第59話 初めてのご神託
翌朝はロビーの美しいステンドグラスから差し込む朝日の美しさに、全員が大興奮で大変だった。
そして2階の肖像画を見た大人たちが、その完成度の高さに感動しまくっていた。
まあ……ほとんど写真と変わらないんだけどね。
コルネちゃんとミルシェちゃんは、噴水のある泉を眺めてうっとりしていた。
そして、改めて俺の家を外から見た愛する我が家族もミルシェちゃん一家も、もう興奮度マックス!
こんな美しい領主邸は今まで見た事が無いって、大絶賛!
いや~、それほどでもあるかな~!
そして、おまたせしました~本日のびっくりドッキリ〇カ発進!
じゃない、ネス湖の女神ネスだコロン!
冗談はさておき、ネス湖に眠る白い女神像の静謐で神秘的な佇まいは、湖の奇跡的なまでの透明度とキラキラと光り輝く水面と相まって、無宗教なみんなも女神と清らかな水の恵みに思わず膝をつき祈りを捧げたくなる様な美しさだった。
「トールヴァルドよ。なんと美しい湖と女神像だ! ここは確かに聖地だ! 陛下に報告しなければな!」
よし、ついでだから女神様からお言葉を貰うとするか。
みんな見るがよい!
ダイ〇ーン……じゃない、女神ネス、カムヒアー!
ごごごごごごご……美しい水面にさざ波が立ち、やがて女神像がゆっくりと水面を割って浮上する。
何事かと全員が警戒したが、大丈夫と落ち着かせる。
やがて胸の前で両手を合わせ、慈愛と憂いを湛えた神秘的な表情の荘厳な純白の女神像が浮上すると、俺とサラ以外の全員が即座に平伏した。
『皆の者、よく聞くがよい。我は水と生命の女神ネス。この地はそこなトールヴァルド・デ・アルテアンに託した。良き統治を行い民を導いてゆくためにも、皆の者も力を貸すがよい。さすればその方達も天恵を得る事が出来るであろう』
涼やかな銀の鈴のように澄んでいて、それでいて厳かにしてその神聖を現す様な……難しいな、つまりめっちゃ神々しいお声で神託を述べてもらったんだ。
もちろん、俺が準備した文章そのままだ。
「おおおお…………」
全員、涙流しちゃったよ。
ごごごごごごご……ゆっくりとネスは湖の底へと戻って行ったが、その間誰も口を開けなかった。
正確には、姿が見えなくなっても暫くの間は動けなかったみたいだ。
ようやく父さんが俺に向かって、
「トールヴァルド……アルテアンは女神の加護を賜ったのだな!」
感動して涙がだーーー!って、ついでに鼻水もだーー!ってなってるぞ、父さん。
「僕も来た時に感動したよ」
まあ、こう言っておこう。
まさか俺が創ったなんて言えないし。
「……(巨乳女神の加護……天恵……)……」
ぼそっと呟いたけど、聞こえてるからな、父さん。
巨乳女神じゃなくて、水と生命の女神だからな?
神罰当たってもしらねーぞ。
まあ、そんなん無いけど。
「お兄ちゃん……女神様がお兄ちゃんのお名前知ってた! すごい!」
「トールヴァルドさまが女神様に選ばれたのですね! なんて素晴らしい!」
コルネちゃんとミルシェちゃんからの、ものすごい尊敬の眼差しが痛い。
「トールちゃんは、女神様に選ばれた使徒様ね!」
無邪気な母さんの言葉が俺のハートに突き刺さる!
『全部、嘘ですもんね!』
……うん。
サラ、絶対に言うなよ!
『いえ、言っても誰も信じませんよ? エネルギー変換カプセルを使って見せない限り。そもそもあのカプセルはあなた以外に見る事も触る事も出来ませんから、創ったと言っても信じてもらえないでしょう』
まあ、そうだけどさ。
いつまでも跪いてても仕方ないので、本日のお仕事をこなしましょう。
まずは父さんの領地と俺の領地を、トンネルで繋ぎます。
土・水・火・風の精霊さんはすでにスタンバイ・オッケー!
トンネル掘削ポイントを指示すれば、湖を造った時の様に各々の役割を考慮して掘って行きます。
まずは土の精霊さんが円陣組んだままグルグル回って山肌に突入します。
地下水などが出ない様に、水の精霊さんが水脈を探知して避けて方向を指示しますが、場合によっては、水脈その物を移動しちゃいます。
火の精霊さんが壁を補強のために焼き固める事も忘れません。
風の精霊さんが掘削で出た土を、まとめて防壁建造ラインに運んで行きます。
この時、周囲に土煙が撒き散らかされない様に、空気の流れをコントロール。
幅10mにも及ぶ半円形のトンネルが1時間に200mのペースで堀り進められる。
地球だと1時間で数十mとかだった気がするなあ。
魔法って便利だよなあ……って、これも魔法って言っていいのかな?
精霊さんに、こんな感じにしてね~ってお願いしただけなんだが、まぁいっか。
んじゃ、精霊さんお願いしやす! 作業は夕方まででいいからね~!
時間が来たら、解散して休んでね。
大体、直線で9~10Kmぐらいだから、距離的に考えて1週間で完成するかな。
あとは魔王と魔族なんだが……聞いてみたら、みんな魔王も魔族も知ってた。
なんで俺だけ知らなかったんだろか。
『勉強不足です』
はい、おっしゃる通りです。
……サラに言われると、メチャクチャ悔しい(涙)。
明日の昼に到着だから、来たらどこに住みたいかお話しなきゃなあ。
しっかし、魔族が遊牧とか違和感しかねーなこの星……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます