37.アキラ、お歌を歌う。

 初めの数キロは、いつも通っている通学路の道を通っていく。その景色になんだか、普段の日常かと錯覚してしまいそうになる。


だが、いつも違い重い荷物と朝焼けが非日常だと感じさせてくれる。


それから、自転車を漕ぎ続けると


そうだ、僕はこれから旅に出るんだとそう思わせてくれる。


 ハイ、カットカット。う~~~ん、正直言うと、ここからけっこう記憶あやふやなんだよなぁ・・・。


確か、この後めっさつらい坂道で泣きそうだったのを大腿四頭筋が震えていたのは、筋肉君が覚えてる。


まぁ、なんやかんやあって、無事隣の県のキャンプ場に着いて、テント張って、夕食の即席ラーメン食べたら、超うまかったことは味覚君が覚えてる。


で、何日かして、近くの森っぽいところを散歩したんだっけか・・・? か・・・? ここらへん、けっこうエキサイティングな思い出だったはずなんだけどなぁ・・・。


まぁ、忘れる時もあるよね・・・。って頑張れッ、自分よ。まだ、物忘れが激しい歳じゃない。思い出せ、思いだすんだ・・・。


元の世界いた時、なんでかわからないけど、ここから先が思い出せなかった。必死に思い出そうとするが、なかなか思い出せないでいた。


でも、今回は異世界でいろいろあったせいか、五感が敏感に過去のことを詮索していく。記憶のピースは森、ある日の出来事。


それだけじゃ、足りない。もっと、もっと忘れちゃいけないことがあったはずだ。そう、なんかこう大切なものを守ったはず・・・。


「つまり、女じゃな。」


と、急に僕の後ろからおじいさんが話しかけてくる。この人、なぜに人の考えてるがわかるのかと度肝を抜かれそうになるが、その言葉が引っ掛かる。


女? いや、違う・・・女性? 少女・・・、美少女。


薄っすらだけど可愛い女の子と一緒に居たのは本能が今、思いだした。そうだ、それも超可愛いかった。


そうそう、ある日、森の中、クマさんに出会った・・・花さく、森の道~~~~、クマさんに出会った~~、クマさんの 言うことにゃ お嬢さん お逃げなさいってなんで森のクマさんを今、歌う?


ハッ!! その瞬間、記憶が頭の中を駆け巡り、思いだす。


そうだ、森の中で僕はクマに出会ったんだ。彼岸花の咲く 森の道、クマさんに 出会った。って、なんでそんなこと忘れてたんだ。


めちゃくちゃ、忘れようがないとてつもない出来事じゃないか。その時の情景が鮮明に思い出される。


 黒い黒い大きなものが、僕達の目の前に現れて目をギラつかせながら近づいてくる。


僕は彼女に言う、


「早くここから逃げて。」


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弓極狩人と雷精霊・THE ULTIMATE HUNTING なんよ~ @nananyo

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