第69話 新たな敵の影
国王様の領地視察も無事に終わって、俺はのんびりした日々を過ごしていた。
いや~皆が良く働いてくれるから、楽でいいや。
父さんの領地と俺の領地の収支は、父さんの信頼のおける方々による推薦で雇った人がしてくれてる。
サラの予想に近い貴族家の次男三男とか商家の子息とかだけど、俺と父さんとで面談をして決めた。
実家の貴族家や商家も調査したが、財政や経営破綻している訳でも無く、健全な経営が出来ている所からだけ推薦を受け付けた。
まだ将来的には分からないけれど、なかなかに優秀な人材を雇えたと思う。
特に母さんのお姉さんの嫁ぎ先でもある商家の娘さんは、若くして支店を切り盛りしていたらしくて頭の回転がものすごく速い。
とりあえず紹介すると、俺の従姉にあたる方で名前はマチルダさん19歳。
母さんに姉妹いたんだ。てか、実家の話っていくら聞いても両親共にはぐらかして教えてくれないんだよな。
親戚が居ただけでびっくりなんだけど、俺。
彼女の実家である商家は、この領地から見て王都の反対側に馬車で10日ほど。
わざわざ1か月近くもかけ旅をして来てくれた。
全体的にスレンダーだけど、俺のスカウターが服の上からだとアンダーが小さく、ゆったりした服だから目立たないが、あれはDは確実にあると示していた。
理知的な目と良い、すらりと伸びた長い足と良い、赤毛と良い、もうマチルダさ~ん! と叫びたくなった。まさかウ〇ディーって言う婚約者は居まいな?
マチルダさんは、俺の領地の財務関連の全てをお任せしている。
父さんの領地と違って、収支が非常にややこしくなってしまっているからら、商家を切り盛りしてた手腕を買って大抜擢だ。
すごく父さんは自分の領地に置きたかったらしいが、まさか父さんもスカウターを持っているのか!?
▲
『緊急通信! トールヴァルド様へお知らせいたします! 隣国との戦が近々起きる可能性が有ります!』
え! マジか!?
『本気と書いてマジと読みます。以前、太陽や月を信仰している国があると言った事を覚えていますか?』
あ、ああ。覚えているが、まさか……。
『そのまさかです。グーダイド王国で布教活動を行いたいと、国王に以前より申し入れていた様ですが、今回の聖ネス教を唯一の国教とする方針により、他の宗教の国内での布教を認めないと国王名義で発布したらしいです。これにより宗教国家で太陽の神を崇拝している真アーテリオス神聖国が激怒したようですね。そんな宗教は認めない、邪教に洗脳された国に神罰を! と、国境付近に軍を集結させつつあります』
マジか~。その神聖国ってどこにあるの?
『いや、自国の周囲にある国ぐらい覚えましょうよ、アホ貴族ですか? 我が国の西方に位置する国で、人口は約60万人。その全てがアーテリオス神教の熱心な信徒です。まあ、実際にはそんな神は居ませんけどね』
まあ……将来俺が神になる時に、定年退職する神様だもんな。
ってか、そもそもこの世界の神って輪廻管理局の職員だし。
んで、その国って強いの?
『宗主である国王には何か特殊な力でもあるのか、戦略を予言の力で決定し、太陽神の加護で聖騎士を強化していると言われています。聖騎士の数は約5千。一般の兵士も入れると、兵の総数は3万近いはずです』
そりゃ大軍だな……それにしても予言か。
でも、そんなスキルとかこの世界にあんの?
『そんな便利な物はありません。元々予知能力とは超能力的な物を除けば、人の積み重ねた経験や情報を元に統計的に捉えて考察した結果導き出される予測が発展した物です。つまりは考察能力が高い……簡単に言えば高いIQの持ち主の単なる戦略と同じです。単にそれが一族の中で磨き上げられてきただけだと思われます。この星に予知能力とか軍を強化するなどと言うスキルは存在しません』
それじゃ予知じゃなく確度の高い予測って事なの?
『まあ、簡単に言えば防御の弱い所に強い騎士を確実に勝てるだけの数を投入し、勝てば「神のお告げの通りだ!」って言ったら、信じちゃったんでしょう。負けてもどっかに難癖付けて「神の言葉の通りに出来なかったからだ!」とか「これは次の勝利のための布石と神は仰っている!」とか言ったら、まあ馬鹿な奴らは騙せるでしょう。それで兵士の英気をアップさせてる様です』
うっわ! それって完全に詐欺じゃん!
『ええ、真アーテリオス神聖国の宗主は、完璧な詐欺師です。自分自身も神の使徒とか言ってますが、ただのキモイ豚野郎です。詐欺師の技能を継承した者が宗主になれると言っても良いかも知れませんね』
ふ~~~~ん。そんで俺も出兵命じられるかな?
『間違いなく命じられます。この国の貴族の義務です』
うちには兵士居ないのにな……俺だけじゃダメかな?
『大丈夫でしょう。前に謁見で魔法を披露しましたよね。どう考えてもあれで万の兵士に匹敵しますよ』
うっし! 俺だけならいつでも行ける! 義務なら仕方ねえ!
……人を殺すの嫌だけどな。
『ならば何か創ってみたらどうですか? まだまだエネルギー変換カプセルは余ってますけど? 早く使って下さいよ。最近、欲求不満なんですから!』
お前の性欲はこの際無視して、そうだなあ……何か考えてみるか。
『無視すんなやゴラァァァ! ビリビリするぞ!』
お前は御○美琴か!
▲
一月後、父さんに呼びだされた俺は、ブレンダーにヴェスピナエ・ファクトリーを括り付け、実家に戻ってまいりました。
まあ呼ばれた理由は分かってる、真アーテリオス神聖国の件だ。
ミルシェちゃんとサラに家を任せ、領の運営はマチルダさんに一任出来たんで、俺は1人で戦地に向かう。
くぅぅぅぅぅ!なんか格好いい俺!
でも実家ではコルネちゃんに頬ずり頬ずりしまくったけどね。
戦の前に妹成分を補充しなければ!
『シスコン乙』
俺はシスコンだよ! 何か文句あっか!?
『開き直りやがったよ、この変態が!』
変態はお前だっつーの!
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