第108話 巨大なご神木
翌朝、何故か女性陣はすごく上機嫌だった。
婚約者トリオは、何かに付けて母さんに「お義母様、お義母様」と話しかけ、母さんも嬉しそうに「どうしたの? うんうん、それはね~」と応え会話が弾んでいたのだが……一体、昨夜は何を語り合ったのだろう。
聞きたいのだが、聞いてしまうと何だがやばい気がするので、あえてスルーしよう……まだ死にたくないしな。
和気藹々とした朝食の場で、男は俺と父さんだけ。
我が家の食事は、基本的に使用人も同じ時間に食堂で一緒に摂る事にしている。
別々にするのも効率悪いし、何より大勢で食べた方が楽しいって理由なんだけどね。
『ビッ〇バーグを食べる。それが家族の絆を確かめた時のアルテアン家の習わしだ』
おお! それは交響の詩編の最終話じゃないか! 懐かしすぐる!
今日の朝食は、パンとスープとサラダだけど……。
『大河さんがこの星を守るために、人間でなくなることを選ぶんだったら、私も人間であることをやめる。私は、大河さんと出会えたこの星が大事だし、この星に生きる、みんなも大切だ。でも、私はそのために大河さんを失いたくない!』
また長いセリフ出して来たな……。ってか、俺が人間でなくなるのかよ!
あ、死後は神になるんだっけ。でも当分は人間だぞ?
『アーイ・キャーン・フラーイ!』
勝手に飛んでけ!
『マスター、サラの言動がおかしいのはいつもの事です。時間が出来たのでしたら、生命の樹の様子を見に行きませんか?』
いいね~取りあえず一緒に行こうか、ナディア。芽が出てたらいいなあ。
『……進化の道筋は、ひとつでなくてはならない理由はない』
サラは、出会った時からだんだん退化してるけどな……ミジンコまでもう少しだぞ。
『……』
サラとの意味不明なやり取りはどうでもいいから、とりま裏庭を見に行こう。
女性陣にお断りをして、ナディアと共に家を出た。
そう言えば、裏庭には精霊さんとシェルター造ったんだよな~。あの後、崩壊したら危ないから埋めちゃったんだけどさ。
って懐かしみながら昨日種を撒いた裏庭を覗いて……びびった!
屋敷の屋根なんて目じゃないほどに育った巨木が!
それにしても、どこかで見た様な……あ! これクスノキだ! あのト〇ロが眠ってるあの巨大なご神木だ!
いや、クスノキじゃないかもしれん……確かクスノキは独特の強い香りがしたはず……防虫剤みたいな。
俺の創造物だから、モデルになった実際の樹とは違うのかもしれんな。ホムンクルスと人間との差みたいな物かなあ?
「マスター、立派に育ちましたねえ」
「軽い感想だな。たった一日……いや、半日でここまで育ったんだぞ? そんな感想で良いのか?」
動じないな、ナディア。
「ええ、これで配下の妖精を生み出せます。将来は、コルネリア様だけでなく、ご両親や婚約者の皆さまにも、妖精を傍に控えさせようと考えておりますので、とても嬉しいです」
それもそうか。妖精の女王なのに、妖精が居ないんじゃ格好付かないもんな。
「うん、この樹の運用はナディアに一任するよ。コルネちゃんと、お世話をして欲しい。でも注連縄が欲しいな……こう……ご神木って感じの奴が」
それしたら、まんまトト〇になっちゃうけど、この世界の人には分からないだろうから、いいや。
「では、それは私とコルネリアで行う最初のお世話と言う事にします。さあ、皆さまにご報告に行きましょう」
居間でまったりと皆が食後のお茶をしながらお喋りを楽しんでたので、生命の樹の事をちゃんと報告しておこう。
「皆、聞いて欲しい。ネス様の仰っていた生命の樹が、裏庭に生えました。時間があるなら、見に行きませんか?」
皆、へ~! って感じだけど、あんまし驚いてないなあ。
「コルネリアは、これからナディアとお世話をするんだから、しっかり見なければ駄目だよ」
「はい! わかりました!」
元気よく手を挙げて返事をするコルネちゃん……今日もかわええのぉ!
「それじゃ、皆で裏庭に行きましょう」
その後、裏庭に出た全員が巨木に驚き目玉が飛び出るほど見開いて固まったのは、当然の成り行きだよな、うん。
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