第117話 新たな交通手段
まあ、何時何処に来るかもわからん敵をずっと警戒するのも難しいんだが、備えだけはしておかなきゃな。
ってことで、備えの第一弾として、新たな交通手段と通信手段の開発に着手しよう!
前々から考えていた様に、まずは飛行船の製造と思ったが、ちと今の技術力では難しい。
ガチャ玉で創れば簡単なんだが、それではいくらガチャ玉があっても足りない。
なぜなら、新しい交通手段は俺だけが使うわけじゃ無いからだ。
少なくとも、この世界の技術力で製造・運営していける様にしたい。
そうしないと、新たな交通手段とは言えないからな。俺だけが便利になっても仕方が無いんだよ。
飛行船には、この星の科学技術では製造出来ない物が多すぎる。
って事で、飛行船は一旦保留。
空が難しいなら陸上……つまり、自動車の製造だ!
列車の方が構造は簡単なんだが、レールを敷くのが大変だから却下。
自動車って言っても、ガソリンや軽油で動く内燃機関を作る事こそ難しいが、別にそれにこだわらなければ、そう難しいものでも無い。
地球でも初期の自動車の動力源である、蒸気機関を動力とすれば、今の技術力でも出来るはず。
そう! 昔の映画なんかにも出てくる、あの蒸気自動車だ!
実際の蒸気機関ってのは、高度な知識と技術と高い工作制度が求められるんだが、そんなのは魔道具で解決できる。
巨大な水タンクと燃料を搭載して走るなんて事をしなくとも、水を生み出す魔道具と、それを加熱する魔道具を組み合わせて、ボイラーからピストンでエネルギーを取り出し、車輪を動かすのが一番簡単な仕組みのはずだ。
ピストンやボイラーの工作は、ドワーフの皆さんや鍛冶職人の皆さんにお願いする事にした。
やはり鍛冶のプロに任せた方が良い。細かな仕様書を俺が書いて、発注した。
蒸気機関を搭載する馬車も、大幅に手を入れなけりゃだめだ。
ハンドル、アクセル、ブレーキ、サスペンション、ショック・アブソーバーの開発をしなくては話にならん!
この辺も概要書と仕様書を書いて、発注した。
ゴムタイヤは出来ないので木製車輪だが、金属製の車軸にシャフト状のベアリングを取り付けた。
ブレーキは、直接車輪を抑える形。自転車のブレーキに近いかな。
ハンドルはそう難しくなかったが、動きが軽すぎると直進性が落ちるので、ステアリング・ダンパーに近い物を新たに設計した。
実は、この構造って昔遊んでたラジコンを元にしてるんだけどね。
ん~! やっぱメカメカしてるのって楽しいな! なんで男って、こう機械いじりとか好きなんだろうな~。
蒸気自動車の製作に没頭してたら、マチルダさんに耳を引っ張られた。
「お仕事をしてください!」
そのまま耳が千切れるかっていう勢いで引っ張られたまま、執務室に連行されました……トホホ。
▲
構想から完成まで実に半年! とうとう蒸気自動車試作第一号が完成しました!
形状は平ボディータイプのトラックに近く、長い荷台が特徴。
蒸気機関は荷台の下に取り付けられ、蒸気機関車と同様にピストンで車輪を直接動かす形。
魔道具を使用して構成された蒸気機関は、非常にコンパクトであり乍ら、そこそこの馬力を発揮。
最高速度はおよそ40~50km/hと言った程度だが、馬と違って休憩の必要も無い。
照明と魔石さえ準備できていれば、昼夜問わず走らせる事が可能。
しかもサスペンション、アブソーバーの開発により、乗り心地も大きく改善された。まあ、座席にクッションは必要だけどね。
一日8時間で300kmほど走ったとして、王都まで7日で着く計算だ。なんと今までの日程の半分!
王都まで特に用事も無かったのだが、この際なので耐久性のテストを兼ねて行ってみる事にした。
もちろんメンテナンス要員のドワーフさん2人と、婚約者~ずと天鬼族3人娘、両親とコルネちゃんとナディア、そして俺。
総勢12人だが、荷台と操縦席に幌を掛けて、座席もきっちり設置。必要資材を満載にした。
もちろん負荷テストも兼ねてるんで、酷使しなきゃね。
もしもの場合に備えて、予め決めておいたポイントに10台の馬車を先行して配備。
これで修理不可能な場合でも大丈夫なはず。
「お兄ちゃん、本当にこれで行けるの?」
コルネちゃんや、お兄ちゃんを信じなさい!
「トール様、本当に大丈夫ですか?」
「怖かったら留守番でもいいけど?」
メリルが、プルプルと首を横に振った。1人だけ留守番は嫌らしい。
「父さんも母さんも、準備は良い? といっても、座ってるだけなんだけど」
皆、ちょっとおっかなびっくりだけど、準備良さそうだね。
見送りに来てたマチルダさんやイネスさんに、申し訳ないけど後の事をお願いして、さあ出発だー!
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