たね。お久しぶりだね~!

「久しいな、ヴァルナル伯、トールヴァルド卿。して本日は何やら面白い物に乗って来たとか?」

 ここは俺より上位の貴族の、父さんが先にご挨拶。

「は、陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう。此度は我が子、トールヴァルド子爵が開発した蒸気自動車の報告と耐久試験を兼ねて、王都に参りました。未だ完成には至っておりませぬが、近いうちに量産化した物を献上できるかと思います」

 父さん、上手いぞ! 今、献上しちゃったら帰りは馬車だもんな。完成したら一台ぐらいあげるのは無問題!

「ほう、卿の領地から王都まで試験の為に来たと申すか。して、結果はどうだったのじゃ? トールヴァルド卿」

 およよ、俺にふってきたか。

「ご無沙汰しております陛下。ご機嫌麗しゅう。試験は上々です。問題も何か所か洗いだせましたので、完成は間近かと」

 まあ、嘘はいって無いよ?

「では、後程見せてもらっても良いかの?」

「はい、是非ご覧ください。きっと満足していただけるかと存じます」

 これで俺も自動車開発の祖として歴史に残るかな~。ちょっと嬉しいかも。


「卿にもうひとつ聞きたいのだが……その、翼のある3人の娘と少女は?」

 まあ目立つよね……

「はい、陛下。彼女は、ネス様の眷属でナディアと申します……ナディア、羽を見せてあげて……そしてこちらの3人は、同じくネス様の眷属でアーフェン、アーデ、アームと申します……みんな、立って礼を」

 ナディアが優雅に立ち上がって美しい羽を顕現させて礼をすると、居合わせた人々から「おお!」と声が上がる。

 続いて天鬼族3人娘が可愛らしくお辞儀をすると、同じくどよめく声が上がった。

「この度、ネス様が我が妹コルネリアを巫女として指名され、ネス様の御神体にも等しい‟生命の樹”の世話を仰せつけました。そのコルネリアの護衛兼世話係として、ネス様が遣わしてくださったのがナディアです。また、ネス様の聖なる湖のある地の領主たる、私の婚約者である3人の守護の為にと、ネス様が遣わしてくれたのが、天鬼族の3人です。どうぞよろしくお願いいたします」

「「「「どうぞ、よろしくお願いいたします」」」」

 ナディアと天鬼族4人が一斉に頭を下げると、さらに大きなどよめきが謁見の間に広がった。

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