第30話

 ボブさんたちの息子さんは、ボブさんを少~し若返らせた感じで、ほとんどそっくりだった。奥さんも同じホビットで、ちんまりして可愛い感じ。なんというか、ぽっちゃりしたアーリーアメリカンな布のお人形みたいな感じと言えばいいだろうか。なんかほのぼのした空気に、和んでしまう。

 トニーとアンナと呼ばれた二人の子供は、ホビットと言われなければ、普通に人間の子供と大差ない気がする。並んで立つと、俺の方がデカい気分になって、勝手に喜んでた。それをヘリウスが生温い目で見てたのは、気付いてたけど、無視した。


 その夜は息子さんたちの家に一泊だけさせてもらうことになった。ただ、ヘリウスだけ、身体が大きすぎて、息子さんたちの家のベッドでは小さくて寝られない、ということになった。確かに、倍以上の体格差があるもんな。仕方がないから、大通りにあるという宿屋をとりにいったけど、すぐに息子さんの家に戻って来た。

 なにせ、俺たちはここでボブさんたちとの最後の夜を過ごすのだ。寂しいけど、仕方がない。夕飯にお呼ばれした俺たち。ヘリウスのかなりの大食いに、みんな唖然としてしまった。まぁ、あれだけの身体を維持するんだ。食わなきゃ、持たないんだろう。


「ほら、ハルも遠慮せず食え」

「あ、はい」

「ヘリウスは、少し遠慮しろ」

「あははは、すまんな、久々の家庭料理だけに、止まらんよ。奥さん、よかったら、後でオーク肉渡すから、みんなで食ってくれ」

「あら、いいんですか?」

「けっこう溜め込んでるからな。料理上手な奥さんだったら、うまく調理してくれるだろ?」

「うふふ、ありがとうございます」


 楽しく食事をしながらも、これからの話なんかもした。

 とりあえず、この街で冒険者ギルドに登録すること。そこで身分証を作るのだそうだ。これがあれば、他の町に入る時にお金がかからないのだとか(今回はボブさんがお金を出してくれた)。

 そして、あと数日もすれば追手が戻ってくる可能性があるから、早めにこの街から離れること。もし、その気があるなら、ヘリウスの故郷まで行ってみようか、なんて話になった。

 なんと、ヘリウスはこの大陸ではなく、別の大陸に家があるんだとか。どうやって、大陸間の移動が出来るのか、非常に気になるところではあるが、そこは極秘情報らしく、この場では教えてくれなかった。中世風のこの世界に、飛行機なんかあるわけないし。一緒に行ったら、いつか教えてもらえるんだろうか。

 満腹になった頃には、とっぷりと日が暮れていた。


「明日は朝一番で冒険者ギルドに行くからな」

「わかった」


 俺の返事に気をよくしたのか、ヘリウスはニヤリと笑いながらほろ酔い気分で家を出ると、宿屋のある大通りへと向かっていった。


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